一人一殺主義

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 ゴールデンウィークだし、心がひさびさに陰々滅々と……いや、そういうのとは違うんだ。生理的なものではないんだ。なにかこう、頭が、考えが、しょうもないくらいに、ふんわりと、スウィートに暗い感じなんだ。ひょっとしたら、『幽閉者/テロリスト』のサントラ、大友良英の、すごいノイズで脳をかきみだしているせいかもしれないけれど、まあ、どうでもいいんだ、理由なんて。

 それで俺は、朝起きて、「一人一殺がいいんじゃないのか」と思った。なにかを示唆する夢を見ていたのかもしれない。それはわからない。でも、それを、ゴールデンウィークだし、誰も見ていないし、こっそりつぶやく。
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 人間、一人一人というのは、非常にたいしたものだ。社会で、たいしたものでないと思われている、たとえば俺のようなものだって、このインターフェイス、機能、まだ、オリエント工業の人形よりも、いくらか精巧に、巧妙にできているんじゃないか。そして、脳味噌の中のひろがりといえば、まったくもって宇宙と同じくらいひろい。
 それぞれの、一人一人の人間が、そうだ。それなのに、どうも、その価値というものが、軽んじられているというか、えらく、まあ、たいしたことのないように、あつかわれている場合がある。
 昔、小学生のころか、中学生のころか、父親と、ナチによるホロコーストの映像、映画か、ドキュメンタリだったか忘れたが、それを一緒に見ていて、彼はこんなことを言った。「こうやってもくもくと列をなして、大人しく殺されているが、いっせいのせいで、この銃を持ってる兵隊にみんなでおそいかかろうとはしないもんだろうか。そうすれば、まだわずかでも生きる望みはあるのに。わしにはそれがわからん」……。
 と、言いながらも、死にゆく人間、抗する力ののこっていない人間というのは、ああいうものなのだろうと、そのような、話をしたかもしれない。
 そこまで圧倒的に、目にみえることでなくても、まあ、今でも、なんだかわからん境遇におちいって、おにぎりひとつ買えないで餓死したり、自分の母親と一緒に自殺したりと、そういう話にはことかかない。だいたい、人間、べつに何の能もなくても、それだけで、かなり精巧で、巧妙で、この世の神秘のような偶然でできた、けっこう珍重すべきもののはずなのに、なんかもったいないことをしている。
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 だから、なんというか、そういう境遇をつくり出す、たとえば末端の人間であっても、それはまた、同じ人間であるのだけれども、やはり同等の貴重品をあつかうにおいて、あつかい方がぞんざいであるというか、その珍重さを考慮しないような、そのようなものであったならば、そこにはもう、彼自身と同等の、同じ貴重品をあつかうだけのことが生じているのであって、その扱いひとつにおいては、彼自身を失う覚悟が必要とされるんじゃないのか、と。
 人が、人と接するにあっては、命がかかっているという、覚悟がいる。いや、いちいち命の取り合いをしていてはしまつにおえないが、やはりその可能性はある。法や権威や常識の名の下にあっても、正義とされるものの名の下にあっても、そこにいる一人の人間一人軽んじれば、下手すれば自分が殺されるという可能性。そこにあって、人間一人一人が、それぞれに、おのおのの尊重されるべき、オリエント工業の人形以上の存在として(実は、オリエント工業の人形の方が、あらゆる人間よりすばらしい可能性もあると、俺は声を大にしていいたいのだけれど)、まあなんだかよろしくやっていけるんじゃねえの、と。
 もちろん、末端同士で殺し合ってもしょうがないし、だんだん、偉い方へ、上へあがっていくんだ……。
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 だから、一人一殺の心意気で、みながみな生きれば、あんがいよろしいのかもしれない。が、やはりちょっと物騒だ。世の中には、短気な人もいるし。たとえば、チーズバーガーを注文したのに、チーズの入ってないカレー丼が来た、とかで、いちいちすき家の店員が殺されていては、おさまらない(まあ、殺したほうも次の瞬間殺されると思うが)。
 そのあたりを、なにかこう、装置で、装置で決めればいいんだ。生まれた瞬間に、脳味噌に小型の爆弾をみんな埋めこむんだ。全員だ。そして、爆弾に搭載された人間尊厳判定装置が、一定以上の閾値を示すと、目の前のやつと一緒にボカーンってなって、自爆で殺せる。一人一殺。そこはSFだから、まわりには被害がでないんだ。まあ、いちいち爆発したら、後片づけがたいへんそうだから、相手の電脳を焼ききるとか、そのへんで。
 で、そんなディストピア(やっぱりディストピアだよな……)に対抗する主人公。やっぱり脳には人間尊厳判定装置が埋めこまれている。いかにして、その判定をくぐりぬけ、相手に殺されず世界をひっくりかえすか……。主演はニコラス・ケイジキアヌ・リーブスで。
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 どこからSFになったのかよくわからない。俺は……夢の話をしていたのだっけ?

 「一人一殺主義」という言葉で検索したら、血盟団が出てきた。ぼんやり、名前くらいは聞いたことあるかもしれない。そうか、日本にもいろいろなテロリストたちがいたんだ。せっかく夢を見たんだから、なにか本でも読みたい。井上日召。井上昭の昭を分解して「日召」。草「弓剪」剛みたいだ。すごいモダン。読むしかない。
 ……と、思ったら、なんか古本、あっても高い。しょうがない。まあ、俺にはファミスタがあるんだ。いずれなにかどこか、古本屋とかで出会うこともあるだろう。
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 それじゃあ。