ゼロスタイル・ミントとタバコの終わりと

 禁煙の決断も意識もなく、いつの間にか吸わなくなっていた。俺のようなやつがどれだけいるかわからないが、俺はそうだった。なぜか吸う銘柄がことごとく廃番になっていくという死に神の末路だった。
 とはいえ、無煙タバコについては気になった。電子タバコでもない、無煙タバコ。火も、煙も、ノーノー。かぎ煙草。いったい、どのようなものなのか。酷く酔っているときではあったが、コンビニで見かけた俺は600円出してそれを買った。数日のうちに、JTから試供品が届いたのだが。
 さて、このZERO STYLEがいかなるものか。要するに、禁煙パイポのスースーするなにかが入っているところに、タバコの葉が入っているのである。それで、ミント味、メンソール風味であるから、禁煙パイポのような空気が口の中に入ってくる。
 ……これだけである。ひさびさのタバコに期待するような酩酊感などはいっさいなかった。メンソールでない、タバコの葉に特化したものを吸いたいという気もするが、しかし、これはいったいなんなのか、という気持ちが強い。禁煙パイポかなにかでいいじゃないか。
 しかし、まあこれはタバコの終わりだ。これにハードボイルド・ワンダーランドはひとかけらも含まれていない。ゼロ・スタイリッシュ。もし、フィリップ・マーロウがこれを吸っていたら、さまになるか? ファイロ・ヴァンスは推理ができるか? ジェイムズ・エルロイ世界のデス・ストーリーもおしまいだ。まったく。
 以上が、俺のゼロ・スタイルに関する感想。禁煙の職場で、くわえながら書いた。まったく、替え時もわからない。