夢を見る方法について

 私は最近、夢をみる方法について大いに会得するところがあった。あなたは私ほど黄金の頭を持っていないかもしれないが、なにかの参考にはなると思う。以下にその方法を記すので、よろしければお試しいただきたい。

 あなたは、まず花のことを考えるべきだ。できるだけしおれた花がよろしい。枯れてしまっていてもかまわない。造花であってもよい。薄汚れた造花ならばなおのことよろしい。

 なにか小さい生き物のことを考えなさい。小さければ小さいほどよろしい。それが人語を解すとも解さずとも、意に介すことなく、ただ小さい生き物のことを考えなさい。

 そして、ふたつの生き物の関係について思い浮かべなさい。その関係は友好的でも、敵対的でもかまわないが、できることならばひどく屈辱的であることが望ましい。

 誰かの名前が頭をよぎる。しかし、それはあなたとは一切関係の無い人間の名前である。あなたは布団の中にいて、とても没交渉だ。今やあなたは関係ない人間にすらかまわれない。

 少し触れただけで崩れてしまうバランスがある。しかし、永遠にそのままではいられない。あなたは右側を叩き、崩れる前に左側を支える。その逆でもかまわない。

 追憶の建物がある。あなたの追憶ではない、建物の追憶である。あなたは追憶にすぎない。ただし、それがあなたの追憶であるというのならば、だれもそれをとがめない。

 あなたは許されたと思う。その瞬間、牢獄が降ってきてあなたは前にも後ろにも、また右にも左にも進むことはできない。ただし、飛び越えることはできる。

 ひどく濁った音が響く。しかし、耳をふさいでしまいたいほどではない。とても大きな音だ。しかし、誰かが跳ね起きてしまうほどではない。あなたは、その音の主に好意も嫌悪も抱かない。

 小さな無数の石のことを考えなさい。その石の上に、とても大きな石を置きなさい。あなた一人では持てないほどの大きな石を置きなさい。無理というのならば、その逆でもかまわない。

 見下ろしてみたこの星はまだ若く、あなたにとって不満足であると知りなさい。あなたはいよいよ完全なものに近づいて、ひどく退屈な思いをすると知りなさい。

 人間のことを考えなさい。その人間は二本の脚で歩き、ときに笑ったりもするだろう。あなたに話しかけるかもしれない。いずれにせよ、石でできていることに気づくだろう。

 あなたは記憶のトンネルのことを考える。トンネルの向こうには、見慣れた光景があるはずだと思い込む。実際のところ、トンネルの穿った穴にしか意味はないのだが。

 ただ死んだ人間だけに価値があるが、死んだ人間に死んだ人間だけが持ちうる価値があると考えるのは誤りでもある。実際のところ、あなたは死ぬべきのようにも思える。

 口うるさい生き物のことを想像しない。その生き物はあなたのよく知る言葉で、まったく意味のわからないことをわめきたてる。あなたは耳をふさいでしまってもなにも語らない。

 あなたは土からないかを吸い上げることもできるし、光からなにかをえることもできるだろう。一方で、なにも与えたくないと思えば、与えなくともなんとも思わない。

 逆光のなかにただ一人立って、あなたのよく知る人間が迎えに来るのを待つ。その人間には顔らしい顔もなく、影らしい影もない。おまけに石でできているかもしれない。

 とても大きな石はとても小さな生き物の形をして、あなたの親しい人間の見慣れた光景を笑いながら話したりもする。あなたはひどく退屈な思いをして耳をふさいでしまう。

 あなたの体はあなたが生まれてから今という時まで的確に経年しているのに、魂は使いふるしのようだ。それはどこで誰が使ったものか、痛い思いをさせてでも思い出させなさい。

 あなたは花のことを思い出さなければいけない。その花はみずみずしく、優雅で、芳香すら放っていた。たしかにそれは生きているものの気配がしたと確信しなくてはならない。

 今まさに天から網が降ってきた。あなたはその網の中にあってもがこうとしてもがかず、動くまいとして動く。あるいは、まったくその逆でもかまわないのだが。

 なつかしい光景だけがあなたの鼻の奥を刺激して、だれにも関わることはできない。ひどく懐かしい人間は石でできていて、あなたは途方にくれて家に帰るだろう。

 この星はまだ若く、あなたはまだ石でできている。できることならば、耳をふさいでもかまわないのだが。私の言ったことはすべてに意味はなく、たとえ意味があったとしてもかまわないのだが。

 ……ここまでこれたあなたのために、ひとつだけ本当のことを教えよう。目が覚めたらすぐに端末を手に取り、覚えていることを書きつけることだ。それを習慣とすることだ。あなたのけなげな脳細胞は、その命令に従うだろう。すべての記憶をまったく正確に、だれもが目にしたことがない、だれにでもわかる言葉で記すだろう。この世界以外のことを、ひどく正確に、書きつけることができるだろう。
 ほら、そこだ!

夢を見た。ドン・キホーテのような店。お好み焼きソースのキャンペーンで、お好み焼き名人のお好み焼きを食べられるというので列にならぶ。その名人の名はラムシャラ・カディンといい、アラブ系のようだった。less than a minute ago via TwitBird