さて、帰るか


 こんな夜に乗るオートバイがない。
 オートバイの免許を本気で考えたこともあった。
 けっきょく、自動車も、オートバイも所有することもない。R.I.P。
 なにより、福岡空港から賃貸料をもらえる土地をもっていない。土地をもっていない人間は悲惨だ。立つ瀬もなければ帰るべきところもない。死に所もなく歩くしかない、もちろん飛ぶこともできない(夢の中でさえ? 墜ちる飛行機を見る夢ばかり)。
 やがては死んで落ちつくところもない。
 場所が用意されていないのに、人間を作るだって? 
 まずは埋めてから考えよう。
 なにかが間違っている。やりなおさなければいけない。圧倒的なスピード、破壊的な振動、3万光年の彼方まで流れていく光彩、サービスエリアの缶コーヒー。
 足りないものを数えるスペックが足りない。
 逆算すれば終わりが近い。秤は片方にふれている、気もふれている、うそばかりつく。たまに自分がひじょうに優秀な人間じゃないかと思うこともある。100ある問題点から派生する1000の失敗に思いを巡らせられないやつら。1つのテストを省いたがために、99の無駄な作業をするはめになるやつら。
 たとえば、なにもしないのが正解だとして。俺は減量をつづけるだろう。いつかきっと、なぜ最低限のカロリーですら自分に与えているのかわからなくなる。それでも減量をつづける。ある日、0になって誰かの土地の上にいる地獄からかろやかに去っていく、まるで反重力、永遠に落下をつづける飛行機の夢はさめない。