ひたすらに骨太な『戦火の中へ』

戦火の中へ [Blu-ray] なにかと今話題の韓流である。K-POPやテレビドラマはさっぱり知らないが、一時期キム・ギドクにはまっていたりしたので、韓国映画の威力というのは知っている。
 さて、『戦火の中へ』である。朝鮮戦争映画である。南下してくる北朝鮮軍に追い詰められそうな状況下、学徒兵が必死の抵抗をするのである。実話ベースとのことである。

 冒頭から激戦シーンである。個人的に「プライベート・ライアン以後のクオリティ」と呼ぶものをクリアしている。安っぽくないし、骨太な感じである。いろいろの場面などの色合いなどもなかなか作りすぎ(?)というような気もするが、かっこいいのでいいといえる。
 ストーリーとして、なにかこう、とくにひねったようなところもなく、骨太の印象である。実戦経験から隊長に任命された主人公と、バンカラ風の不良との対立やらなにやら、さもありなんの感じである。お調子者のデブや真面目でおっちょこちょいの眼鏡なども出てきて万全といえる。
 その隊長役といえば、野性味あふれる学徒兵の中で、少しだけ上品な感じがする。『硫黄島からの手紙』の二宮和也君のようなイメージといえる。後から調べてみたら、T.O.Pという名前の人であった。T.O.Pが名前である。BIGBANGというグループのメンバーで、仲間はG-DRAGON、SOL、D-LITE、V.Iである。よくわからない。映画を観たあと、役者を検索してみると、役の野性味とかけはなれたアイドルとして出てくることが前にもあったような気がするが、まあべつにアイドル方面に興味はないのでどうでもよろしい。
 いや、韓国映画などの役者が「リアルやなぁ」と見えるのは、そういうところもあるのだろうか。日本映画では、その役者が誰か知っているところがある。まあ、そもそも役者というのはその上で、のものなのだろうが。そういう意味で、この『戦火』についても、不良役の人とか、北朝鮮の伊達男風の隊長だの、素性をしらんのでそのものにしか見えないというところはあるかもしれない。むろん、それがいかにもポップスターが演技してます、みたいに見えないところがなってなくてはならないわけなんだけれども。

 それにしても朝鮮戦争か。朝鮮戦争というと、まず学校で習うときに「朝鮮特需」の四文字とセットだったように思う。小学校のころか、まあまったく失礼なところもあるが、そういうものだろう。俺が小学校のころというと、20年以上前になるが、今よりずっと韓国や北朝鮮について知られていなかったように思う。キムチが今よりもありふれた食材ではなかったのだし、いろいろ変わってきたところもある。
 して、朝鮮戦争についてもあまりよく知らない。半島の勢力図がめまぐるしく塗り替えられる印象くらいである。作中、死にかけの北朝鮮兵が「お母さん」と呟くのを見て、主人公が自らの母に「北朝鮮の兵士は頭に角が生えているかと思っていましたが、同じ人間でした」などと手紙を書くシーンがあって驚いたりもする。日本の支配から解放されて5年くらいの話なのに、国家というものはそこまで同じ民族をも分断しうるのか、というような。互いが互いを傀儡と呼び、殺し合う苛烈さというもの。そういった体験を経て来た国と、日本とでは、国や領土への温度差も出てくるものだろう。あるいは、米軍、米国へのスタンスも独特のものがあるだろう(キム・ギドクの『受取人不明』とか)。もちろん、そういった韓国なら 韓国の歴史に日本が他人事ではないのだから、まあどうしたものなのか俺にはよくわからん。
 まあ、そんなことを考えつつ、おしまい。