帰り道につながってた『サウダーヂ』

 「俺はなんでこの映画すげえおもしろがってるんだろ?」って途中からずっと考えてて、世の中にはもっとすごい入り組んだストーリーのものとか、スリルやサスペンスやアクション、エロや暴力に溢れてるもんもあって、それが往々にしてすげえ退屈なのに、なんだかわからんこれの画面にぐいっと引きこまれて、ずっとみてたいとか思うって、どんな要素がそうさせてんだろうって、おれにはそれを語る言葉の持ち合わせがねえやって、そこんとこ結局ぜんぜんわかんないまま映画館出て、そのままクソ寒い日曜の夜のシャッター閉まった店ばっかのイセザキモールとぼとぼと歩いてて、まったくさっきみた甲府の商店街とつながってる道歩いてんじゃんって思って、つーか、イセザキモールだろ、あれさ、タイ人も中国人もブラジル人もいる感じだし、やっぱりぜんぶつながってて、ひょっとして『サウダーヂ』がなにを映してたかっていえば、現代日本地方都市の姿とかじゃなくて、世界全部だったんじゃねえかとか思ったりして、考えてみればもとはといえば宇宙の根源はひとつだし、無限の宇宙に限られた元素から構成される星々はとうぜんまったく同じ形のものになるわけだし、まったく同じなんだけどちょっとバリエーションが違ってて、一瞬一瞬の分岐ごとにべつの星でべつの俺たちが少しずつ違ったりするんだけど、結局はもとはひとつなんだから、俺が石ころで石ころは俺だし、根っこのところから全部知ってるのは当たり前であってさ。
 日本語ラップのやつなんだけど、あれは親が破産したりして、わりと排外主義的スキンヘッドでネオ・トージョーみてえな方に行くわけだけど、世代的にもたぶん俺が俺のこととして見てるやつはまったくあいつであって、ほら、柳田國男が法制局参事官だったときに、情状酌量で特赦にするかどうかみてえな事件をいっぱい読んでて、そのうちのいくつかのネタを旧友の田山花袋に提供したら、それほど重大とは思えないやつを使って、なんか自然主義文学はたかが知れたもんだ、みてえに言ってたけどさ、それは柳田国男が「こんな境遇だったらだれでもこうするだろ」みたいな必然性みたいなところの惨劇を重視してて、田山は逆にわりとどうとでもなるところであえて間違ったみたいな人間の情のぶれを見てたってことなんだけど、どうも日本語ラップのやつはまったく必然的にそうせざるをえないところで、結局あの笑顔になるってさ、そう用意されてたみたいで、俺はあいつじゃないけど、俺がいつも書いてることっつーか、まさに昨日の日記で書いたこととかさ、重ね合わせるにはあまりにも違うかもしれないけど、俺にとっては俺のバリエーションだろみたいに思って、iPhoneキングギドラの『最終兵器』とか聴きながら帰って、あとあんまり関係ないけど「まいばすけっと」でカップ焼きそばと納豆買ったりした。
 そんで、予告編の日本語ラップに引きずられてほしくねえとか、一番よかったのはタイの娘の歌だったとか、まあ感想っつーより紹介目線の話なんだけど、もっとなんかこう、ラーメンが獣臭い映画だし、どっかいっちゃってる一方ですげえおれの「零細企業ー!」の感覚にフィットしてるし、そうなんだよ、わりとみんなグローバリゼーションの中の日本のありようとか、なんかわかってるところもあって、俺とかも持ってて、そういうところもあったりして、それでもやっぱりどっかわからんところもあってさ、けどやっぱり、タイはそうじゃないって、あいつだってわかっててさ、それでもさ、ああ、なんかこう、予告やウェブサイトの作品紹介とかじゃ、なんかそうなんだけど、そうじゃねえんだ、もっとわけのわからんもんが映ってて目が離せないってさ、ちょっと困っちまうようなところでさ、やっぱりいろんなやつがけっこうてんでバラバラに出てきて、バラバラなりにみんなエグいリアルさがあって、やっぱりそこんところを裏打ちする小道具や会話、そう言葉がやっぱりすげえリアルってとこあって、日本語、タイ語、ブラジル語、なんだかんだといろいろ出てくるんだけど、日本語っていっても、土方の中での妙な敬語っぽさとか、あの水のおっさんのデリヘル電話の受け具合とか、それとなんといっても方言で、出てくるやつが心情の肝心なところをパッとひとことで締める、そこんところが俺にはわかんないなんてシーンがけっこうあってさ、やっぱそこに、ロスト・イン・トランスレーションやバベルがあって、そういうとこも俺をちりちりと刺激してんじゃねえかとも思うわけ。
 というわけで、感想っちゅうか、なんつうか、宣伝したい気持ちにすらなっちまうところもあって、『国道20号線』みたいに気持ちがダウンするわけでもなかったし(そういう意味でどっちがすごかった? みたいなところで個人的にどう比べていいかわからんようなところはある。完成度みたいなのでは、こっちかもしれないが)、できれば横浜シネマ・ジャック&ベティの夜の回で見て、イセザキモールを関内方向に歩いていってほしいとか思ったんだけど、けどさ、関内関外って地方なのか田舎なのかっていったら、そんなこたねえだろって思うんだけど、だけど決定的に東京バビロンとは違うし、わりと神奈川って単位で見たらなにかしら似たようなもんだろうなとかさ、思いは尽きないんだけど、今回は競馬の音声あったけどわざとかどうか馬名聞き取れなかったし(甲府の夜に競馬中継はありえないだろうから、「中央競馬ダイジェスト」か「中央競馬ハイライト」的なものなんだろうけど、そのわりに実況が長かった)、とりあえず終わりにしとくわ、そんじゃ。

関連_____________________________________________________

 今年映画館で見た映画は『恋の罪』、『ヒミズ』、『国道20号線』に続き4本目。注目すべきは宮台真司出演率が50%を占めることであって、ひょっとしたら若松孝二の新作あたりにもちらっと出てきたりして、すごい割合になったらどうしようか心配。

ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」

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 この映画に出てくるような、日本にいる外国人の立場、みたいなもんについて興味があるならこの本は読むべき。感想文の方でだいたい俺の環境と外国人についても書いてるな。ちなみに、3.11以降コンビニや牛丼屋から中国人がかなりいなくなったけど、今は戻ってるという印象。

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 これと見比べてみるのもいいかも。

凶気の桜 [DVD]

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 これも。

バベル [Blu-ray]

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 上でなんか思い出して名前出したけど、どんな内容だかほとんど覚えてない。

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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 上でなんか思い出して名前出したけど、どんな内容だかあんまり覚えてない。タイトルはすごい好き。