後納太郎の数奇な人生

 「おまえに国民年金の未納分を10年さかのぼって納める権利をやろう」みたいな封筒が数日前に届いた。おれは大学を中退して親に小遣いをもらって南関四場(のうちのふたつ)をうろうろしたりする本当の意味でのニート、最近のこじゃれたそれではないニートだったり、わけあってほとんど無給労働者だったりで、2年ちょっと「納める権利」があるのだ。そんなに払える金はない。何十万もだ。ただ、一括で払えというのではない。一ヶ月ずつでも、二ヶ月ずつでも選択できる。その記入例も同封されていた。以下画像は上記サイトの「国民年金後納保険料納付申込書の記入例」からの引用。

 後納太郎の人生もなかなか波乱に満ちているように見える。急に国民年金を3ヶ月納めたかと思えば、3ヶ月厚生年金に切り替わったりしたあと、不明期間があったり、免除期間が続いたかと思えば2ヶ月納めて未納が続いたりしている。どういう感じなのか、いまいちわからない。
 もっとわからないのは、こいつの後納のやり方だ。(A)の期間の9万円を一括で払うという。まあ、今現在なにか余裕があるなら、とっとと古いのを処理しようというのもわかる。つづいて、(B)期間の16万くらいも一括でいくつもりだ。わりと余裕あんじゃん。が、よくわからないが(C)の、6ヶ月未納が続いている部分のうち3ヶ月分だけを「1ヶ月ずつ」納付したいというのだ。
 ……ひょっとして、(A)、(B)期間で貯えのすべてを吐き出してしまうつもりなのか? それで、最後のひと絞りで(C)の3ヶ月を払い、無一文になるのか? よくわからない。今気づいたが、昭和35年(1960年)生まれか、後納太郎。それで、そのあとの分はどうするんだ? いま、あんたはどんな暮らしをしてるんだ? 受給資格を得るまで納められるのか? それまで生きていられるのか? 
 まあいい、おれはどうかということだ。おれはやはり年金受給資格を得るまで年金を納め続けることは不可能だろう。この年までろくな職能もないし、資格もない。SAS向精神薬とか飲んでて普通自動車も運転できない。机の前でじっと仕事すんのも無理だし、肉体労働できるような体躯もない。まあ、それ以前に、心の病気というやつ、ニッポン式のやり方で自分を片づけることになるだろう。適切な時期に、きわめてニッポン式なやり方で。