さて、帰れない


 仕事が妙に重なって忙しい。忙しいのは悪くないが、生活に希望が持てるわけでもなく、ただひたすらに「全部おれがやらなければだれもできない」というものばかりが重なっていって、零細企業にあたらしく手伝いの人を雇う余裕もなく、だれに習うでもなくいろいろの技術をその場しのぎでしのぎ、聞かれれば即座に答え、重要な文章のリライトをやり、雑用の写真スキャンもやり、なにがなんだかわからない。おまけに現状、ただでさえ少ない人員にまたいろいろ家庭のご事情などもおありになれば、独り身のおれが自炊の時間すら失い冷蔵庫の肉は腐る。
 というわけで、日記の更新など滞りブクマなどしている暇などないはずなのだが、逆にパソコンの前に座ってる時間が増えるとなどという話もあるが、こういう情況にあって新しくゲームなど買ってしまって、さらに図書館で借りた本を読まねばならず、乗る予定のないクロスバイクも直さねばならず、フルカーボンのロードバイクは室内でますます洗濯物を積みかさねている。
 腰は痛い。肉は腐る。髪を切ったら見事なプリンになった。秋だし、赤くしよう。髪を、赤くしよう。髪を赤くして、なにか新しいピアスを買って、深夜の100円ローソンで値引きシールの貼ってある餌を寿町のじじい連中と奪い合う。
 おれは自分のユニットバスでクソをしているときだけ、なにか完全に無敵なような気持ちになって、その無敵感というのは筆舌に尽くしがたく、ただケツを拭いてクソを流してしてしまうとすっかり消えてしまうのだが、ケツを拭かないわけにもいかないし、クソを流さないわけにもいかない。トイレットペーパーを買わなければいけない。部屋に帰ってもサモワールを用意してくれる下僕がいない。なにか間違っている。そう思わないか?