アンブライドルズソングを聴け!〜『ジャンゴ 繋がれざる者』を観た〜


 ある作品の中に、大量のオマージュやパロディが含まれている。だが、おれはその分野について不案内だ。さあどうする? どうもしない。「そうなのかもしれないなぁ」などと思いつつ、その上で面白いかどうかの話だ。もちろん、そのあとになって、元ネタを辿ることはあるかもしれないが。
 が、クエンティン・タランティーノの新作『ジャンゴ 繋がれざる者』に関しては、偶然にも少しだけ予習をすることになってしまった。偶然にも『映画秘宝』の年間ベスト&ワースト号と、『仁義なき戦い』特集号を続けて買ったからだ。後者など「ジャンゴ大予習大会」である。もちろん、実際に元の映画を観ないで予習もないだろうという話だろうが、まあいくらかは勉強してしまったのである。おれが観たことのあるウエスタン? 西部劇? 『ワイルドバンチ』と……、『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』くらい? ウエスタンか?
 まあいい、して、その結果どうだったか。オマージュ、パロディ? そんなの元を知ってようが知ってまいが、関係ねえ、面白けりゃいいや! ってなった。いや、『ジャンゴ』関係なくウエスタン映画好きで知ってたりしたらもっと盛り上がったかもしらんが、逆に知っているから酷評、というケースも考えられるしさ。
 つーか、おれは『キル・ビル』好きだけれども、それよりも『イングロリアス・バスターズ』で、「それ、ありなのか!」というすげえ驚きにぶっ叩かれた印象が強くて、そっから出た期待があったし、それにこの『ジャンゴ』も応えてくれたな! ってのがあったんだ。
 いや、たとえば水俣病の悲劇……単に悲劇という紋切り表現で言い切れぬようなものを、石牟礼道子が『苦海浄土』で表すような方法(まあ、これも「方法」で片付けられない代物なので、例としては適当ではないかもしれない)もあるだろうし、人類史の愚行、失敗、恥、あるいは悪をどう描くかってのは、なんかまあ常に問われることだろう。タランティーノは、それを描こうとした上で、『イングロリアス・バスターズ』や『ジャンゴ』のようにやった。あんまり畏まってるような感じもない。遊び心あり、映画オタクっぷりあり、軽快さあり、くだらなさあり……。
 なんというか、ドイツ人歯科医で賞金稼ぎのドクター・シュルツの馬車を観ただけで、おれはもう納得してしまうところがあってさ。いや、いいよな、ドクター・シュルツ。そりゃアカデミー助演男優賞獲るわ。『映画秘宝』のインタビューでは、なぜ彼がこうなっているかについて設定はない、ということらしいが、あってもなくてもよろしい。ただ、この映画の中だけで彼がどんなやつで、どんなことをしたかってのが……それだけでいいんだ。
 そして主役といえばジャンゴ。出てきた瞬間思わず吹いてしまった青い服にも元ネタ(The Blue Boy)があるようで、それが意味するところははっきり言ってまったくわからんが、まあそれにしたってカッコいい。それで、やっぱり一番いいところを挙げるとすると、あえてこのエントリーのタイトルのシーンだ。アンブライドルド、聞きなれない横文字だとサービス不足だろうから、言い換えれば不羈の二文字。あえてそうして駆けていくところに、この映画のスピリットが、歌があった!……などとまあ、それに元ネタがあったところで知った話じゃないけれど。
 しかし、馬よかったね。ジャンゴの馬、ダイナガリバーマチカネタンホイザの間くらいで、確実にノーザンテーストの血が入ってるな、みたいなね。最後のあれはなんだろうね。まあいい。
 そういうわけで、サミュエル・L・ジャクソンの「差別される者が差別する」の体現っぷりから、レオナルド・ディカプリオのある意味で哀れな悪人っぷりから、まあ観てごらんなさい、という映画でした。いや、ちょっとミスター・カンディの館訪れてから冗長だったかな? とか感じたけど、まあいいよ、おしまい。

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……最初に「引越し見積もり比較サイトで、料金が安くなる!」へのリンクがあるけど、ドメイン取られちゃったんだな、たぶん。と、いうことを消すとわからなくなるので残しておくけど。それはともかく、今、すげえ観返したい気分。

……なんかよかったみたいだが、内容が頭のなかに残ってない。ただ、北島三郎の「ジャンゴ〜♪」という歌声だけ頭に残ってる。

ハチェット無頼 [DVD]

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……あんま関係ないけど、今日、映画行く前にホームセンターで売ってて、手にとってみたけど戻した。なんとなくなにかを感じたが、買っておけばよかったか。

山奥で賞金首を捕らえた斧を武器とする賞金稼ぎブレイドは、町の酒場で鉱山の監督バラーに恨みを買い、彼の罠にはまり両目を潰される。復讐に燃えるブレイドは山に身を潜め石を研いで斧を作りバラードとの一騎打ちに備える…。スリリングなドラマが展開するマカロニ・ウエスタン。

 しかし、『ハチェット』無頼て。盲目で石斧て。しかもわりと評価が高いて。