バーチャ追憶ファイター

 バーチャファイター20周年、らしい。おれは初めてバーチャファイターをプレイした時のことを、おぼろげながら覚えている。それは……前に書いたことがあるとおもって検索したがなかったので、書く。
 たぶん、正月のことだったと思う。ウィキペディアによれば12月に出回り始めた(アーケードゲームに「発売」という言葉は似合わないような気がする。「ローンチ」とでも言うべきか?)というから、たぶん、正月だ。
 場所はどこだったろうか。おぼろげだが東京のどこかだったと思う。学校帰りにゲーム仲間とつるんでよく行ってたゲーセンではなかった。これは確実だ。正月の、親戚の集まりで東京のどこか、あるいは祖父と伯父のテリトリーである銀座あたりか……いや、銀座にはゲーセンはないか。ともかく、東京だろうと思う。雪が降っていたかもしれない。
 ともかく、おれはそこではじめてバーチャファイターを見た、のか? それはわからない。馴染みのゲーセンで見ていたかも、しれない。だが、あまりの人気に、50円玉を並べて列に加わらなかったのかもしれない。画面を見たのは、初めてではなかったように思う。あるいは、雑誌かなにかで見ただけか。その可能性はある。おれはなんとなく「こりゃなんだ? こりゃ駄目だろ」と思っていたからだ。プレイするまでは。
 そうだ、おれは人気のない正月の東京、見知らぬゲーセンでバーチャファイターを初プレイした。衝撃だった。「これはすごい」と思った。3D手のひら返し。いとこなどがUFOキャッチャーに夢中になっている。そのあいだ、時間の許すかぎり、おれはそこでバーチャをプレイし続けた。やばかった。なにがやばいかわからないが、やばいことは伝わってきた。格ゲーにこんな可能性があったのかと思った。簡素に広がる背景。無限の興味と恐怖のようななにかを感じた。
 20年前の話だ。その後、格闘ゲームもバーチャも進化した。おれも、いくらかはついていった。しかし、いつの間にかおれはゲーセン通いをやめたし、格闘ゲームにもついていけなくなった。いろいろな理由がある。20年前の話も正確に思い出せない。しかし、いくらかは、覚えている。それだけのことだ。