水曜日だから自殺の話をしよう(WHOなんて知った話か)

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  • 努めて、社会に向けて自殺に関する啓発・教育を行う
  • 自殺を、センセーショナルに扱わない。当然の行為のように扱わない。あるいは問題解決法の一つであるかのように扱わない

「自殺予防 メディア関係者のための手引き 2008年改訂版日本語版」

 

みんな大好きWHOのクイック・リファレンス。おれはこの冒頭を読むたびに、なんかすげえ矛盾があるんじゃねえかって、頭がクラクラしてきちまう。クラクラってより、グルグルか。どっちでもいい。ともかく、なんか矛盾があるんじゃねえかって、グルグルなんだよ、ちくしょう、高卒のキ印にはわかりゃしねえや。

自殺をセンセーショナルに、エモーショナルに伝えねえようにしろよって、そりゃあ何言ってるかはわからんでもねえよ。でも、本当にそれでいいのかよ? いいような気もするんだけどよ、本当にいいのかよ? っつーと、どうも腑に落ちねえんだ。ある人間が「精神や身体の病気、物質乱用、家族機能の障害、対人関係の葛藤、そして生活上のストレッサーなどの多くの要因による複雑な相互作用によって引き起こされる」結果として自殺したとしてよ、そいつは当然の行為じゃねえのか、ひとつの解決法じゃねえのか。誰だかわかんねえけど(WHO?)、臭いものには蓋をしろって言ってんじゃねえの。

たとえばおれが今、すぐ、自殺すりゃ、ひとつのティピカルだ。精神病院通いの疾患者が経済的な理由で。そんなん東京スカイツリーのてっぺんから首吊りするとか、よほどアクロバットなやり方で成就させねえ限り、報じられる価値一つねえかもしれねえ。そんでも、一個の人間がありきたりな自死をしてよ、その背景にはなにがあんだよって話にならねえのか。その話はセンセーショナルであっちゃいけねえのか。

つまりは、おれは不平不満を言ってんだ、愚痴ってんだ。おれが自殺するとしたら経済的な原因だ。自殺じゃねえ、他殺だよこれはって言いてえんだ。おれは銀の匙をくわえて生まれてこなかった。NatureにもNurtureにも恵まれてるとは言いがてえ。偉大なるGOD (Genome Organising Device?) はおれに、このクソ社会を生きるための資質を与えちゃくれなかった。まったくついてねえ。ついてねえけど、救済措置はねえんだ。とにかく生きにくいってだけで、救いの手は存在してねえ。あるんなら、おれの預金口座はもっとマシなものになってるはずだ。

ああ、まったく、まったくだ。まったくおれはこの世の役に立てねえから、もらえるものももらえない。要するに、生きるに値する金を稼ぐことができない。いくら忙しくても、価値がねえんだ。世界に否定されてんだ。価値なし人間のお通りだ。通った先は、医者にも「薬でどうこうの段階じゃない」って言われてるくらいのどん詰まりだ。頓死じゃねえな、ずっとまえから手順通りだ。

自死か路上か刑務所か……なんてうそぶく余裕なんてないね。おれはもう気力もなくなっちまってんだ。働いて働いて、手を見るのも億劫なほど、もう疲れちまってんだ。レンタカーを借りたこともないし、「D.N.A.!」(大・名古屋ビルヂングアドヴァンス)とか叫びながら人混みに突っ込む元気も見当たらねえ。路上っつっても、寿町のまわりにゃご先輩方がいらっしゃる。ああ、正直言って、ああいう生命力もおれにはねえんだ。わかってたんだ。残るのは一方通行、レンタカーのアクセル踏まないアクセラレータ。おう、上にいい標識引っかかってるじゃあないの、って具合なもんだ。

おれはお前ら優雅に生きてる人間にリストカット見せつけるほど若くねえから、こうやって管を巻いてんだ。そのうち首に管巻くかもしれねえけどよ。おっさん、もう何言ってるのかわかんなくなってきちまった。何の話だ? 金の話だったか。そういうもんに苦しんだことのないやつ、おめでとさん。精神的に強いやつ、おめでとさん。賢いやつ、おめでとさん。おまえらは、眉をしかめて底辺のやつ、恵まれないやつ、弱いやつの自殺を、清く正しいWHO方式で見てみぬふりしてりゃあいいんだ。いいんだよ、見たくないもんは見なくて。そうさ、家賃に怯えてるやつなんてこの世にいない。理由も曖昧に、ひたすらに生きにくいやつなんてこの世にいない。結構な話じゃないの。なあ。いい世界だ。おれが抗不安剤飲んで、非定型抗精神病薬飲んで、なんとか見ようとしてる世界だ。偽りの太陽も昇るってもんだ。登戸行きだ。

ああ、けったくそ悪い。おれが何をしたっていうんだ。なんの罰だ。どうして自殺するやつの側に立ってんだ。立つはめになってんだ。せめて大学でも出ておきゃよかったのか? もっと前に、どっかで重要なもん落としてきたのか? アパートの鍵よりも重要なもんを。それとも、生まれついての欠落か、欠陥品か、おれは。どうもその線が濃い。でも、おれは銀の匙キャビア食うための金の匙も望んじゃいなかった。普通に世界の片隅にいられりゃよかったんだ。三食三色パンでもかまわねえよ。血糖値がえらいことになりそうだがな。ああ、根は優しい子なんだよ、実際さ。それが脳みそいかれちまって病院通い、口から出るのは呪詛かため息。希死念慮の岸から三途の川見てんだ。せいぜいこの愚痴も心理学的剖検の材料にでもしてくれよ。なんだったら、双極性障害の原因究明のために、脳を輪切りにして持ってってくれてもかまわねえよ。

狂っちまってる。おれは狂っちまってる。おれの世界は狂っちまってる。世界は狂っちまってる。それなのに、それぞれが一個の宇宙みてえな一人の人間が、よりにもよって自分で死んでるのに一大事でもなんでもねえんだってさ。少なくともそういう顔して生きるのが優等生なんだってさ。参っちまう、完全に参っちまう。いいや、もう、とっくに参っちまってるんだ。白旗あげて、その上で惨めな死に方することになっちまってんだ、死刑宣告したのはおれか? おまえらか? どっちでもいいんだ。もうどうでもいいんだ、まったく。