ガキもうるせえが年寄りもうるさい

「静かな老後をおくるはずだったのに」と保育園の建設に反対するNIMBY老人の話題とかあんじゃん。ガキはうるさいのかもしれねえ。だが、おれが言うに年寄りもうるさい。でかい音を出す。連中、耳が遠くなってて、てめえの出す音がでかくなってんのに気づいてねえ。ドアの開け閉めも音がでかい。そしてなにより怒鳴り合いみたいな声量で日常会話しやがる。そうか、相手の耳も遠くなってるから二倍か? 四倍か? わからねえが、おまけに早起きだから参っちまう。朝の五時からその日常会話でおれをビビらせて起こすなと言いたい。いや、言わねえよ、こんなところに住んでるおれの低収入がいけねえんだ。でも、それにしても、壁を挟んで高さの違う空間を挟んでブロック塀を挟んでもう一枚向こうに壁あって、そんでも寝てるおれが「ビクッ」となるくらいでけえ声って、ちょっと勘弁しろよ。せめて「殺し合い寸前の言い争いだから仕方ない」ってくらいの内容にしてくれ。醤油の置き場所の話でおれを起こすな。

それと、もう一件、ビッグ・ポルノのじじい、お前んところだ。クーラーつけないけど窓開ける季節になって、お前んところのテレビの音が、おれがおれのテレビから聴く音よりでけえってのは、どうなってんだ。おまけに、そのテレビの音よりもでけえ音で会話しやがる。なんだ、夫婦か? ビッグポルノのときはばあさん留守だったんか? それとも一緒に鑑賞か? うー、おれに老人の奇妙な性生活なんて想像させんじゃねえよ。

ああ、どうでもいい。頼むから静かにしてくれ、といったところで無駄な話だ。おれは大聖堂で暮らすことはできない。ああ、こうやって人間、生まれてきたら泣いてうるさい、ちょっと育てば騒いでうるさい、幸運にも老いを迎えられた人間もうるさい。みんな他人にむかついて、呪詛を投げかけ、恨み合って生きていくんだ。救いなんてもんはどこにもない。おれの祖母も耳が遠くなってんのに補聴器は拒否するし、手元で聴けるテレビスピーカーも断固拒否して、轟音でテレビ見てるとかいう話だ。おれがビッグポルノにうなされるのも、祖母の因果が孫に報いってやつだ。おれの祖母はだれかにうるさがられ、疎まれ、死ねばいいのにと思われてるんだろう。当人はお構いなしらしい。人間そんなもんだ。おれは遠回しにその制裁を受けてんだ。

こんな地獄で、おれみたいに心のある人間が苦しんで、精神を病んで、疲弊していくんだぜ。え、おれに心があるかって? ちょっと待ってくれ、今は留守にしてるかもしれないから。それともなんだ、おれがキ印だから、音を気にしすぎてる? 幻聴かもしれませんね? ああ、そうだ、そうだったらいいのにな。この世は静寂だ。静寂なのはすばらしい。とりあえず100円ショップに耳栓でも買いにいくとするか。さもなきゃ首くくるしかねえじゃんか、なあ。

頼むから静かにしてくれ (THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER)

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ビッグ・ポルノ・ストライクス・アゲイン - 関内関外日記

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