高浜寛『イエローバックス』を読む


イエローバックス


 『四谷区花園町』という作品のレビューなのだが、おれは『イエローバックス』の表紙に目を奪われた。なんだこれ、すげえかっこいいじゃないの、って。それで深町先生もこうの史代先生も推してる作家なら外れはねえだろうと、とりあえず買った。
 読んでみて、やっぱ正解。遠近妙にぼやけたような画面、大胆なデフォルメとリアルすぎる細部の混交、そしてストーリーのよくできたこと。スタイリッシュでかっこいい。でも、方言が出てくる話はまるで石牟礼道子のようだし、どこかしら国道沿いの雰囲気もある。そして学校の嫌な感じであるとか、人生のからっからな感じであるとか、そういうもんが詰め込まれてる。でも、どっかしら救いがある。人間の悲惨さと救いがある。おれは漫画についてほとんどアンテナを立てていないけれども、いいものを知った、そう思った。最近、阿部芙蓉美を知った、それと似ている。各短編のタイトルを見てるだけでも、なんかいい感じがする。そう思った人には向いているはずだと思う。向いてなかったらごめんなさい。でも、おれは表紙に裏切られなかったぜ。
 願わくば、余裕ができたらほかの作品も買いたい。手元に置いておきたい。そう思う。おしまい。


イエローバックス

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四谷区花園町

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トゥー・エスプレッソ

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凪渡り ― 及びその他の短篇 (九竜コミックス)

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