キラキラしすぎてないのがいい『たまこラブストーリー』を観る

 『たまこまーけっと』の映画版である。アニメの再編集版ではない完全新作というやつである。評判がよかったような気がするが劇場には行かなかった。テレビ版『たまこまーけっと』にそれほどのめり込まなかったからだ。「チョイさまに冷たい目で見られたい、足蹴にされたい」とか思うくらだいった。ラジオも聴いてなかった。
 ところがどうだろう、残念ながら南の島の面々を超短編に押し込んで、本編からほとんどパージした結果、なんともいい感じの映画に仕上がってるじゃあないの。それも、いい塩梅の青春映画だ、ラブストーリーだ。あまりキラキラしすぎていたり、ドロドロしすぎていたりすると、おれはどこか鼻白んでしまうが、そんなこともなかった。とはいえ、キラキラしているところはキラキラしている。たまこが告白された帰り道の、風景も知り合いもなにも溶けてしまうあの感じ。あの感じなんかがキラキラではあるけどリアルだなあと思うのである。
 しかしまあ、洲崎綾恐るべしというところも強く感じた。中の人、声優というものが強く意識されてしまうというのはあまりよくないことなのかもしれないけれど、それでも「ああ、これは洲崎綾のいいところが出ているな」と思わずにはいられなかった。洲崎西のスケベ爆発、ビジネスガチレズの部分は出ていない(出ていたら困る)。素直で人から愛される、先輩から可愛がられるタイプなんだろうな、という部分の洲崎綾である。これがたまこに良い初々しさを吹き込んでいる。拍手、拍手である。まさかもち蔵の中の人である田丸氏をガタガタにするようには思えない。
 閑話休題。ともかく、話にも無駄はなく、見入っているうちに終わり、満足感が残る。若い人にはそれぞれの道がある。そのとき打ち込むものがあったり、未来があったり。青春に失敗したおれなどは、道がまだ見えていない常盤みどりあたりを応援したくもなるが。ああ、青春映画、たまには悪くないねえと思った。それにしても、テレビから劇場版でここまで跳躍力を見せるのも珍しいんじゃないのかな。まあわからんけど、そんなところ。おしまい。
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