父とマンデリン

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このごろおれは朝に強くなって、いただいたコーヒーにミューズリーで朝食などとっている。

コーヒー豆はマンデリンである。おれはマンデリンが一番好きだ。

あれはおれが高校生のころだったろうか、急に父がコーヒーに目覚めた。そして、「わしが飲むのはマンデリンである。これが一番苦くてうまいのである」などという。飲んでみたが、べつにコーヒーの味の良し悪しもわかるわけもない。「なるほど、これがマンデリンというのか」と思っただけだった。

……わけではなく、「よし、おれの好きなコーヒーはマンデリン豆ということにしよう」と心に決めたのであった。むろん、コーヒーのことなどなにも知らぬ。知らぬが、「マンデリンが好きでね」という一本槍でコーヒー通ぶれて、かっこいいんじゃないかと。中二病、かもしれない。

かくして、おれは「マンデリン」と人生の履歴書の「好きなコーヒー豆」の欄に書いて生きてきた。生きてきたが「マンデリンが好きでね」とコーヒー通ぶりを発揮する機会もなかった。

そんなおれがとつぜんコーヒーに目覚めた。

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そして、いろいろと豆を買ってみた。むろん、心のベストテンナンバーワンはマンデリンだが、やはりいろいろ飲んでみたいじゃないか。

……と、やっぱりマンデリンが一番好きじゃねえの、って気づいたのである。一番おいしいよな。二重盲検とかやったりしても当てられる可能性はまったくないが、そう思えてならないのである。おれはマンデリン以外の豆はほとんど買わないようになっていた。

そんなわけで、今朝も手動ミルをガリガリ回してマンデリンを一杯。父とは十五年以上会っていない。次に会うことがあるとすれば、どちらかの葬式で、どちらかは死体になっていることだろう。とはいえ、おれは父からカープファンであることと、マンデリン好きを引き継いだ。譲り渡す相手はおそらくいないままだろうが。

 

 

ハリオ コーヒーミル・セラミックスリム MSS-1B

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 ……「電動より手で挽いたほうがおいしいんです!」とかいうことはたぶん無いと思う。ただ、すこしばかり運動にはなる。