ネオシーダーというものの存在はずっとまえから知っていた。よくスポーツ新聞なんかの広告欄にあるからだ。だが、おれはそれを……。
……あ、吸ったことあるじゃねえの。書き出しも似ている。さすがおれがおれで、おれがおれで。
というわけで、この記事のタイトルは客観的には嘘だ。でも、おれの私情によるとはじめて吸ったからはじめてだ。はじめてが二度あってなにが悪い。時が未来にすすむと誰が決めたんだ。ともかく、おれははじめてネオシーダーを買ったのだ。トイレットペーパーを買うためにドラッグストアに入り、レジ待ちしているときに、「特売中」とかいって乱雑にカゴの中に入っていたのだ。値段を見ると今どきのタバコより安い。「そういえば吸ったことなかった(※あります)な、ひとつ買ってみるか」という具合である。レジの店員に「タバコじゃなくて喉のお薬ですけれどよろしいでしょうか?」と言われる。「よろしい」。
して、部屋のどこかから携帯灰皿を見つけて一服(※いや、喉の調子が悪かったのですよ?)。うーん、味気ないタバコ。おもいっきりメンソールが効いてるとかそういうのなし。なんだろう。これはね、戦時下の代用タバコとでも言うべきか(※戦時下の代用タバコ吸ったことありません)、なにかタバコもどきという感じ。ニコチン、タールは含まれているらしいが、どのていどか知らない。まあ、これを禁煙のステップとして使う人がいる、というのはありえるかなとは思った(※目的外使用はやめましょう)。
それにしても、もうおれはネオシーダーどうこうより、自分がネオシーダーを吸ったことがある、という事実を見つけてしまったことの衝撃の方が大きい。人間の心のなかには、こんなくだらない「ささいだけれどずっと気にかかってること」がたくさんあって、それはその「ずっと気にかかっていた」ことをクリアしているのに、また忘れて、「ささいだけれどずっと気にかかってること」の箱に入れてしまっていた。それで、「初めてネオシーダー吸ってるなあ」とか思っていたのだ。おそろしい、おそろしい。人間の体験や記憶なんて、じつにいい加減だ。ああ、はじめてのネオシーダーの味はほろ苦かった。……って、ほらもう記憶を操作して前後させている。おれなんて、じつにいい加減だ。まったく。
……ヨモギ? そういうのもあるのか。