【実録】これが大学中退者の末路だ!

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こんな記事が話題になっていた。

www.ishidanohanashi.com

おれも物心ついたときからなにも考えず、「将来は灰色のスーツを着たサラリーマンというものになるのだろう」と漠然と思い浮かべて生きていた。ただ、サラリーマンになるにもそれ相応の学歴なども必要だろうから、という理由で塾に通い、中学受験をしたりした。神奈川県にはア・テストというものがあって……という理由をいちいち説明しないが、算数、数学、そして音楽や体育という実技から逃げるための中学受験という面もあった。おれは自分が想定していた中で最低のすべり止めの二次試験になんとか合格した。そこにも落ちていたら、地元の荒れ気味な公立中に通い、また別の人生を歩んだだろう。

それから6年間、おれは漠然と中高一貫の私学に通った。そして、大学に入り、灰色のサラリーマンになるために。男しかいない学校だった。高校3年になってからは、予備校にも通った。おれは父親から「わしもそうだったから、一浪と一年の留年は許す」と言われていた。おれは一浪で早稲田大学というところに入るつもりでいた。なに学部でなにを学びたいというでもなく、漠然と父親と同じ大学に入るだけのことというつもりだった。

ところが、漠然と4学部ほど受けた早稲田は全滅したのに、慶應の文学部というところに拾われた。現役の一撃必殺だ。なにせ受験科目が辞書持ち込み可の英語、小論文、世界史の3科目だった。今はどうなのか知らない。ともかく、おれの得意科目は現国であって、辞書持ち込み可の英語など、答えを持ち込んでいい現国にすぎず、小論文は得意の作文であって、世界史はセンターレベルだ。おれにもどうにかなったのだ。

入学式かなにかである教授が言った。「文学部だと就職に困ると思うかもしれないが、この大学のブランドなら大丈夫である。好きにやればいい。ただし、東大、京大、早慶は在学者が犯罪を犯すと、大きく大学名が報道されるので、それはやめてくれ」と。

そして晴れておれは湘南ボーイの慶應ボーイになった。すごくモテる、はずだった。が、おれはともかくコミュニケーション能力が低く、塾高上がりのウェーイなブルジョア子弟にも馴染めず、友人もろくに作れず、フランス語の活用を覚えるのも嫌になった。文学部だけが1年早く日吉から三田に移るという点もきつかった。今は知らないが。

大学2年。おれは、いよいよフランス語の活用をおぼえるのにもうんざりし、「2人1組になって課題を提出せよ」という授業に完全に嫌になった。幼稚園から小学校から、中学、高校からやってきた、暗記し、集団でなにかをしなきゃいけないってことに、もうほんとうに愛想が尽きた。夏休み前の最後の日のこと、下校するために門から出たとき、おれはもう二度とここには来ないだろうと思った。妙に晴れ晴れとした気持ちになった。

大学生の夏休みは長い。おれはほとんど引きこもっているか、大井と川崎のナイター競馬に行くくらいしかしなかった。あとは黎明期のインターネットでエロ画像を漁っていた。テレホーダイが終わるまで、あと何分?

そしておれはそのままずるずる家に引きこもり、大学の夏休みがいつあけるのかよく把握していない両親が「あれ?」と思うころには、立派な不登校大学生になっていた。おれは一年と半年くらい通っただけで大学を中退した。

中退したおれは、起業の道を選んだ……わけがないだろう。ファミスタをしたり、ダビスタをしたり、親に小遣いをねだり南関四場の競馬に行ったりした。終わらない夏休み。おれは立派なニートになった。そのころはニートなんて言葉はなかったけれど。

そんなおれが、同じ競馬サークルにいた人間がフジテレビのアナウンサーとしてテレビに映ったのを見たとき、何を感じたと思う?

しかし、おれはもう、人生から降りた。あとは親の遺すであろう財産を食いつぶして、遊んで生きていこうと思っていた。そう思いたかった。それがどうだろう、破産、夜逃げ、一家離散、これである。ドラマチックでもなんでもない。おれがレールから外れてぼけーっと暮らそうと思って乗り込んだ船は泥舟だった。ただそれだけのことである。そのころのことは、頭に靄がかかって思い出せない。

そのあとは、零細企業になんとなく紛れ込み、食うや食わずの生活をかれこれ20年近く送っている。その間に起業しようとか、独立しようとか、資格をとろうとか、スキルアップしようとか、人脈を広げようとか、まったく思わなかったし、今も思っていない。なんでそんなかったるいことをしなくちゃならんのだ。おれは何もしたくなかった。それが、なんの因果か自業自得か、労働などというものをしなくちゃいけなくなって、もうそれだけで精一杯だ。

そうして、40歳も手前にして、ろくなスキルもなにもなく、会社が終わればそれで終わり、という人生。先行きは自死か路上か刑務所か。そんなんで、双極性障害を発症して病院に通っている。初診のとき、医者から「大学中退したのは、大麻?」と言われたりする。

そんなおれは、皆様からいただいた小麦粉、お米、パスタを食って生きている(カテゴリー「お恵み」参照のこと)。そのうえ、いただいた靴を履いてテクテク歩いてるデクノボー。完全に擱座している。これがおれという大学中退者の末路だ。なにも考えないで生きてきた人間の末路だ。おそろしい、おそろしい。

だから、夢と希望をもって、目的を持って生きている人間というのは、ほんとうにキラッキラしてるな、と思う。Chercheur d'Or、けっこうなことじゃないか。年齢なんか関係ない。おれはレールから逃げて、灰色のサラリーマンになるという夢もなげうって、結局はこの有様だよ。Soy un perdedor I'm a loser baby, so why don't you kill me?

だから若者よ、たぶんきみは今、黄金の時代の中にいる。きみに見えているインターネットの景色は、おれやおれらの世代が見ているものとはまったく違うはずだ。そこには永遠の沃野が広がっているんだ、きっと。そして、自分も世界もキラッキラすぎて、周りが見えにくくなることもあるだろう。だけど、キラッキラなんだぜ。もうそんなの、だれが止められるっていうんだ。立派な大人なら止められるかもしれない。だが、おれみたいな負け犬には止める理由もなければ資格もない。アドバイスも苦言もない。その能がない。ただ、黄金の世界の中を、思うぞんぶん駆け抜けるがいい。駆け抜けるがいいさ。無責任にそう言うしかないんだぜ。

そして成功したら、なんかおれに恵んでくれ。

以上。

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