期待はずれの国

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期待はずれの国には、期待はずれの国民が住んでいる。音頭を取って、なにかをしようというやつがいないではないが、どうも期待はずれっぽいなと思うと、音頭取りが引きずりおろされて、期待はずれに終わりそうだったなにかは、まったくの期待はずれのしろものになったりする。鈴を鳴らし、笛を吹き、太鼓を叩いて、神輿をかついで祭りをやろうというやつがいたりもするが、期待はずれに終わるのが目に見えているから、だれも家から鈴も笛の音も小さいし、太鼓は倉庫の中から出そうというものもない。担がれた神輿は、期待はずれの国民たちが「どうせほかのだれかが支えるだろう」と思ったために、ついには地面に落ちてしまう。こんな期待はずれに終わったのはだれのせいだという追及も期待はずれに終わり、なにもかも期待はずれのまま後かたづけすらされないのだった。そんな期待はずれの国にはほかの国も愛想をつかすし、来てみてもだいたい期待はずれに終わって、ますます期待はずれの国は期待はずれの国になっていったのだった。そんな期待はずれの国で最近流行っているのが穴を掘ることで、こればっかりは期待はずれの国民も熱心になっている。なぜならそれは自らの墓の穴だからだ。期待はずれの国民は、もう人生もこの国の行く末も期待はずれなのにうんざりして、墓を掘っているのだ。そればかりは期待はずれに終わらず、みなの期待どおりに、それぞれが掘った穴にそれぞれが入り、期待通り永遠の眠りについたのだった。おしまい。