- 作者: 藤田伸二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/05/17
- メディア: 新書
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藤田伸二。おれが競馬を始めたころの西といえばどんな感じだったろうか。ほとんど当時のダビスタの構図に近いかもしれない。まずはなんといっても武豊が別格で君臨している。河内洋、南井克巳の両ベテランがいる。ちょっと枠の外というところに田原成貴がいる。そして、藤田伸二がいて、角田晃一がいて……そんなところか。四位洋文や幸英明というのは、まだ出てきていなかったように思う。
して、その藤田である。この本を読むと、もうすでに騎手を引退することを決めている。そう強く感じる。この本などを読んでいたり、雑誌かなにかで藤田の近況を知っていた人には、あの五ヶ月前の引退も、そう驚かなかったのではないかと思う。そういう雰囲気が強い。もうおれはやり終えた、そういう感じが強い。そりゃあもちろん、ホースマンの夢であるダービー(フサイチコンコルド)、日本の競馬のお祭り有馬記念(シルクジャスティス)、騎手の腕が最も問われる春の天皇賞(ヒルノダムール)を勝って満足していると、そう騎手本人が言ってたら反論のしようもない。
で、その上で、言いたいことがあるから本を出したりするのである。その言いたいことはどのあたり? というのが気になるところであった。が、まあなんというか、エージェントや大オーナーの力が強くなりすぎていて、若手日本人騎手が育ってこない。目先の勝利に必死になるから荒い騎乗が目立つようになる。岩田康誠みたいな騎乗フォームは好かない、そんなところだろうか。まあ、想像の範囲内。とくに騎乗マナーのようなものについては、藤田のフェアプレー賞の数を前にして物を言える人もほとんどいないだろう。
もし、昨年のレース中、後藤(後藤浩輝騎手)が落馬した事故で、俺がそのきっかけを作った康誠(岩田康誠)の立場だったら、しばらく馬には乗れないと思う。
一見豪放磊落のように見えて、繊細なのである。とはいえ、べつに外国人騎手や地方出身騎手を毛嫌いしているふうでもない。
もっとも、安藤さんはレース前の輪乗りで突然、ユタカさんとかに「このレース、何メートルだったっけ?」とか「このレースは内回りと外回りのどっち」なんて聞いてくる。こちらが脱力するくらい常にリラックスしていて、しかもしれで勝ってきたのだから、すごい人だった。あの人は常人離れした感覚の持ち主。俺もたまに、距離を忘れちゃうことがあるけど、安藤さんほどじゃない。
あんたもかい! とはいえ、このアンカツの話どっかで見たことあるけど、この本あたりが出典なんだろうか。
あとはまあなんだろうね、藤田自身は地方競馬なんかのパドックで馬見てもわからんし、馬券も当たらんとか、なんでも馬具つけりゃいいもんじゃないだろとか、高速馬場をやめるべきとか、いろんな主張をしている。しかし、たとえば、高速馬場と故障率とか統計を見たら故障減ってるじゃんとか、そういう話なかったっけとか思ったが(要出典)、騎手の感覚というのはそれはそれであるものなのだろう。
そうな、騎手の感覚というか美学というか、そういう点なあ。おれのようなファンからすると岩田がインを強襲したり、的場文男御大が人十割みたいなアクションで脚の上がったような馬で追い込んでくるのが好きなのとは違いが出てくるよな。「時速60キロの生きものの上に乗ったことがないから言えるんだろう」と言われりゃそれまでだ。それにたぶん、馬の上で大暴れしない方が馬にとって楽に、速く走れるというのが正解なのだろうけれども。しかし、たとえばいつかのジャパンカップのロッキータイガーで、桑島孝春が必要以上に風車鞭を振るったというあたりに感動があるじゃないか。まあ、別の話かもしれないが。
そんでもってまあ、なんだ、一番の主張みたいなんは、大オーナー、要するに社台グループが力を持ちすぎてる。でも、社台が悪いんじゃなくて、それを見過ごしてる競馬会が悪い、というところ。これはまあそうなんだろうな、としか。おれだって『血と知と地』くらい読んでるし、大社台がリアルな競走を、それこそ競馬だけに博奕を打って勝ってきたことくらい知ってる。弱肉強食の中を勝ち抜いてきたことを知っている。とはいえ、寡占状態がファンにとって面白いのかどうかというと別だ。ゆえに、藤田がJRAを批判するあたりもわかる。
そんでもって、騎手の問題。この本が出たときよりさらに進んで、ミルコ・デムーロとクリストフ・ルメールが日本競馬会の所属騎手になるところまで来ている。そんでもって、関東の騎手を見ても、おれが競馬を見はじめたころから岡部幸雄が抜けたくらいで、相変わらず横山典弘がいて田中勝春がいて蛯名正義がいて……若いのは三浦皇成? 田辺? 津村? よくわからない。後藤はいなくなってしまった。しかしなんだろうね、内田博幸に戸崎圭太となるとね、やっぱり地方でガンガン乗ってきた騎手っつーのは、たとえ限られた競馬場、限られたコースであれ上手くなるもんだなあと思うわけよ(いま、岩田と内田が不調だとかいうのはちょっと隅に置いといて)。したらなんだろうね、競馬学校も中央と地方分けないで、統合しちゃう。でもって、よほど声がかからないかぎり騎手は地方競馬からスタート。それも賞金の少ないところから。そこで勝ち抜いてきたやつが中央に行く。そういう仕組みが必要なんじゃねえの。地方競馬が踏み台になる、「地方の名手」というものがなくなる、あたり地方にとってはおもしろくない部分もあるかもしれねえが、どうだろうかね。馬は中央から地方へ、人は地方から中央へ。いっそのこと、調教師だってそんなんなればいい。……でもなあ、大オーナーお抱えの調教師、外厩調整に文句いわねえ調教師優遇の現状だとなあ、とかいう話になるか。
うーん、わかんね。レースくらいわかんね。とはいえ、おれは今年まだ競馬に負けてないんだぜ。なにせ1レースも買ってないからな。なにせ金がない。金がないうえに、なにか機械による購入で必勝があるものに、人間が挑んでもおもしろくないよな、という気持ちもある。強いて買うなら大きなレースで多少なりとも贔屓の馬を買うくらいか。はたしておれが今年はじめて競馬を買うのはいつでしょう、と。なんか話がバラバラになっちまったけど、おしまい。
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- 作者: 吉川良
- 出版社/メーカー: ミデアム出版社
- 発売日: 1999/02
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- 出版社/メーカー: NTT出版
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……まさにミスター競馬、野平祐二。これはすばらしい本なので必読……必読!