
要するにおれは負けすぎた。レーヴムーンの相手に勝ち馬を入れていない時点で終わっていた。

おれは4時に家を出た。カメラ(α65)を肩からぶら下げてふらふら歩き出した。
たいそう負けたものだ。負けるにしたってほどがある。レーヴムーンから買ってあの相手は選べるはずだった。

大阪杯? サトノクラウンから買ったよ。サトノクラウン本命のみなさまご愁傷様。前のレースで母父フレンチデピュティか? そういう方向か? とか思って、それで、三連単の相手にステファノスもヤマカツエースも入れといたよ。
意味、なかったけどな!

おれは公園に向ってあるいた。医者に「ジョギングはやめておけ」と言われている。ウォーキングならいい。歩くのだ、ひたすら。

ウォーキング、ジョギング、サイクリング。医者がなんと言おうとそのラインだ。おれは寒さにめげてまったく運動から遠ざかっている。野菜は食っているが、運動をしていない。瞑想はなおさら。

4時から5時の公園。犬、子供連れ多し。ジョギング少数。その中に独身中年が何気なく(通報されないように)入っていくのにはなにが必要か? カメラではないか? フルサイズではないにせよ、一眼レフの。

なにか、写真が趣味の人だろう、そう思われればいいだろう。「不審者だ」と言われたら、自分から警察を呼んではっきりさせてやろう。おれは痩せるために歩いているのだ。

痩せたところでどうにかなるものではないわけだが。なにがどうにかなるのか、人生が、だ。

犬、子供、ジョガーは少ない。ましてやカメラをたすきがけにして歩いている男は。

ここはそういう土地、根岸の山の上。

全部が高級で、おれなどが立ち入っていい場所ではない。

それでもまかり通る。貧困層の意地というものがある。

染井吉野はまだにせよ、咲き誇っている花もある。

山手じゃなく根岸のドルフィンだろうに。

サクラじゃなくハナモモだろうに。

京浜東北線と交差する。

グラデーションを描く。

なにかまるいもの。

すごく眠そうなネコ。

いよいよ疲れたおれはバスに乗って本牧通りを帰ったのさ。贅沢だ。馬券に負けたのに贅沢だ。痩せるつもりで歩いていたのに不本意だ。すべて、この世は、おれの、思うとおりには、いかない。