映画『聖の青春』を観る

 

聖の青春

聖の青春

 

 恥ずかしながらというか、なんというか、おれはこの映画の原作である『聖の青春』を未読なのである。未読のかわりに、たぶん2冊持っているが、そこに意味はないのである。指せもしなければ、『聖の青春』も読まずに将棋ファンを名乗れるのか。まあ名乗るつもりもないのだけれど。

というわけで、映像化作品からいってみた。松山ケンイチの太り具合が見事だったし、東出昌大羽生善治も「少しデカイ」という感じはしたけれど、あのころの垢抜けない感じがよく出ていたのである。すごい奇人でもないし、冷血な勝負の鬼でもないけれども、やっぱりどっか特異な感じのする羽生なのであった。リリー・フランキーはやや好々爺すぎる感もあったが、森信雄先生のインタビューを思い出したりしてみると、それもいいのだと思った。

それにしても村山聖、だ。将棋界にはいろいろな伝説的人物がいていろいろな伝説があるのだけれども、村山聖もそこに入る将棋指しに違いあるまい。余計な説明は必要あるまい。

村山聖 - Wikipedia

もっとも、村山聖がその死によって伝説になってしまったというのは悲しいし、惜しい話にほかなるまい。今なお生きていたら「コンピュータ将棋」に立ち向かっていただろうか。A級にその名があったろうか。とはいえ、病気でなければ将棋と出会うこともなかったかもしれない。いくら仮定を重ねたところで、現実は現実でしかなく、そこに「聖の青春」がたしかにあったのだと、そう想うのみである。

 

聖の青春 (角川文庫)

聖の青春 (角川文庫)