おれが20年かけてたどりついた仕事法を公開しよう

おれは仕事が重なるとわやくちゃになる。いや、わやくちゃになる前に、最後に頼まれた仕事に取り掛かってしまう。それより前に頼まれていた案件の方が時間的に優先すべきだとしても、とりあえず目の前に提示された仕事を始めてしまうのだ。そして、「なんでそんなのやってるんだ、それは後でいい」、ということになる。あるいは、先に頼まれていた案件をすっかり失念してしまったりする。そうなると、おれはもう、頭がパンクする。

というわけで、おれには秘書が必要だ。

……と言いたいところだが、よろずDTP、ライティングの末端二等兵に秘書などつけられるはずがない。

そこで、おれは秘書のかわりを見つけた。

ポスト・イット ふせん ノート 75x50mm 100枚x10個 ブルー 6561-B

でかい付箋、これである。なにか頼まれたら、たとえそれが比喩でなく一分で終わることであっても、案件を書きつけて目の前のiMacに貼り付ける。一分で終わったら、剥がして捨てる。

一枚の付箋には一件の案件しか書かない。できるだけ細切れにして書く。終わるまで先方とのやりとりで何週間もかかるようなものであったら、それ全体を書いてはらない。「○○の初稿を送る」、「○○の修正」……、いったんボールを投げる、そのときまでのことを書く。

今まで、自分のこの欠陥を意識して、たとえばリマインダーのアプリなど使うこともあった。が、それではだめなのだ。うまくいえないが、画面の中のこととして、作業と同化してしまい、すぐに忘れてしまうのだ。

その点、紙の付箋というものは、画面の外にあって、存在感がある。手書きした、という記憶もあなどれない。そして、いま、上のサイズの付箋が8枚、おれのiMacの画面下で、静かな重圧をかけてきている。貼るスペースは足りず重なり合っているが、そこにあって、読もうと思えば読める。おれはこれを上司なりに見せて、「どれ優先しましょう?」と言う余裕ができた。

20年、20年くらいかけて、ようやくこのようなやり方に気づいた。頭の悪い人間、仕事のできない人間というのはこういうものなのだ。どうだ、すごいだろう。おれの脳は、仕事中、ずいぶん楽になった。一つ一つの作業が早くなったわけではないが、仕事をいくつも抱えてパニックにならない。大きな進歩だ。もっとも、AIとロボットにやがて殺されるのが。

しかし、どうしておれの脳に、このような簡単な機能が標準搭載されていないのか、ちょっとわからない。他人の脳には搭載されているようにも思うし、各人それぞれになにかしら記憶や認知を外部装置に頼っているのかもしれない。いずれにせよ、でかい付箋で2020年までは生きたいと思っている。以上。