映画『ドリーム』あるいは、また私たちは如何にしてソ連の熱核弾頭を心配するのを止めて計算式を愛するようになったか

 

ドリーム (字幕版)

ドリーム (字幕版)

 

洋画の邦題がいいだとか悪いだとかいうなにかの書き込みの羅列を見ていて、この作品が出てきた。「あ、おれ、これ見てねーじゃん」と思った。見ようと思ったのに、見てないのだ。あれー?

というのも当然、『ドリーム』では、一体何といえばいいのか、印象から抜け落ちる。これほど単純な名前というのは、それはもう、なんか引っかかりがない。

とはいえ、この作品に当初つけられていた邦題『ドリーム 私たちのアポロ計画』では無茶苦茶である。だって、アポロ計画ではないのだもの。さすがにそれはやっちゃあいけないよ、というぐらい離れている。アポロ計画のアの字も出てこない。これに反発の声が上がるのは当たり前だし、変更したのも当たり前である。

が、しかし、だ。原題の『Hidden Figures』をそのままカタカナにして『ヒドゥン・フィギュアズ』でいいのかというと、ちょっとそれもどうかという思いはある。原題にダブルミーニングがある(どういうダブルミーニングか知りたければ検索したまえ)、などと言っても、『ヒドゥン・フィギュアズ』ではどうにもなんというか、なんか英語を解さない、おれのような平均以下の日本人にはピンとくるところがない。これはこれで、『ドリーム』並に引っかかりがない、とも言える。

あ、どういう映画かって? Wikipediaでも読んでください。

ドリーム (2016年の映画) - Wikipedia

というわけで、まだ人種差別、女性差別のあるなか、NASAで計算手やエンジニアとして活躍していく黒人女性たちの深い苦悩と出世とよろこびを描いた作品である。

で、かわりのよい邦題はないものか……と考えて数日、おれには思い浮かばなかった。『ドリーム 私たちのマーキュリー計画』でもいいように思うが、「マーキュリー計画」がどのていど通じるのかわからない。"Hidden Figures"を訳してもよい感じにはならない。なるほど、配給元が「アポロ計画」などと言い出すわけだ、と思った次第。やっぱりその、難しいよな。少し同情。

つーわけで、なんだ、おれみたいに『ドリーム』というスカッと脳内から忘れてしまうような邦題で、うっかりこの映画のことを忘れていた人、よかったら見てみてくださいな。たぶん、損はしません。たぶん、ね。うーん、それにしても、なんかいい邦題は……。