映画『すばらしき世界』を観て、「仲野太賀は映画を一翻上げる役者なのでは?」と思った。思ったので近いところの出演作である本作を観てみた。なにやらNTRものらしさもあり、これで二翻だ。
……が、一本の映画としてはいい感じに一向聴まで行ったところで手が止まって流局したかな、という印象。って、なんで麻雀で例えてるんでしょうね。本作に麻雀のシーンはありません。
ストーリーはというと……Amazonのページから引用しよう。
【あらすじ】
幼馴染の厚久と武田。そして奈津美。学生時代から3人はいつも一緒に過ごしてきた。そして、ふたりの男はひとりの女性を愛した。30歳になった今、厚久と奈津美は結婚し、5歳の娘がいる。ささやかな暮らし、それなりの生活。
だがある日、厚久が会社を早退して家に帰ると、奈津美が見知らぬ男と肌を重ねていた。その日を境に厚久と奈津美、武田の歪んでいた関係が動き出す。そして待ち構えていたのは壮絶な運命だった。
うーん、それなりのあらすじ。まあ、けど、そんなところか。しかしまあ、なんというか、「壮絶な運命」がポンポン出てきて、どうにも乗り切れないところがあった。
一方で、学生時代に歌手目指してたとか、そういう要素いる? みたいな、なんかとっちらかった感じもあって、どうにも。どうせなら、もっと主人公とその労働と家族の破綻あたりに絞ってもよかったんじゃないかないか。
そう、主人公の仲野太賀はよかったんじゃないのか。あの無表情はいい。なにか不安になるところがある。ただ、友人と会社を立ち上げたいという設定も取ってつけたような感じがして、どうにも。単に英会話と中国語会話を習っている理由にしたかっただけかな。
そりゃまあ、なんだ、日本語だと言えない言葉が英会話だとすんなり言える、という着眼点はいい。いいんだけど、その設定活かすなら、もっとそこに絞って、という感じもあって。
役者陣はほとんど素晴らしい配役と演技だったんじゃないかと思うんだけど、それだけになんか惜しい。主人公の兄役なんかも存在感あって、だれだろうと思ったら役者じゃなくて韓国の映画監督だったりとか。まあそれはともかく、ちょっと演技が惜しいし、この惜しさでは記憶から消えてしまう感じもある。なんとなくいい感じの日本映画の雰囲気をまとってはいたけれど、それだけかなという。ここという見せ場というか、情念というか、魂が見たかった。え、それがあのラストシーンかな。うーん。
でも、ひょっとしたらおれは主人公の妻の「女心」というものがまったくわかっていないだけで、そこに共感を抱くことができたら、裏ドラまでついてくるかもしれない。そこはわからない。おれにはわからない。