ローカルグリーンフェスティバルである。ローカルでグリーンだが、行われるのは横浜赤レンガ倉庫だ。実のところ2019年にも行っている。
おれ、四十にして初めてフェスというものに行くことになった。女が「くるりがローカルグリーンフェスというものが赤レンガ倉庫あたりである。行かないか」というのである。女はおれより二十年上である。「フェスいいですね」ということになった。
おれ、四十三にして二度目のフェスである。さて、なぜこのご時世に行こうと思ったのか。
RHYMESTER、Nulbarich、くるりと並んでいるのである。だれかがおれに、「なんかフェスやるとしたらどんなラインナップがいい?」と聞いて、おれが何も考えずに観たいアーティスト並べたかのような面子である。今風の言い方ではないかもしれないが、すべてのアルバムを持っているアーティストが三組並んでる。それが土日開催の土曜日の同じステージだ。こんなのってあるか? しかも会場は近所である。
コロナ? なあに、フジロックとかサマソニとかコミケとかみんなやってるじゃないか、大丈夫だ、行くしかない。そう思って行くことにした。当然女の人を誘った。女の人はくるりのほかにNulbarichのファンになっていた。ウォーキングするときの音楽にぴったりだそうだ。
(して、赤レンガ倉庫は微妙な場所にある。どう微妙かというと、関内駅北口と桜木町駅のどちらから行ったらいいか迷うのである。赤レンガならみなとみらい=桜木町では? と思われるかもしれないが、意外にどっちでもいい。関内駅北口で待ち合わせとなった。これまた微妙な話で、歩いて行ってもいいが、無駄に体力も使いたくないが、山手と石川町どちらに出ても同じくらいの場所に住んでいるので、迷って石川町南口から一駅乗った。石川町のホームを先頭に向かって歩いている間に、関内駅まで行けたのではないか? ……ローカルなどうでもいい話)
さて、着いたのは12時ごろ。11時開場、12時開演なので、ステージからは音が聴こえてきているくらい。でも、まだなんかベンチとか空いているので座ったりできる。が、とりあえずなんか食べますかということで、フードコーナーへ。
ライスの上にチキンと豆のコロッケみたいが載ったなにかである。これがけっこう美味で、なおかつボリュームもあったため、最後まで空腹になることはなかった。もちろん、いきなりビールも飲んだ。
ふむん。 pic.twitter.com/qDPE9rYMWK
— 黄金頭 (@goldhead) 2022年9月3日
(sic)boy
さて、いろいろのパフォーマンスの感想と行きたいところだが、(sic)boyさんは遠くから座って聴いていたのでごめんなさい。「1MC、1DJですかね?」、「あ、MCが二人に」などと話していました。
新東京
せっかく早く来たのだから、知らない人も聴いてみようと、ちょっと小さいステージへ。森の中の小さなライブ会場といった感じでいい感じ。
して、新東京。ギターレス大学生バンド。公式アプリからプレイリストを聴いてちょっと面白そうかと思った。なるほど、ギターがいない。ギターがいなくてもバンドなんだな。まあそうか。ステージの音響のせいか、若干ボーカルに迫力がなかった。ベースの人は高校球児か日本兵かという外見で印象に残った。最後の方で、ボーカルの人が「言いたいことをすべて言います」とかいうので、なにかと思ったら物販とツアーの宣伝だった。その意気やよし。ライブで物販宣伝コーナーをやるベテランもいるくらいだしな。
さて、天候は快晴。週中の天気予報では曇り、雨だった。バッグにポンチョを入れてきたくらいだ。女の人が「かき氷を食べたい」というのでまたフードコーナーに退場してかき氷。
うむ。 pic.twitter.com/o5nLIIxZy1
— 黄金頭 (@goldhead) 2022年9月3日
アールグレイオレンジビネガー。+100円で「アルコール入り」という選択肢もあったが、そこはこらえた。
RHYMESTER
かき氷から戻って、ステージの前方ど真ん中で待機。RHYMESTERを生で見るのは初めて。だって、ヒップホップのライブとかおっさん怖いもん。とはいえ、RHYMESTERから日本語ラップに興味を持ったといってもいいので、非常に楽しみ。ちなみに、女の人はまったく興味なし。iPhoneでRHYMESTERのWikipediaなどを読んでいた。
して、しばらく待って、登場! うおー本物、かっけー。Future is Bornからだっけか。なんかね、宇多丸先生がヒップホップやラップを知らないフェスのお客さんに「DJとはなにをしているのか」とか教えるようなところもあって、さすがの先駆者にしてキング・オブ・ステージというところ。二人のやりとりも軽妙で楽しい。2019年にNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDに興味をまったく示さなかった女の人も笑っているのでよかった。
して、夏なので夏の曲、「フラッシュバック、夏。」やるかなと思ったらやったな。しかし、まあなんといっても、「せっかくだから夏のお土産を持って帰ってください」といって、その前フリに宇多丸がTUBEの曲を歌いかけてやめる、などの小ネタを仕込んで、「ラップは普通ほかの人のカバーはやらないんです」と説明(まあ、「B-BOYイズム」をhy4_4yhがカバーしたりしてるけどな。特別な話か)した上で、流れてきたイントロはスチャダラパーの「サマージャム'95」。これはすげえ盛り上がった。過去にやったことがあるかどうかは知らないが、貴重なの観た、聴いた! って感じ。Mummy-Dのアニの物真似(?)とかな、もうね、ついつい流されちまう。「ヒップホップの曲でみんながわかって盛り上がるのはすごいことなんですよ」と宇多丸の解説通り。あ、鎮座DOPENESS×環ROY×U-zhaanのカバーもいいですよ。
そんでもって、向こう側のステージでKANDYTOWN待ちの客に声かけたり、なんかまだまだバチバチなところもあって、かっけえんだわ。それよりも、なによりも、二人ともすげえ動くのよ。「そんなに動くのかよ!」ってくらいのムーブ。ジャンプあおられても、もうステージの上がガンガン動いているし、こっちも跳ねるしかねえみたいな。いやあ、キング・オブ・ステージだわ。
そいでね、「フェスで時間がないのにカバーとか社歌(西原商会のやつ)とかやったけど、最後はシリアスな曲で」といって、「ONCE AGAIN」やってくれて、おれはもう最高。だって、この曲でRHYMESTERに興味を持ったのだもの。あ、すごい新参者ですよ? かっこよかったな。なんかもう、ワンステージ観ただけで踏んできた場数が違うって感じがわかったような気になって、それでなおかつガンガンのバリバリで踊って踊らせて、そんでもって、日本語ラップの歴史を解説でもねえけど、振り返りみたいなことやってみせて(生で「B-BoyのBの定義」を聴くことができるとは)。
まあともかく、おれにとってはフレッシュな初体験だったのですっかりやられちまったな。来てよかったな。宇多丸が「今日が夏のピークです、皆さんの人生のピークです。可哀想に」って言ってたけど、まあピークよ。そう決めた。なので、せっかくだからフェスのTシャツ買ってしまった。
けどな、本当は「K.U.F.U」のコール・アンド・レスポンスとか声出したかったよな。心で声出せって言ってたし、まあしょうがねえな。
あと、すげえどうでもいいことだけど、Mummy-Dがロールアップしたズボンの裾をずっと気にしていて、最後は開き直って下までおろしていた。これには女の人も気づいていた。
KANDYTOWN
RHYMESTERが最後に「さあ、KANDYTOWNのステージへ走れ!」と言ったが、走る元気がおっさんにはなかったので、Nulbarichまで休む、を選択しました。すみません。しかし、遠目に見たらステージのサイズに対してメンバーが多すぎるなと思って、調べてみたら総勢16名とのことで。
Nulbarich
JQというのは本当になんというか、独特の存在感があって、すげえいい。かっこいい。だらしなく着た緑のジャージもいい。Nulbarichの楽曲がいいのはもちろん、ステージでの立ち振舞いがいい(過去に一回見ただけだがな!)。歩いていても、端っこに座っていても様になる。
そんでな、今回は前回あえてやらなかったNEW ERAからはじまったっけな。バンド構成でな、もう音源とはぜんぜん違うアレンジでな、そんでとにかく踊らせにくるのな。クラップ・ユア・ハンズなのな。マイク片手にな、自分の肘んところを叩いてリズム示すのな、かっこいいよな。でもな、おれみたいなリズム感に欠ける人間にはな、ワン・ツー(一回叩く、二回叩くの繰り返し)がうまくできんでな、なんかそのときだけは音楽のできない小学生時代を思い出したりした。まあ、だれにも叱られないし、気にもされないからどうでもいいんだけど。
でもって、また変なMCもしよんのな。それでな、なんか哲学的なこと言ったりして、話が逸れたりな。「言いたいことも言えないこんな……」みたいなこと喋った瞬間にギターが「ポイズン」の冒頭弾いたのはうけたが、あれは即興だったんかな。まあいいや、音楽とメッセージみたいな話して、「さっきRHYMESTER先輩のステージを横から見てて」って言って、「あ、2019年にもNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのステージ見たとか話してたな。マジでヒップホップ好きなんだな」とか思ったんだけど、まあそれはいいとして、RHYMESTER先輩言うたら、こないだのアルバムの二枚目でMummy-Dと演ってんじゃんって。そんで、おれは勝手にステージの並び見て、一曲目にその「Be Alright」やんのかと思ってたんだけど、まあやんなくて。したら、そこで登場だったな。「ポイズンの後に出にくいだろ」って言いながら出てきたな。衣装変わってて、もう裾を気にしてなかったな。
あとはもう、なんか「皆さんの力を借りて、Nulbarichエグいほど売れてるなと思わせて下さい」って、とにかくダンスをあおって山下達郎のカバーやったんだけど、すみません、その原曲しらんかったです。
いやあ、それにしても、おもしれえな、すげえな、すてきだな。なんかもうJQみたいに動きたいよな、踊りたいよなって思うよな。脳に入り込まれてるよな。また見たいよな。
Lucky Kilimanjaro
さて、今回のお目当ては先に書いた三組ということになるが、実はもう一つあって、それがラッキーキリマンジャロだった。よく、TOKYO FMのスカイロケットカンパニーで流れて、ちょっといいなと思っていたのだ。
なので、女の人にも「ラッキリもいいっすよ」と吹き込んでおいたら、おれよりもたくさん聴いて詳しくなっていた。
でもって、もうリハーサルからダンス、ダンス、ダンス。「ローカルグリーンフェス仕上がってるね!」って、まあ、仕上がってるかもしれないが。けっこうラッキリのTシャツ着ている人も多かったっけな。
まあいいや、もう、なんか「今日はダンスチューンだけ集めました!」とか言ってて、とにかく「踊り方は自由です!」って言って、踊りまくってて、あおりまくってて、いやあ、仕上がってるといっても、いますげえ踊れているのは若い人か、夕方から来た人なのでは、などと思ったり。
正直、おれにとっては「ラッキリってこんなに踊るようなタイプだっけ?」と思ったけど、いや、果てることないダンスのバンドだった。女の人によると知ってる曲をたくさんやってくれてよかった、とのこと。
とはいえ、悪いがちょっと早めに切り上げさせてもらった。一番のお目当ての前の方を取りたかったから。
くるり
さて、くるりだ。こないだのツアーではマニアックな曲ばかりやっていたが、ここではどうするのか? ラッキリを背後に聴きながら出番を待つ。
今回はここのところのいつもの編成とはドラムの人が違う。もとからこのところのレギュラー的存在だった石若駿ではなく、あらきゆうこ(この人もくるりサポートの定番)の予定だった(と、女の人に聞いた)が、コロナで新田浩平という人になったとのこと。
で、やはりフェスである。いきなり「Tokyo OP」をやったりはしない。でも、やったのはいきなり「蟹」である。「琥珀色の街、上海蟹の朝」。これ、くるりのライブ行く人には定番中の定番。毎回やってる。でも、これってファン以外そんなに知っているのかな。わからんけど、「上海蟹」のくだりでは、ちゃんと指をピースサイン(蟹)にして腕振ってみました。やってる人も少しだけいた。
で、その後がフェス仕様というか、A面集というか。「ばらの花」、「ワンダーフォーゲル」、「ハイウェイ」……いや、どれもすばらしい。なんかもう、泣きそうになったもん。なんでかわかんないけど、やっぱり、くるりファンだぜおれは、という謎の感情が出てきて。「虹」とかもやって、「虹」は女の人が一番か二番目くらいに好きな曲で。あとはなんだっけ、なぜか横浜で「京都の大学生」やったな。まあ岸田さんが自分で言ってたんだけど。
そんでもって、最後は「横浜でこの曲は申し訳ないんですけど」とか言うて、「東京」。これもかっこよかったよな。もうね、近年の岸田繁歌唱はなにか昔とはまったく別物で、昔も昔もいいんだけど、今のもいいので、このバージョンで音源残してくれないかなとか思ったりもするのだけれど。あ、それが映像集の円盤ですかね。
いやあ、まあよかったよな、とか思って終演。でも、アンコール拍手が起こってやまない。「あれ、フェスでアンコールあるの?」と半信半疑だったけれど、出てきたなー。一曲だけって、最後は「ロックンロール」。これはもう大もりあがりの曲で。松本対岸田のギターバトルとかやってさ。松本くん、ステージの前に出すぎて、コードがピーンってなってたからね。いやもう、フェスをしめるのにこれ以上ないね、そういう曲よね。
つーかね、くるりがラストってのはいいよね。最後はもう疲れて、あんまり踊れないからね。くるりはね、ダンスをあおらないし、じっくり聴かせてくれるからね。そういうキラーチューンたくさん持ってるね。でもね、体は自然と動くしさ、もうね、超いいよな。くるりは、いいよな。おれはね、くるりのファンなんだ。女の人もファンなんだ。また横浜来てくれ。できたら横浜の曲も作ってほしい。ほとんど縁はないけれど。
帰り
帰りも関内駅を目指すことに。どっかでラーメンでも食べましょうかとかいって。でもって、人が多い通りから一本県庁側にずれたら、あれだ、店とかないし。だったらもう、関内駅の向こう側行きますかとか言って歩いてたら、なんかスタジアムの方からこっちに向かってたくさんの人が歩いてくる。地下鉄の駅に行くようだ。なんだろう? したらもう、スタジアムに近づくにつれてすごい人。なんだこれ? ベイは今、広島に行ってるはず(遠藤淳志に神の祝福あれ!)。野球じゃない。でも、野球のレプリカユニみたいの着てる人が多い。そして、タオル……。そこに書かれた文字は「TUBE」! 宇多丸のあれは前フリだったのか! 岸田繁が「横浜は人が多いですね」と言ったのもTUBEファンを見てのことだったのか!(たぶん違う)
まあ、とにかくローカルなグリーンなフェスとは違って、凄い人だった。こりゃあやっぱり関内から関外に出なくては、となって、結局「なか卯」で親子丼食べた。
親子丼食べながら、感想戦となった。「くるりはサポートメンバーのドラムの人は交代できたが、もしも佐藤さんがコロナになった場合、出演をやめるのか、それともベースのサポートを探すのか」などという微妙な話になったりした。「東京」の「パーパーパッパパー」のコーラスができないといけないというが、いや、ミュージシャンならできるでしょう、というか、べつにコーラスなしでもいけるのでは、とか。でもまあ、メンバーの半分というか、それ以上かもしれない佐藤さんが出られなきゃ、くるりとして出られないでしょう。
いや、しかしなんだろうか、ほかのお客さんの「客層がいい」(どこと比べているかはわからない)、「空いている」(それがいいことなのかはわからない)など、このフェスはいい。正直、日曜日のラインナップで行こうという気にはならないけれど、気になるアーティストがいれば行って後悔はないと思う。ドリンクも食べ物もトイレも行列に悩まされることはなかった。ルールぶち破りの荒れた客もいなかった。いや、最後の最後には大声出す人もわずかにいたが。それで、なんかわりと天候も今年は涼しくなっていったし、悪くない。大さん橋に飛鳥 IIとか泊まっていて、景色もいい。あ、でも、カクタスステージ、たまに排気ガスというか、オイルというか、そういうにおいがしたんだけど、あれはなんだったんだろ。マスク越しだ。飛鳥 IIが犯人? いや、もっと近いシーバスか、遊覧船かな。まあ、それは些細なことだ。
そんじゃまた、来年、ラインナップによっては。never young beachとか合うと思うんだけど、どうですか?
ところで、このリストバンド、外し方がわかんなくてハサミで切ったんだけど、正解だったのかな?
結局は、帰りは石川町駅からということになり、それならおれは歩いて帰る方が早いので歩いて帰った。フェスから徒歩圏内。横浜市の中区の外れに住んでいても、まあそういうこともある。それなりにいろいろあるところに住むというのは、悪くない。