古本屋の主人になりたい欲がかきたてられる

流行っていない喫茶店のマスターになりたい。女子大生のアルバイトに、「店長、こんなんじゃ潰れちゃいますよ」とか言われたい。それでも実は不動産とか所有していて家賃収入で食っていきたい。……などというのは、かなり定型的に語られる夢の一つだ。

 

似たようなものに、古本屋の主人になりたい、というのもある。好きな本に囲まれて、ぼんやりと本を読みながら一日を過ごす。客は来なくてもいい。実は不動産の収入とかあるから。

 

……地主になるのが夢なのか?

 

いや、そうではない。古本屋の主人になる話だ。

 

goldhead.hatenablog.com

先日、イベントで古本屋さんを借りた。そういうスペースなのだ。ビルの三階にある小さな店舗。その、レジのようなところに座ってぼんやりしていると、「いいですね」の風が吹いてきた。備え付けのBluetoothスピーカーから好きなHedigan’sだのnever young beachだの流して、本を読む。「すごくいいですね」の嵐が吹きまくる。これはよい、よすぎる。古本屋の主人になりたい!

 

……いや、そう思ったのよ。いやね、冒頭に書いたやつはあくまで定型的なよくある夢にすぎなかったのだけれど、実際に、古本屋で、レジみたいなところに座って、本なんて読んでみると、これは夢よ。本好きの夢といってよい。断言してもいい。

 

しかしまあ、危険な誘惑である。おれには金が無いからなにもできないが、ちょっと蓄えのある本好き中年などが「あの感じ」を味わってみるといい。もうどっかちょっと大学の近くの不動産屋で空き店舗を探し始めるに違いない。

 

いや、そこまで突き進む人はあまりいないか。でも、いっときの古本屋の主人気分を味わいたければ、書肆書斎さんを時間借りすればよい。べつにイベントをする必要もない。店を開ける必要もない。でも、開けておいたほうが雰囲気は出るかもしれない。お客さんが万が一入ってきても、お金のやり取りをする必要はない。QRコードを読んで、その場でサイトから決済するシステムだからだ(ただ、このシステムはエラーがなぜか多かったので、対応がたいへんかもしれない)。

https://www.shoshishosai.com/about

書店「書肆書斎」については、店主は勤め人かつ子持ちのため、平日の夜など無理のなくサスティナブルな範囲で開店します。営業情報はInstagramにてお知らせしています。

また、不定期営業の合間、誰も店内にいないことを逆手にとって、「コワーキングスペース」としての営業も開始しました。事前予約することで無人の店内に入店して、作業するもよし、本を読むもよし、落ち着く空間になっております。

 

 

いやあ、しかし、書肆書斎さんの本棚のセンスもよかったし、そういう意味でも貴重でやばい時間だった。不動産屋などは、こういうやばい「大人の職業体験」できるようなスペースを作って、「もう居抜きで喫茶店をはじめるしかない!」とか「やはり蕎麦屋を開店するしかない!」とか、迷える中年を地獄に送り込むシステムを構築してはどうだろうか。

 

おれは地獄に入り込む余裕がないので、とりあえず空からおれの土地がどこかの一等地に降ってくることを待つことにする。そういう話だってたまにはあるだろう。ないこともないだろう。