承前。
(※希少がんのNET、というのが面倒くさいのでこの記事では「がん」に統一しています)
いろいろ書いてきたけど、腹の中にがんがあるっていうのは、むちゃくちゃ怖いよ。10/20の宣告の日が早くこないかと思っていたが、近づいてきたら近づいてきたで、それはそれで怖いよ。前も書いたけど、まだ医者から面と向かって「がんです」とは言われていないんだよ。でも、なぜおれがこんなにがんだと騒いでいるかといえば、上の記事を読んでもらえればわかるだろう。読まない人もいるだろうから、客観的な情報を書けば、「CTの診断書に書かれていた」、「がん患者でなければ保険適用されないPET/CT検査を保険適用で受けた」というところだろう。まあ、なによりは内視鏡のときの市大病院の医師による「NETだよな」、「手術! 手術!」というのが大きくて、まあそれ以前にクリニックの病理検査で「癌疑い」があって……と、またひたすら思考はさかのぼり、ぐるぐるになってしまう。
まあいろいろな思いを総合すると、怖いってことだ。むちゃくちゃ怖いな。やけに人工肛門のことを心配している(その可能性は高い)ところもあるが、がんってことは死ぬってこともあるんだよな。それを今になって考えると怖くなってくる。とはいえ、死そのものへの怖さというとちょっと違う。死へ向かう一歩一歩の確かな足取りが怖い。十三階段を一歩一歩踏みしめていくのが怖い。ただなにかその観念的な怖さというのもあるが、現実的には抗がん剤など使うのだろうか。使った副作用はどんなものなのだろうか。なにより、いくら金がかかるのだろうか、そんな心配が絶えない。
金、これの心配は尽きない。今のところ、最初の大腸内視鏡検査から、市大病院での検査、新横浜でのPET/CTと何万円も使ってきたが、まだ何万円で済んでいる。来月からアパートの家賃が払えないということはない。だが、このあとどれだけかかるのかは不確定だ。入院一回、手術一発なら、まあ10万円だっけか、そんなところで済むだろう、ダ・ヴィンチを使ったとしてもそんなものだろう。だが、抗がん剤を併用(抗がん剤でがんを小さくしたあとに手術とか)になると、どうなってくるかわからない。むろん、手術で取ってしまったとしても、人工肛門になって金がかかる。なにやら行政から装具などの支援はあるらしいが、どんなものかまだ調べていていない。身体障害者の手帳はもらえるらしい。これでおれは精神障害者の手帳(わすれていたかもしれないが、おれは精神障害者である)とのダブル手帳持ちになる。ひょっとしたら、障害年金出るんじゃねえのか。このあたりはよくわからない。人工肛門になっておれの抑うつがさらに増して、ろくに働けないとなれば、出る可能性があるかもしれない。それでも、べつにさもしい顔をして金をもらえたからといって楽しい話ではない。さすがに失うもののほうが大きいと思う。さらにいえば、すごく金のかかるコースに突入してしまったら、仕事もできなくなり、収入も途絶え、生活保護も見えてくるだろう。もちろん、生活保護を水際作戦で遮断されて、ホームレスになることもあるだろう。ろくに働けない精神と身体に障害をかかえた人間など、無敵の人そのものだろう。刑務所のオストメイト対応はどうなっているのだろうか。おそらくは垂れ流しだろう。感染症かなにかですぐ死ねるかもしれない。
ここにきて今まで書いてきたものを思うと、やはりおれは楽観的すぎるのだろう。死へのダイレクトな可能性、これを見ないようにしてきた。金をすべて失う可能性、これも見ないようにしてきた。すべてが甘すぎるのだ。
それにしても、なかなかにこのような相談をできる場所というのがよくわからない。がん患者の相談コーナーみたいなものは市大病院にあっただろうか。だいたい、市大病院のような大きな病院というものはより効率的に患者をさばいていかなければいけないから、なかなか話し込むというのはむずかしい。そういうのを求めるならば、もっと金のかかる高級な、自由診療の病院に行かなくてはならないが、そんなところとは無縁だ。市大病院こそおれが受けられる最大で最良の医療ということになる。
とはいえ、ひとつだけ言いたいことがあるとすれば、さすがに治療費について無頓着すぎないかということだ。大腸内視鏡検査の相場はクリニックで最初に受けたからわかっていたが、PET/CTが保険適用で3万円というのは、市大病院の他病院との連携コーナーみたいなところで初めて説明された。正直、3万円なら払える。おれは払える。ただ、3万円が出せないという人もいるんじゃなかろうか。いざ、予約が終わったあとに、費用はこのくらいです、と言われる。もしも、保険適用で30万、50万だったらどうだったろうか。おれはPET/CTはどうでもいいので、できるだけでかい範囲を適当に切除してくれたらいいです、といったかもしれない。これは市大病院のようなところに限った話じゃないが、自由診療の内視鏡検査など以外の治療でどのくらい金がかかるか事前にわからなさすぎる。とはいえ、病気などというものは状況によって千差万別だし、「大腸がんならこのくらいね」という相場もないだろう。治療法はたくさんある。仕方ないことなのかもしれない。
こういうとき、がん保険にでも入っていれば、またなにか違ったかもしれないが、おれは金がなく生きてきたのでそんなものはない。入っていれば少しは賭けに勝ったような気になったかもしれないが、たとえば希少がんを引き当てる確率に賭ける気にはならない。
いずれにせよ、10/20は近い。それで終わるわけではない。ようやく治療への始まりの一歩だ。そしておれはむちゃくちゃに怖がっているし、10/20以降になにか書ける精神状態にあるかどうかもわからないので、こうやって文章を書いている。書いたらどうなるわけでもないが、奇声を発して町中を走り回るかわりにこうしている。
なあ、あんたはおれの話を読んで、がん検診を受けたくなったろうか? それとも、受けたくなくなったろうか? おれとしてはどちらをすすめる気もない。本当に、そんな気持ちだ。好きに判断してくれ。それだけだ。
