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さて、帰るか

さて、帰るか

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といっても面白い話なんてくてさ。「螽蟖」ってなんて読むか知ってる? ……うん、くわしいフレンズなんだね、すごーい。首切螽蟖。だから、あまり詳しい話もできなくてさ。それでも近日中におれにとってなにか不幸というか不運というか、試練というか、ともかく嫌なことがありそうなんだ。すごくいやな気分だ。すごく嫌な気分が待っているのに、こうやって、頭でものを考え、心臓が動いて、体も動く。嫌なものにむかって走っていくんだ。嫌なものから逃げたくて走っていくんだ。おれにはアルコールが必要だ。世界にはいろいろの肌の色の人間がいて、いろいろの気候のなか、いろいろの文化を作ってきたが、なにかしらだいたいアルコールをそれぞれ飲んでいるような気がして、人間というものは嫌なものに向かって走っていくときも、嫌なものから逃げていくときも、アルコールというものが必要だったんじゃないかって思うんだ。まあ、アルコールじゃなくたっていいさ、なにかいい野菜とか、冷たいやつとか、そんなものがなきゃ、悲しくって生きていけないんだ。でも、フレンズ、いや、おれはおまえとフレンズになった覚えなんてなかったっけ。それでもフレンズ、フレネルレンズ、おれは人間社会の除け者なんだろう、きっと。抗不安剤を酒で飲み込んでハロー、スワロー、どこに飛んでいくの? どこか暗いところに落ちていく。おれは500年くらい生きる予定で生きていて、こないだ500年も生きられないんだって気づいたときはショックだったな。もう予定の前倒しもできない。500年生きるために、着実にステップアップしてたのにな。おれが500年生きたら、それはすごいぜ、すごいんだぜ。でも、50年もあやしいもんだ。まあ、この地球の歴史から見れば、あんたが80年生きて、おれが500年ところで、瞬きの差なんだ。電波望遠鏡が何光年の向こうにアミノ酸を見つけたからってどうだっていうんだ。おれが死んだら、まるで義務のように処理してくれ。それは義務なのだから。おれが死ぬ権利、おれが死ぬ義務。鍵をしめろ、スイッチをひねれ。ボタンを押せ。それが全部だ。流行曲が流れてきて、Mで待ってたおれはもうおやすみという塩梅。悪くない地獄に落ちながら、煉獄のことばかり考えている。おれの人生にいい日もあった。完全に悪いことばかりじゃなかった。総体で見れば悪かったが、悪くない瞬間だってあった。おれの買った馬が他の馬を尻目に一着でゴールに駆け込んだときの興奮。馬よ、どこまでも走っていけ。この世には果てがない。おれがそう決めたんだ、たった今。たった今から、この宇宙は始まったんだぜ。それを忘れんな。おれを崇めろ。おれを蔑んだ目で見るな。おれの背中にシールを貼るな。そして、踊れ、あの稜線から太陽が顔を出すまで踊りつづけるんだ……。