水原一平事件、あるいは人間が試されるような状況を作らないほうがいいことについて

水原一平の犯行に米メディア本音「我々は最悪のことをしていた」「バレロはどこに行った?」なぜ大谷翔平に厳しかったのか…一変の現地報道まとめ - MLB - Number Web - ナンバー

不正アクセスされ預金を盗まれた口座は、大谷がエンゼルスでメジャー1年目を迎えた2018年にキャンプ地のアリゾナ州で開設したもので、同容疑者がこのときに手助けをしたため口座や個人情報を把握し、その後に口座に紐づけた電話番号やメールを容疑者のものに変更。送金の際に銀行から認証を得る際には電話で大谷に成りすましていたことも判明した。代理人のネズ・バレロ氏と経理担当、財務アドバイザーから口座情報の開示を求められると、「本人が私的な口座なので情報を見せたくないと言っている」と嘘をつき代理人らが気づく機会を封じるという、大胆で悪質な犯行だった。

 

水原一平事件について。

goldhead.hatenablog.com

前にもちょっと書いた。その後進展があって、上のようなことが公的な捜査期間から明らかになった。事件当初に、メジャーで元通訳をやっていた人がこんなことを述べていた。

元MLB日本人通訳 選手の「口座開設や振込、高額買い物」の経験明かす 大谷と水原氏の関係に言及(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

 自身はMLBの通訳時代、アスリートの口座開設や振り込み、クレジットカードの作成などを頼まれたことがあること、納税手続きをしたことがあること、実際に数万ドルの車の購入など高額な金額を扱ったことがあることなども明かした。

 

なので、水原一平のやったことは巨大だったが、普通にありえる話だろうとは感じた。アメリカを目指す野球選手なら、プレーや日常生活のための英会話くらい勉強するかもしれないが、現地で銀行口座を開設するとか、クレジットカードを作るとか、そういう書類仕事までするのは難しいと思う。というか、おれは日本を出たことがないから知らなけれど、多国語対応でもしてくれないかぎり、かなり難しいんじゃなかろうか。

 

で、それはそうと、なんというか、ちょっとだけ、これ、水原一平に同情? 同情でもないか、なんか情状をどうかというか、そういうところがある。

 

その一方で、大谷翔平が悪いとは言わない。最初からそう思っているし、それは変わりないけど、でも、ちょっとだけ、無意識、無頓着なところで、本人のまったく意図しない結果として、ほんのちょっとだけ、ミスというか、失敗はあったよな、というところがある。

 

それはなにかというと、結果として水原一平という一人の人間を「試す」状況を作ってしまったことだ。

 

人間というのは弱い。弱いし、悪いところもある。前科があるとか、そこまでいかなくても、まったく後ろめたいことなく何十年も生きてきたと言い張れる人はどれだけいるだろうか。いるというなら、それはサイコパスに分類されるような気がする。

 

そんでもって、そんでもまあ、警察に捕まったり、だれかから訴えられたりしたことなく生きてきた、まあ真っ当といえる人間でも、なんかそういう状況になったら、悪いことをしてしまうことだってありうる。

 

〈純金茶わん・窃盗〉「150万円くらい借金があった」「生活保護を受け昼食はバナナ」逮捕された男の父親が独白した“ギリギリの生活”と展示場の杜撰な警備体制「1万円落ちていたら拾うのと同じですよ」 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け

 

たとえば、この事件のこの父親の言葉は徹底的に叩かれ、批難され、馬鹿にされているが、おれはどうも、人間、そういうところあるよな、と思ってしまう。人間、そこまで常に正しくいられるのか、いつでも正義を貫けるのか。貧すれば鈍する。

 

というわけで、水原一平事件について、ちょっとだけ同情の余地があるとすれば、目がくらむような大金にアクセスできてしまう、という状況があったことだ。大谷にちょっぴりミスがあるとすれば、やはり無頓着すぎたことだ。大谷がもう少しでも自分の金に気を使っていれば、水原一平は大谷の金に手を出さなかった可能性はある。それでも、病的ギャンブリングで破綻はしていたかもしれないが。あ、あと、あの賭博自体も違法なんだっけ。

 

まあともかく、言うまでもないが、悪いのは水原一平だ。純金茶碗盗んだやつも悪い。それは言うまでもない。ただ、人間が試されるような状況は作らないにこしたことはない。その点で、水原一平は不幸であった。情状酌量の余地があるとして、返済する金から5万円くらい、あるいは懲役から14日間くらい減らしてもいいと思う。いや、ほんま、どんな求刑になるんだろ。想像がつかん。

 

こういうのをあれか、「犯罪機会論」的な発想とでもいうのかな。ちょっとわからん。

追記2:「犯罪機会論」の記事がホッテントリにあった。

www.bengo4.com

わからんが、「すべての人間は時と場合によっては泥棒になりうる」くらいの前提……は行き過ぎかもしれないが、人間が試されるような状況は作らないほうがいい。そんなことをちょっと思った。ちょっと思っただけなので、この考えもころっと変わるかもしれない。でもまあ、ちょっとそんな風に。だってまあ、人間って弱いから。

 

追記:昔、同じようなことを書いていた。

人間よ、人間の同胞よ - 関内関外日記

 人間が人間を試すということ、とくにその魂を試すということは、人間が人間として生きるなかで、するべきではないことではないでしょうか。神ならざる人間が、同じ人間の魂をはかってはいけない。その人の魂を見るのに、あえて魂を晒させるようなことをしてはならない。違いますでしょうか。
 ああ、人間よ、人間の同胞よ、私は人間の名においてここに告白する。私はその罪を犯した。愚か者の私が、こともあろうに人の善なるか悪なるかをはかろうとしてしまった。あえてしなくてもいいことをしてしまった。ああ、人間よ、人間の同胞よ、私が犯した罪を聞くがいい。聞こえる耳あるならば人類の罪を聞け、盲いていなければ刮目して見よ……!
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