感想文

生と死とセガサターンと人間の歴史 長嶋有『もう生まれたくない』を読む

もう生まれたくない (講談社文庫) 作者:長嶋 有 講談社 Amazon 三月に起きた津波は、その高さが「数字で」発表された。その数字より高いところにのぼったら生き残り、低ければダメだった。あるいは、同じ建物の三階に逃げた人は死に、屋上の人は生き残った。…

映画『ドント・ルック・アップ』を観るのこと

youtu.be Netflixで配信中の『ドント・ルック・アップ』。ある大学教授と大学院生が、地球に接近する彗星を発見する。接近どころか衝突する。これをアメリカ大統領に伝えようする。伝える。伝わっているのかどうか。マスメディアで訴える。訴えるが、世間に…

『アナキスト本をよむ』をよむ

アナキスト本をよむ 作者:康, 栗原 新評論 Amazon 「アナキスト本」をよむ、のではなく、「アナキスト」本をよむ、なのだ。だが、アナキストがよむ本なのだから「アナキスト本」なのかもしれず、そのあたりはどうとでも解釈すればよいだろう。 というわけで…

年末年始『三体』三昧

おれが劉慈欣の『三体』を読み始めたのは西暦2021年12月30日14時20分(JST)頃である。そのことは「サンマルクカフェ」のレシートから明らかだ。 さかのぼって数十分前、おれは伊勢佐木モールのブックオフにいた。恥を晒すが、ブックオフだ。そこでおれが見…

黄金頭さんが2021年に見てよかったアニメ ベスト3

実のところ、まだ秋のアニメを見終えていない。が、なんだ、2021年内にこういったエントリーは終わらせておかなくてはということで、終わらせておく。 goldhead.hatenablog.com はっきりいって、どこで冬と春を区切っていいかわからない。だが、このエントリ…

いったい何をKillしたのか? 『映画大好きポンポさん』

映画大好きポンポさん 通常版 [Blu-ray] 清水尋也 Amazon ――じゃあ、なんにも書かれていないワープロの画面の前にいるとしよう。きみは苦労してようやく一つの言葉を、あるいは一つの文章を書いた。その瞬間、きみは無数の可能性の中からたった一つを選んだ…

なぜアナーキーは成立しないんだぜ? 栗原康『何ものにも縛られないための政治学 権力の脱構成』を読む

何ものにも縛られないための政治学 権力の脱構成 (角川書店単行本) 作者:栗原 康 KADOKAWA Amazon 「はじめに」にだいたい重要なことは書いてある 権力はいまやこの世界のインフラのうちに存在する。 ―不可視委員会 ぎゃあ、そうだったのか、おれたち、イン…

双極性障害者が『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』を読む

うつを甘くみてました#拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生 作者:ブリ猫。 ぶんか社 Amazon 家族もうつを甘くみてました#拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生 作者:ブリ猫。 ぶんか社 Amazon Kindle unlimitedが3ヶ月間で99円とかいうキャンペーンをやって…

日本には力強いおっさんが少ない 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』を読む

ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち 作者:ブレイディみかこ 筑摩書房 Amazon はじめに言っておくが、おれは『ハマータウンの野郎ども』を読んだことがない。 ハマータウンの野郎ども ─学校への反抗・労働への順応 (ちくま学芸文庫) …

ライトなビジネス書『宗教と哲学全史』を読む

【ビジネス書大賞2020 特別賞受賞作】哲学と宗教全史 作者:出口 治明 ダイヤモンド社 Amazon なんかで本書を知って、手にとってみて「あ、思ってたよりすげえ分厚い」と思ったけれど、読み始めてみたら「新書やん」と思って安心した。宗教と哲学の全史という…

柴田勝家『アメリカン・ブッダ』を読む

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 早川書房 Amazon 人は自分の見えないものを想像して、そこに見えない敵を作る。けれども、この国では、想像を人に言うことをの愚かさを誰もが知っているから、そこで争うことはないのだ。 ジョンは他の…

パンを軽視すると薔薇も枯れます 『そろそろ左派は<経済>を語ろう』を読む

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学 作者:ブレイディ みかこ,松尾 匡,北田 暁大 亜紀書房 Amazon そもそもおれは経済を語れない。算数がわからないからだ。 blog.tinect.jp ただ、算数はわからなくても、政治や社会については、文系の読…

われわれ躁鬱人? 坂口恭平『躁鬱大学』を読む

躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません― 作者:坂口恭平 新潮社 Amazon おれは双極性障害者である。医師に診断され、それ用の薬も処方され、精神障害者保健福祉手帳も持っているので、客観的に認められていると言ってもいいだろう。人…

おれにはなかった「あの頃」 映画『あの頃。』を見る

あの頃。 松坂桃李 Amazon 映画『あの頃。』。 松坂桃李主演×今泉力哉監督 で贈る、ハロー!プロジェクトにすべてを捧げた男たちの笑いと涙の青春叙事詩。2000年代初頭。モーニング娘。を愛してやまない“モーヲタ”たちが放った熱量をリアルに描いた劔樹人の…

近藤ようこの『高丘親王航海記』を読み終える

高丘親王航海記 IV (ビームコミックス) 作者:近藤 ようこ KADOKAWA Amazon おれに「好きな小説を五つだけ選べ」と言われたら、その一冊に入るのが澁澤龍彦の『高丘親王航海記』だ。澁澤龍彦世界の結晶であり、なおかつ澁澤龍彦自身の病気と死まではらんでい…

大原まり子『戦争を演じた神々たち』を読む

戦争を演じた神々たち[全] 作者:大原 まり子 クリーク・アンド・リバー社 Amazon おれはあまり昔からのSFファンではない。SFファンと呼べるかどうかもあやしい。絶対に千冊読んでいないだろう。 というわけで、この間、「大原まり子」という名前を知った。…

いまさらアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』を全部見た

Re:ゼロから始める異世界生活 ラム&レム Tシャツ ブラック Lサイズ コスパ COSPA Amazon こないだNetflixに加入した。とりあえず『範馬刃牙』を見た。次になにを見ようか。おすすめ欄にアニメが並んでいる中に『Re:ゼロから始める異世界生活』があった。そう…

2021年夏アニメの感想

もう秋アニメの2話が始まるタイミングだというのに、メモをしていなかった。夏アニメと夏で終わったアニメについてメモする。 かげきしょうじょ!! 第一幕「桜舞い散る木の下で」 千本木彩花 Amazon 【Amazon.co.jp限定】TVアニメ『かげきしょうじょ!!』音楽…

ひさびさにSF 藤井太洋『公正的戦闘規範』を読む

公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA) 作者:藤井 太洋 早川書房 Amazon たぶん、ひさびさにSFを読んだ。『公正的戦闘規範』。短編集。正統派、現代的、そして日本のSFだ。日本のSFだけれど、舞台が日本とは限らない。表題作の舞台は中国だ。そして話の中心になる…

坂口恭平『自分の薬をつくる』を読む

自分の薬をつくる 作者:恭平, 坂口 晶文社 Amazon 坂口恭平。おれと同世代で、おれと同じ双極性障害(躁うつ病)を患っている。それだけで気になる存在である。それ以外に共通項はなにもないかもしれないけれど、病気の人間とはそういうものである。 坂口恭…

『イニシエーション・ラブ』について

イニシエーション・ラブ (文春文庫) 作者:乾 くるみ 文藝春秋 Amazon おれは『イニシエーション・ラブ』という作品をまったく知らなかった。作品が発表されたときも、テレビで取り上げられて大ブレイクしたのも知らなかった。おれは最新の小説についてアンテ…

『GENKYO 横尾忠則』(東京都現代美術館)へ行く

GENKYO 横尾忠則 | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO 東京都現代美術館へ横尾忠則展を見に行った。今年の7/17から開催されていたが、女と「場所が東京だし、ワクチン打ち終わった秋に行きましょう」ということにしていた。お互…

なぜ君は立候補しないのか? 『黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い』を読む

またまた寄稿いたしました。 blog.tinect.jp 自民党総裁選の翌日というのは偶然だと思います。 選挙の話になります。 お読みいただけましたか? ……というわけで、この本の感想のようなものになっています。 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集…

深町秋生『ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走』を読む

ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:深町 秋生 宝島社 Amazon 深町先生の著書である。おれは深町先生の著書を愛するものであるが、「あれ、このシリーズどこまで読んだっけ?」とかなって、「これは読んでい…

穂村弘『蚊がいる』を読む

蚊がいる (角川文庫) 作者:穂村 弘 KADOKAWA Amazon またまたほむほむの本を読んだ。この本のブックデザインは横尾忠則だ。 穂村弘がどのような人なのか、おれはどのような本を読んできたのか。面倒なので、横だか下だかにある検索ボックスに打ち込んでくだ…

テロに対して私たちが一番注意すべきことについて

またまたBooks&Appsさんに寄稿いたしました。 blog.tinect.jp お読みいただけましたか。 読んでない? いや、読んだ。 読んだですね。 では。 今週のお題「爆発」。やはりテロといえばプレーヴェが……って、もういいですか。だいたい、言うことが古いのですね…

アニメ映画『同級生』を観る

同級生 野島健児 Amazon アニメ映画『同級生』を観た。2016年の作品らしい。おれがアニメというものを意識的に観始めてから何年経ったころだろうか。5年くらいは経っている。それでも、おれはこの作品を知らなかった。 なんとなく、懐かしいというか、オール…

『B面の歌を聞け Vol.1 服の自給を考える』を読む

●ZINEというのだろうか、『B面の歌を聞け Vol.1服の自給を考える』をある方から頂いた。面白かったので一気に読んだ。正式にどこで手に入るのかよくわからないので、それは各自調べてください。 『B面の歌を聞け』イベント出店&販売情報 - 夜学舎 ●Wordで作…

竹中平蔵と格差と板子一枚下の地獄

blog.tinect.jp また寄稿いたしました。 できたら読んでほしいな。 読んでくれたかな。 まあ、読まなくてもいいんだけど。 ちょっと自信がないというか、なんというか。 ……というわけで、この本を読んだわけです。 不平等論: 格差は悪なのか? (単行本) 作者:…

誰でも(マ・ドンソクでも)よかった通り魔の末期-映画『悪人伝』

悪人伝(字幕版) マ・ドンソク Amazon 悪人伝(吹替版) マ・ドンソク Amazon よく、無差別殺人、通り魔事件の供述で「誰でもよかった」というものがある。それに対して、「誰でもというのに、女性や子供など無力なものを狙っているのはおかしい」という声もあ…