感想文

櫛原克哉『メンタルクリニックの社会学 雑居する精神医療とこころを診てもらう人々』を読む

メンタルクリニックの社会学: 雑居する精神医療とこころを診てもらう人々 作者:櫛原克哉 青土社 Amazon おれは「こころを診てもらう」側の人間だ。当事者である。おれはおれの精神科に通い始めて十三年くらいになる。障害者手帳も持っている。初めて行ってか…

なんかありそうなんだが、どうも生態心理学よくわからねえな

おれは去年、「弱いロボット」の研究について読んで、生態心理学というものの存在を知った。 blog.tinect.jp 「弱いロボット」の考え方は非常に面白く、また、そのバックボーンにありそうな生態心理学は面白そうだと感じた。 なので、アフォーダンスについて…

あらゆる集団は内部の人間をやくざ者にする

親鸞の言葉 (中公文庫 よ 15-10) 作者:吉本 隆明 中央公論新社 Amazon 吉本隆明の『親鸞の言葉』を読んだ。『最後の親鸞』とか『信の構造』とかは読んだ。 この文庫本には鮎川信夫との対談が載っていた。その中で吉本はこんなことを述べていた。 革命家でも…

現代日本は人間社会の最先端なのか?

寄稿いたしました。 blog.tinect.jp シロクマ先生から恵贈いただいた新著、『人間はどこまで家畜か』の感想と、本書に記されていた未来予想の、自分なり考えを書きました。 人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造 (ハヤカワ新書) 作者:熊代 亨 早川書房 Ama…

2023年の振り返り:ジャンル別メモ(←AIが考えたタイトル)

2023年をいろいろと振り返ろうと思ったが、それぞれに振り返るには分量が少ないので、全ジャンルについて一番目とか二番目だけメモすることにした。金を使っているものもあれば、使っていないものもあるが、まあいい。ライブ行ったとかはチケットを買ったっ…

『ゴジラ -1.0』はマイナスのない映画だったんだが

公開一ヶ月経って、ようやく『ゴジラ-1.0』を観た。 そもそも、その存在が明らかになったとき、「これは観てみたいな」と思える設定だった。それはなにか。「終戦直後にゴジラが来て、どうやって戦うの?」だ。それに尽きる。そこがほとんどじゃないかとすら…

映画『福田村事件』のエンターテインメントについて

www.fukudamura1923.jp シネマ・ジャック&ベティで映画『福田村事件』を観た。ジャック&ベティに行くのはずいぶん久しぶりのような気もしたが、そうでもないような気もする。調べてみたら足立正生監督の『REVOLUTION+1』を観に行ったのであった。 安倍晋三…

双極性障害のおれが斎藤環・坂口恭平『いのっちの手紙』を読んっだ

いのっちの手紙 (単行本) 作者:斎藤 環,坂口 恭平 中央公論新社 Amazon 斎藤環と坂口恭平による往復書簡である。読んだのはしばらく前になる。坂口恭平さんは双極性障害を患っていた。「患っていた」? 過去形になるようなdisorderなのか。でも、どうもその…

いまさらながら『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る

女の人が『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観たいというので観にいくことになった。インディー・ジョーンズシリーズの第一作はおれが二歳のときの作品だ。女の人はおれより二十歳年上なので、シリーズに対する思い入れがある。 そのわりに、6月30…

ラストの手紙の意味―宮崎駿『君たちはどう生きるか』への対策と印象と感想

宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』を観てきた。公開から四日目のことだ。おれはこの映画を当然観るつもりでいた。宮崎駿映画だからだ。ビッグウェーブには乗るのが基本だ。ちなみに、この記事のタイトルでも今まで書いた「宮崎」はどちらも「宮崎」と…

映画『怪物』の感想

二週間前くらいに、映画『怪物』を観た。海外で賞もとった評判作だ。構成は独特だった。息子のいじめ被害、教師による虐待を疑うシングルマザーの視点、虐待を疑われた教師の視点、最後は子供の視点、となる。一つの視点ではそう思っていたものが、別の視点…

もしマネジメントに縁のない底辺労働者が『ドラッカー最後の言葉』を読んだら

ドラッカーを初めて読む ドラッカー最後の言葉 (講談社BIZ) 作者:ピーター.F・ドラッカー 講談社 Amazon 図書館の棚を見ていてこの本が目に入った。薄い本だ。「そうよな、ドラッカーよな」と思い、手に取った。少し読んでみたら、晩年のインタビューらしい…

『頭のいい人が話す前に考えていること』を読む。ってか、おれって頭のいい側の人間じゃん?

goldhead.hatenablog.com 先日の続きで、こちらの本から考えたこと書くけどさー。 頭のいい人が話す前に考えていること 作者:安達 裕哉 ダイヤモンド社 Amazon まず、基本的におれって頭がいいじゃん。あ、そう見えない? でもさー、どちらかっていうと、お…

黄金頭さんはビジネスパーソンを励まします

Books&Appsの安達裕哉さんより献本いただきました。 頭のいい人が話す前に考えていること 作者:安達 裕哉 ダイヤモンド社 Amazon 『頭のいい人が話す前に考えていること』、これである。 と、この本の感想を書く前に、なぜ献本に至ったか、という説明が必要…

天皇の話を追っていたら、藤原四兄弟の小説読んでたぜ

寄稿いたしました。 blog.tinect.jp ……わりと「自分が面白いと思ったこと」について書いております。この記事が面白いかはしりません。でも、おれが紹介したもんはおもしれーんだ。 しらねーけど、この話は面白いんだよ。読んだ? 読んだよね? というわけで…

『論語』って一億三千万人のためにあるのかなあ?

このごろ孟子が気になっている。気になっているので本を借りたりした。同じ棚に、こんな本を見つけたので、とりあえず手にとってみた。 一億三千万人のための『論語』教室 (河出新書) 作者:高橋源一郎 河出書房新社 Amazon 高橋源一郎の『一億三千万人のため…

安倍晋三元首相銃撃事件を描いた映画『REVOLUTION+1』をシネマ・ジャック&ベティで観る

足立正生の新作『REVOLUTION+1』を観るため、ジャック&ベティに行った。 ……と書いてもピンとこない人も多いだろうから、タイトルのようになる。安倍元総理銃撃事件直後から制作が開始され、国葬儀の前には仮公開された例の映画である。 とはいえ、おれにと…

2022年に読んだ本からおすすめしたいもの挙げたいのこと

今年はあまり本を読めなかった。五冊くらいしか読んでいないかもしれない。それでも、おもしろいと思った本、人にすすめたくなる本というものもある。もうろくに読まれなくなってしまったおれだけれども、さらに読まれない年末にまとめて再度おすすめしたい…

2022年のアニメを振り返ってナンバーワンを決めたいのこと

毎年おれは膨大な時間をアニメ視聴に使っているので、もったいないからなんか書き残しておきたいと思う。書き残さないと、自分でも忘れてしまうので。 冬アニメ 鬼滅の刃 遊郭編 第一話『音柱・宇髄天元』 Amazon え、これって今年だったっけ。忍者みたいな…

佐々木閑『科学するブッダ 犀の角たち』を読む

科学するブッダ 犀の角たち (角川ソフィア文庫) 作者:佐々木 閑 KADOKAWA Amazon なにやら、具と麺が乖離していてべつべつのものを食べたような、そんな本であった。前半は「物理学」、「進化論」、「数学」についての歴史が記されている。それは西洋のもの…

インターネットはネコチャンすぎるだろ

またまた寄稿いたしました。 ぜひともお読みください。 blog.tinect.jp ……お読みいただけましたか? ………読んでくれたよね? にゃ。 というわけで、おれはトキソプラズマの話が面白いと思ったのですが、それは記事の方を読んでください。 ここでは、ちょっと…

人生行き詰まっているおっさんも『すずめの戸締まり』に涙する

※ネタバレしないと感想文書けないので感じなので、ネタバレあります。 横浜ブルク13にあった新海誠監督のサイン エンドロールが終わり、劇場が明るくなると、後ろの座席から若い女の子たちががギャハハと笑い出したので、「え、今、そんなに笑うようなところ…

映画『オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体』は、あらすじが面白い

オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-(字幕版) コリン・ファース Amazon ja.wikipedia.org ミンスミート作戦(ミンスミートさくせん、英: Operation Mincemeat)は、第二次世界大戦中の1943年にイギリス軍が実行し、非常な成功を収めた諜報作…

マンボウやしろ『あの頃な』を読む……あの頃を思い出すために

あの頃な 作者:マンボウやしろ 角川春樹事務所 Amazon ……新しい生活様式とかニューワールドオーダーとかネクストフェーズとか、なんかいろいろな言葉や概念がどんどん押し寄せてきては、僕らを追い抜いていくような感覚がありますけど、そういう類のことでは…

高橋ユキ『つけびの村 噂が5人を殺したのか』(書籍版)を読んだ

つけびの村 作者:高橋ユキ 晶文社 Amazon 少し前にネットで話題になっていた話かな? と思った。その通りで、著者がいろいろの出版社に持ち込んだが売れず、noteで販売してみたが、それでも反応は少なく……と、思っていたら、いきなり売れたという話であった…

おまえも『ルミナスウィッチーズ』で泣け

ルミナスウィッチーズ 第1巻 [Blu-ray] 鳴海まい Amazon 第1話 WONDERFUL WORLD - はじめまして - Amazon この日記はすばらしいストライクウィッチーズ、すばらしいワールドウィッチーズを紹介するために誕生したことは何度も書いてきたが、はたして『ルミナ…

石原莞爾の妻との恋文

この間、中島岳志の『超国家主義』を読んだ。 超国家主義 (単行本) 作者:中島 岳志 筑摩書房 Amazon 同著者の『朝日平吾の鬱屈』、『親鸞と日本主義』をはじめとして、いくらかいろいろな当時についての本を読んでいたので、いわばダイジェスト的な本である…

深町秋生『鬼哭の銃弾』を読む

「鬼哭の銃弾」をAIに描かせたら微妙にリアルな何かが出てきた 映画『ヘルドッグス』見ようかなと思い、そういえばさいきん深町秋生作品読んでないなとか思って、そんでも映画見るならべつの作品いくかということにして、『鬼哭の銃弾』を読んだ。 鬼哭の銃…

劇場版『きんいろモザイク Thank you!!』を観た

劇場版「きんいろモザイクThank you!!」 西明日香 Amazon 『きんいろモザイク』である。『きんモザ』。すごくすごい好きなアニメだったかというと、すごくすごいほどではないけれど、けっこう好きなアニメだったように思う。なぜ不確実な感じかといえば、毎…

『マトリックス レザレクションズ』を観たような気がする

『マトリックス レザレクションズ』を観たような気がする。すまない、けっこう前の話だ。べつの映画の感想を書こうとして、ふと思い出したんだ。 マトリックス レザレクションズ(字幕版) キアヌ・リーブス Amazon 『マトリックス』。それはもう夢中になった……