櫛原克哉『メンタルクリニックの社会学 雑居する精神医療とこころを診てもらう人々』を読む

 

 

おれは「こころを診てもらう」側の人間だ。当事者である。おれはおれの精神科に通い始めて十三年くらいになる。障害者手帳も持っている。初めて行ってからのことは以前書いたことがある。

blog.tinect.jp

 

おれの場合はこんな感じだ。でも、おれが通っているところが「精神科」なのか「心療内科」なのか「メンタルクリニック」なのかよくわかっていない。「(地名)クリニック」という名前だ。正体がわかっていないのでウェブサイトを見てみたら「心療内科・精神科・神経内科・内科」と書いてある。ますますわけわからん。なお、医師自身はちゃんとした精神科医ですよ、なんとか専門医ですよ、みたいな感じの証明書みたいなのを待合室に提示している。「医学博士、日本神経学会認定神経内科専門医、身体障害者福祉法指定医、日本内科学会認定内科医、日本精神神経学会認定精神科専門医、精神保健指定医、日本老年精神医学会認定専門医、日本医師会認定産業医、横浜市難病指定医」らしいが、どんなもんかはぜんぜんわからん。

 

まあいい、「メンタルクリニックの社会学」と言われれば、まあ興味深い感じなので読んでみた。

 

「町や村のあちこちに、精神科診療所がどんどんできることが、私の夢である。そこで町や村の人が、気軽に診療や相談を受けられるようになれば、今日のゆがんだ精神医療の状況はかなり変わってくるだろう。いつまでも精神科医が、精神病院や大学にとじこもっていること自体が、異常な状況と言えば言いすぎだろうか」

 この言葉は、精神科診療所設立のパイオニアであり、開業のための指南書も著した精神科医の浜田晋(1926~2010)が遺したものである。

 

こんな文章からこの本ははじまる。なるほど、そうなったようではある。診療所。その定義も知らなかった。「病院」ではないのだな。おれの通うところは診療所、クリニックに違いない。

 

 「メンタルクリニック」という言葉は和製英語で、英語圏の人に言っても通じにくい。あえていうならば「精神科クリニック(psychiatry/psychiatric clinic)」が一番近いともいえるが、その中身や性質は日本と大きく異なるため、「メンタルクリニック」に直接対応した言葉であるとはいいがたい。

 

ちなみに、「メンタルクリニック」は和製英語とのことだ。知らんかった。

 

そんでもって、そういうクリニックは「精神科」を名乗りたくなかったとのことだ。

 

「精神科と書くとまず患者が来なくなるという。患者さんの内には精神科という名前だけは外に出さないでくれ、という声もある。神経科と書いてもひっかかる。神経内科だったらひとまず安心ということになるそうである」(朝日新聞社「モダンメディシン」編集部1982 237)

 

1982年でそういう感覚。それでもって、1990年代になると、アメリカでこんなブームが起きる。

 

……いわゆる「プロザック・ブーム」であがる。当時プロザックは性格や人格をより望ましいものに変える「魔法の薬」として持て囃され、その脳への作用は、うつや不安といった症状に埋もれてしまった「本来の私」を取り戻す、あるいは明るくポジティブな性格な生まれ変わることで、より充実した社会生活の実現を可能とするものとしてイメージされた。これを精神科医のピーター・クレイマーは「美容精神薬理学」と呼んだ。

 

 

 

プロザック、これよな。SSRI、そしてSNRIへ。おれなんかは、そういうことを調べずにはおられない。ベンゾジアゼピンがどうなのか、そういうことを「当事者」が調べる。

 

メンタルクリニックの患者もまた、精神医学の診断基準、薬物療法や精神療法の有効性、そして医療者の知識や技術に対して懐疑や不信感を抱くことがある。さらに、精神医学の過誤を諫める報道や、その「過剰さ」や「乱用」をめぐる警鐘を耳にすることも少なくない。このような状況においては、世に氾濫している医療や健康に関する情報を鵜呑みにせず、自ら情報を吟味し検討する一種の「情報リテラシー」のようなものが求められやすい。ドゥミットもこのような主体的な取り組みが人々の能動性や自己効力感を強化し、「専門家としての患者(expert patient)」が誕生する温床になるとも指摘する。

 

まあ、なんだ、ちょっと酔っているので、このあたりで中途半端に終わりにしたい。患者は患者で、こんなふうになって、診療所は診療所ですげえおしゃれになったりしている。

 

この本では、実際の患者へのヒアリングの例も多く、おれも「そんな感じだったな」とか思ったり思わなかったりもある。発達障害ってなんだろうね。そういうものもあるんだろうね。おれもそうかもしれないかもね。

 

あ、おれね、ちょっと酔ってるから、これ、ひどいね。もっとちゃんと紹介したい本だったね。なんかカタコトね。でもね、なんか、メンタルクリニックの社会学って言葉に興味ひかれたひとは読むがよいね。ほんね。そんなね、ごめんなさいね。