おれがアメリカ生まれなのはみなも知っているだろう。おれの思い出話といえば、アメリカのことばかりだ。あまりにもアメリカの話だらけなので、こいつは心の底からアメリカ人なんじゃないかと思うやつもいるだろう。そうだ、おれは真のアメリカ人だと言わなくてはいけない。おれほどアメリカ人なやつはアメリカにもいなかった。おれが生まれたのはアメリカはネブラスカ州のノース・プラットという街だ。ノース・プラットにもそれなりにアメリカ人らしいやつはいたが、おれが一番のアメリカ人だった。アメリカ人選手権というものがあったら、おれは一等賞をとるだろう。だが、アメリカ人のおれはそんなものには出場しない。真のアメリカ人はそんなものに出場したりしないのだ。アメリカ人でないやつには、なんで真のアメリカ人がアメリカ人選手権に出ないのだろうといぶかしむだろうが、アメリカ人にはアメリカ人の考え方がある。おれはノース・プラットでもアメリカ人であることを誇示したりはしなかった。さりげないしぐさでアメリカ人であることは決まる。アメリカ人がアメリカ人であるというのはそうことだ。最近はそんなこともわからないアメリカ人も増えているが、おれにはそれがわかる。違いのわからないやつは何世代アメリカに住んでいたってわからないし、移民してきて一代目のやつでもわかるやつはわかる。アメリカには太陽があり、花が咲いている。マロニー湖に遊びに行くのもアメリカらしい。おれはアメリカの車にのって、アメリカを走る。アメリカの飛行機に乗ることもあるかもしれない。アメリカの飛行機はアメリカの国内を飛ぶ。アメリカは広いから、国内で移動するときも飛行機に乗る。おれは今もアメリカに住んでいて、毎日アメリカの大地を踏みしめて労働に勤しむ。勤勉さもアメリカ人の美徳だ。かといって、ときに荒ぶるのもアメリカ人だ。その時機を読めないやつにアメリカ人の資格はない。夜はオピオイドをバーボンで流し込むのがアメリカ流だ。アメリカのやり方についてこれないやつはついてこなくていい。ここは世界一の国のアメリカだ。世界で二番目や三番目ではアメリカになれない。ここは永遠のフロンティアであって、その名をアメリカという。アメリカには砂漠もあるし、山もある。アメリカの森の中にはアメリカのカエルがいるだろう。真のアメリカ人は砂漠も愛する。おれたちアメリカ人にはいいやつもいるが、悪いやつもいる。真のアメリカ人はだいたいがいいやつで、おまえたちを歓迎する。ただし、アメリカのやりかたで歓迎させてもらう。なぜならおれたちは真のアメリカ人であって、それ以外のやり方を知らないからだ。宴が終わったら、おれたち真のアメリカ人は、真のアメリカの闇に向かってそれぞれに歩いていく。