読書

ひさびさにSF 藤井太洋『公正的戦闘規範』を読む

公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA) 作者:藤井 太洋 早川書房 Amazon たぶん、ひさびさにSFを読んだ。『公正的戦闘規範』。短編集。正統派、現代的、そして日本のSFだ。日本のSFだけれど、舞台が日本とは限らない。表題作の舞台は中国だ。そして話の中心になる…

坂口恭平『自分の薬をつくる』を読む

自分の薬をつくる 作者:恭平, 坂口 晶文社 Amazon 坂口恭平。おれと同世代で、おれと同じ双極性障害(躁うつ病)を患っている。それだけで気になる存在である。それ以外に共通項はなにもないかもしれないけれど、病気の人間とはそういうものである。 坂口恭…

『イニシエーション・ラブ』について

イニシエーション・ラブ (文春文庫) 作者:乾 くるみ 文藝春秋 Amazon おれは『イニシエーション・ラブ』という作品をまったく知らなかった。作品が発表されたときも、テレビで取り上げられて大ブレイクしたのも知らなかった。おれは最新の小説についてアンテ…

なぜ君は立候補しないのか? 『黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い』を読む

またまた寄稿いたしました。 blog.tinect.jp 自民党総裁選の翌日というのは偶然だと思います。 選挙の話になります。 お読みいただけましたか? ……というわけで、この本の感想のようなものになっています。 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集…

深町秋生『ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走』を読む

ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:深町 秋生 宝島社 Amazon 深町先生の著書である。おれは深町先生の著書を愛するものであるが、「あれ、このシリーズどこまで読んだっけ?」とかなって、「これは読んでい…

穂村弘『蚊がいる』を読む

蚊がいる (角川文庫) 作者:穂村 弘 KADOKAWA Amazon またまたほむほむの本を読んだ。この本のブックデザインは横尾忠則だ。 穂村弘がどのような人なのか、おれはどのような本を読んできたのか。面倒なので、横だか下だかにある検索ボックスに打ち込んでくだ…

テロに対して私たちが一番注意すべきことについて

またまたBooks&Appsさんに寄稿いたしました。 blog.tinect.jp お読みいただけましたか。 読んでない? いや、読んだ。 読んだですね。 では。 今週のお題「爆発」。やはりテロといえばプレーヴェが……って、もういいですか。だいたい、言うことが古いのですね…

『B面の歌を聞け Vol.1 服の自給を考える』を読む

●ZINEというのだろうか、『B面の歌を聞け Vol.1服の自給を考える』をある方から頂いた。面白かったので一気に読んだ。正式にどこで手に入るのかよくわからないので、それは各自調べてください。 『B面の歌を聞け』イベント出店&販売情報 - 夜学舎 ●Wordで作…

竹中平蔵と格差と板子一枚下の地獄

blog.tinect.jp また寄稿いたしました。 できたら読んでほしいな。 読んでくれたかな。 まあ、読まなくてもいいんだけど。 ちょっと自信がないというか、なんというか。 ……というわけで、この本を読んだわけです。 不平等論: 格差は悪なのか? (単行本) 作者:…

穂村弘対談集『あの人に会いに』を読む 谷川俊太郎、横尾忠則、萩尾望都、甲本ヒロト……

あの人に会いに 穂村弘対談集 作者:穂村 弘 毎日新聞出版 Amazon 自分の求めるものが、一度も会ったことのない誰かがつくった作品の中にあるに違いない、と思い込んだのはどうしてだったか。わからない。実際、手に取った本のほとんどはぴんとこなかった。で…

池澤夏樹『夏の朝の成層圏』を読む

夏の朝の成層圏 (中公文庫) 作者:夏樹, 池澤 中央公論新社 Amazon おれは今年になって池澤夏樹作品を読み始めた。たしか、たぶん。そして、『夏の朝の成層圏』はとても読みたい作品だった。 なぜか? タイトルがかっこいいからだ。 タイトルがかっこよくて悪…

山際淳司『空が見ていた』を読む

背番号<29>をつけたピッチャーがマウンドに立っている。 次のバッターを迎えるところだった。ロージンに手を伸ばす。そしてバッターを見る。いつものしぐさだ。その評定はさきほどまでと変わらない。変わらないが、しかし、彼の心の中でぽっと燃あがるもの…

穂村弘対談集『どうして書くの?』を読む

どうして書くの?―穂村弘対談集 作者:穂村 弘 筑摩書房 Amazon 穂村 『さようなら、ギャングたち』を読んだ時、ぼくがイメージする理想的な詩集だと思ったんですね。 おれの人生にとって『さようなら、ギャングたち』は特別な小説だ。おれにとって最高の小説…

おれが法について知りたいこと 住吉雅美『あぶない法哲学』を読む

あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン (講談社現代新書) 作者:住吉雅美 講談社 Amazon おれが法について知りたいことは、なぜ自分で選んで生まれてきたわけでもない国の法律に、自動的に契約させられてしまうのだろうか? ということである。その契約…

あんたは『第五の季節』を読む

第五の季節 〈破壊された地球〉 (創元SF文庫) 作者:N・K・ジェミシン 東京創元社 Amazon これは、世界の終わりの物語―数百年ごとに“第五の季節”と呼ばれる破局的な天変地異が勃発し、文明を滅ぼす歴史がくりかえされてきた超大陸。その世界には、地球と…

穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』を読む

もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫) 作者:穂村 弘 KADOKAWA Amazon また穂村弘の本を読んだ。穂村弘の本ばかり読んでいる。いや、ほかの本も読んでいる。しかし、すっきりと読み終えられるのは穂村弘の本ばかりなのである。 本書は、おもに恋愛について…

令和になってもスターバックス怖いおれ―穂村弘『人魚猛獣説 スターバックスと私』を読む

人魚猛獣説 (スターバックスと私) 作者:穂村 弘 かまくら春秋社 Amazon また穂村弘の本である。「スターバックスと私」ときたもんである。なにやら2008年にスターバックスのウェブサイトのクリスマス企画を単行本化したものらしい。スターバックスのお客さん…

穂村弘 『世界音痴』を読む

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫) 作者:穂村 弘 小学館 Amazon また穂村弘の話をしてる……。 というくらい穂村弘の本を読んでいるが、とりあえずこれで一休みだろうか。 しかし、暗い回転寿司の写真だ。とはいえ、おれが借りたのは文庫ではなくソフトカバー版で…

きみは一冊29,700円(税込み)の本を買ったことがあるか?

きみは一冊29,700円(税込み)の本を買ったことがあるか? おれはある。 シオランの『カイエ』どーん。 うおー高い! なんでこんなに高いかよ。おれにはわからん。わからんが、おれはシオランの『カイエ』を自分のものとしたいという思いが強かった。ただ、…

短歌とはなんぞ 穂村弘『ぼくの短歌ノート』を読んだ

ぼくの短歌ノート (講談社文庫) 作者:穂村 弘 講談社 Amazon ぼくの短歌ノート 作者:穂村 弘 講談社 Amazon また穂村弘かよというとまた穂村弘である。とはいえ、今度の穂村弘は本業の短歌の……「読み解きエッセイ」とあるな。やっぱりエッセイか。 ところで…

穂村弘『野良猫を尊敬した日』を読む ―どうしても書きたいことがあるから書くのか?

野良猫を尊敬した日 (講談社文庫) 作者:穂村弘 講談社 Amazon このごろ穂村弘の本ばかり読んでいる。読むのが楽だからだ……というと、なんか失礼な感じがする。とはいえ、読んでいて楽になれる感じはある。このところおれは心身ともに弱っていて、ちょっとむ…

穂村弘『にょにょにょっ記』を読む

blog.tinect.jp またまた寄稿いたしました。 それにしても、タイトルの付け方がすげえよな。 おれにはちょっと書けなかった。 中身は一緒だけれど、これなんだよ、これ。 これがないからおれはパッとしないんだよな。 ……って、読んだ? 読みました? 読んだ…

これは恋の夢 穂村弘『現実入門』を読む

現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫) 作者:穂村 弘 発売日: 2009/02/01 メディア: 文庫 「エッセイ集『世界音痴』拝読しました」 「ありがとうございます」 「とても面白かったです」 「ありがとうございます」 「で、当社でもエッセイの連載…

短歌はわからんな……穂村弘『シンジケート』『ドライ ドライ アイス』

シンジケート[新装版] 作者:穂村弘 発売日: 2021/05/19 メディア: Kindle版 ドライ ドライ アイス (現代短歌セレクション) 作者:穂村 弘 メディア: 単行本 先日読んだ穂村弘の『にょっ記』はたいへんおもしろかった。 goldhead.hatenablog.com ならば本業…

池澤夏樹『アトミックス・ボックス』を読む ……なんというか、普通だな

アトミック・ボックス (角川文庫) 作者:池澤 夏樹 発売日: 2017/02/25 メディア: 文庫 父には知らない顔があった。美汐、27歳。28年前の父の罪を負って娘は逃げる、逃げる。追ってくる相手はあまりにも大きい──。「核」をめぐる究極のポリティカル・サスペン…

タルホ的、あくまでタルホ的な

こんな本があった。 稲垣足穂詩文集 (講談社文芸文庫) 作者:稲垣 足穂 発売日: 2020/03/12 メディア: 文庫 まあ、稲垣足穂については本人が言うところのこれに尽きるのだが。 この物語を書いたのが十九歳の時で、以来五十年、私が折りにふれてつづってきたの…

穂村弘『にょっ記』を読む。

おれは穂村弘のことはよく知らない。よく知らないが、高橋源一郎の文章で何回か名前を見たことはある。本棚で『にょっ記』という本を見かけたので、手にとってみる。すると、こんな文章が目に入る。 4月3日 武蔵丸 武蔵丸の夢をみる。 夢のなかで武蔵丸は悲…

植物の名前を知ってる方がモテそうな気がする 『ヘンな名前の植物』を読む

ヘンな名前の植物 作者:藤井 義晴 発売日: 2019/04/17 メディア: 単行本 植物の名前を知ってる方がモテると思う。銑鉄について知っているより植物の方がいい。 「あれはヘクソカズラの花だね」 「キチガイナスビの実がなっているよ」 「立派なヨグソミネバリ…

ルソー『人間不平等起源論』を読む

人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫) 作者:ジャン=ジャック ルソー 発売日: 2008/08/07 メディア: 文庫 所有という観念の発生 ある広さの土地に囲いを作って、これはわたしのものだと宣言することを思いつき、それを信じてしまうほど素朴な人々をみいだし…

『石牟礼道子追悼文集 残夢童女』を読む

そして三、四年前石牟礼さんの所に週に一度行って手足になってくれと渡辺京二さんに頼まれて、久しぶりに石牟礼さんの周りをうろつくことになった。今度も「おまえヒマそうだな」なのだ。石牟礼さんに会うとやがて「ワガママ、気まぐれ、思いつき大明神」と…