読書

石牟礼道子『色のない虹』を読む

石牟礼道子<句・画>集 色のない虹 作者:石牟礼道子 発売日: 2020/02/15 メディア: 単行本 石牟礼道子の作品に向かい合うのはたいへんな力がいる。が、〈句・画〉集ならどうか? そう思った。 思いのほか力が必要だった。まず、おどろかされるのが画だろう。…

『かなざわいっせいさんの仕事』を読み涙する

かなざわいっせいさんの仕事 作者:「かなざわいっせいさんの仕事」製作委員会 発売日: 2020/12/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) おれの競馬の初めには、別冊宝島競馬読本があった。 ついてこられない人間は置き去りにする。 別冊宝島競馬読本は、ムック…

石牟礼道子に相対するには力が要る 『水はみどろの宮』を読む

水はみどろの宮 (福音館文庫 物語) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2016/03/10 メディア: 単行本 おれは石牟礼道子を偉大な文学者にして「おばあさま」のような存在と思っている。しかし、全部読んだとは言い難い。むしろ、あまり読んでいないといってもいいかも…

ビギナーズ・クラシックス日本の古典『梁塵秘抄』を読む

梁塵秘抄 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫) 作者:後白河院 発売日: 2012/11/05 メディア: Kindle版 石牟礼道子と伊藤比呂美の対談本を読んだ。その対談の真ん中に置いてあるような本が『梁塵秘抄』だった。 反出生主義者が、「死」に…

高村薫の頼まれ仕事『空海』を読む

空海 作者:高村 薫 発売日: 2015/09/30 メディア: 単行本 goldhead.hatenablog.com 『生死の覚悟』のなかで、高村薫が空海について書いた本があることを知った。頼まれ仕事で、そんなに熱心になったわけでもないような空気が伝わってきた。それでも一応、読…

生と死の二冊の対談本について

blog.tinect.jp またBooks&Appsさんに寄稿させていただきました。また場違いな話なような気もしますが、ありがたいことです。よろしくお願いいたします。 新版 死を想う (平凡社新書0884) 作者:石牟礼 道子,伊藤 比呂美 発売日: 2018/07/13 メディア: Kindle…

信心は言葉で表せるのか? 高村薫・南直哉『生死の覚悟』を読む

生死の覚悟 (新潮新書) 作者:髙村薫/南直哉 発売日: 2019/05/15 メディア: 新書 高村薫とおれ、おれと高村薫。若いころ、高村薫の小説に打ちのめされていた。とくに衝撃だったのは小説『レディ・ジョーカー』での競馬場シーン(たしかアジュディケーターが走…

『街の公共サインを点検する』を読むのこと

たまには仕事に関する本も読む 街の公共サインを点検する 作者:弘之, 本田,一成, 岩田,秀男, 倉林 発売日: 2017/07/25 メディア: 単行本 これは読んでみなくちゃな、と思っていた本である。が、実際に読んでみると、そこまで読んでみなくちゃな、と思う必要…

戦闘民族日本人がまた髪の話してる……『カミが見ていた世界の歴史 魔女の黒髪 天使の金髪』を読む

「なんで日本人はちょんまげなんて珍妙な髪型をしていたのだろう?」という疑問は昔から持っていた。持っていたが、べつに喫緊の課題というわけでもなく、「お前も元服したのだから」という話もなく、放っておいた。 放っておいたところで、やはり何十年越し…

ドーダの誕生、そして文章術 東海林さだお『もっとコロッケな日本語を』

もっとコロッケな日本語を (文春文庫) 作者:東海林 さだお 発売日: 2006/06/09 メディア: 文庫 会話というものがありますね。 急に、ありますね、なんて言われて、 「あるよ、そりゃあ」 と怒り出す人もいるかもしれないが、ま、落ちついてください。 人間は…

鈴木智彦『サカナとヤクザ』を読む

サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~ 作者:鈴木智彦 発売日: 2018/11/02 メディア: Kindle版 午後10時過ぎ、役員はカウンターで白河夜船となった。目を覚ました際に、「築地で密漁アワビは売ってるんですか?」と質問した。 「ああ…

人は案外死なないけれど、簡単に殺せたりもする 鈴木智彦『全員死刑』を読む

全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記 (小学館文庫) 作者:智彦, 鈴木 発売日: 2017/11/07 メディア: 文庫 全員死刑、である。どこの全員か。九州のヤクザ家族四人、父、母、兄、弟の全員が死刑判決を受けた。これである。その「弟」の手記が中心と…

東海林さだお×赤瀬川原平『ボケかた上手』を読む

ボケかた上手 作者:東海林 さだお,赤瀬川 原平 発売日: 2003/07/17 メディア: 単行本 おれは鹿島茂が「ドーダ」について言及しているのを読んだ。「ドーダ」の始祖は東海林さだおということになる。ということで、東海林さだお、赤瀬川源平の対談にたまにゲ…

ダービージョッキーと名人 『Number』を読む

Number(ナンバー)1012号[雑誌] 発売日: 2020/10/08 メディア: Kindle版 将棋特集で買った「Number」。今度は競馬特集で買った。おれは「競馬の天才」というもっとどろどろした競馬雑誌を毎月買っているので、「Number」を買うこともないのだが、次の記事が…

鹿島茂『悪の箴言 耳をふさぎたくなる270の言葉』を読む

悪の箴言(マクシム) 耳をふさぎたくなる270の言葉 作者:鹿島茂 発売日: 2018/03/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) マクシム(Maximes)というのはラ・ロシュフーコーの著作が元になった言葉で、「辛辣な人間観察を含んだ格言、箴言」という意味らしい…

SFアジアン武侠ファイナルファンタジー 『翡翠城市』を読む

翡翠城市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:フォンダ リー 発売日: 2019/10/17 メディア: Kindle版 ケコン島――それは選ばれし者グリーンボーンたちの島。彼らは、島の貴重な天然資源である翡翠のエネルギーを制御することによって、怪力、敏捷、感知など…

『ハンター・キラー アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言』を読む

「先刻勝利を収めた戦争では、多くの英雄たちが戦闘機で飛び回った。しかし、次の戦争では無人の戦闘機で戦うことになるかもしれない。……昨今の航空戦について学んだことはいったんすべて忘れ、次世代の航空戦のために備えよう。それは、世界の常識をくつが…

南直哉『語る禅僧』を読む

語る禅僧 (ちくま文庫) 作者:南 直哉 発売日: 2010/11/12 メディア: 文庫 著者いわく、自分は自分の著作の話をされるのが嫌なタイプらしい。排泄物の話をしているような気になるし、排泄物をしげしげと見ないように、自分の本を読み返さないという。 が、こ…

思えば初めてスティーヴン・キングを読んだ 『短編画廊』

短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション) 作者:ローレンス ブロック,スティーヴン キング,ジェフリー ディーヴァー,マイクル コナリー,リー チャイルド,ジョー・R ランズデール,ジョイス・キャロル オーツ,ロバート・オレン バト…

玄侑宗久『荘子と遊ぶ 禅的思想の源流へ』を読む

荘子と遊ぶ (ちくま文庫) 作者:宗久, 玄侑 発売日: 2019/08/09 メディア: 文庫 荘子と遊ぶ ──禅的思考の源流へ (筑摩選書) 作者:玄侑宗久 発売日: 2019/01/11 メディア: Kindle版 日本に入ってきた仏教は、中国起源の思想を大いに取り入れたものである。と、…

ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』を読む

ヌメロ・ゼロ (河出文庫) 作者:ウンベルト・エーコ 発売日: 2018/12/14 メディア: Kindle版 ウンベルト・エーコとおれ。おれとウンベルト・エーコ。中学生のころだろうか、背伸びして『薔薇の名前』を読んだように思う。さらに背伸びして『フーコーの振り子…

リチャード・ブローティガン詩集『チャイナタウンからの葉書』を読む

チャイナタウンからの葉書 (ちくま文庫) 作者:リチャード・ブローティガン 発売日: 2011/05/12 メディア: 単行本 目次を見る。「競馬」という題の詩を見つける。おれはとりあえずそこに飛ぶ。そうしたら、こんな詩だった。 Horse Race July 19, a dog has be…

フェルナンド・ペソア短編集『アナーキストの銀行家』を読む

アナーキストの銀行家;フェルナンド・ペソア短編集 作者:フェルナンド・ペソア 発売日: 2019/06/18 メディア: 単行本 なにか新しいペソアの短編集が出ていたので読んだ。おれはポルトガルに縁はないが、フェルナンド・ペソアは好きである。 goldhead.hatenab…

ホッパーの話してえんだな『エドワード・ホッパー 静寂と距離』を読む

エドワード・ホッパー ―静寂と距離― 作者:青木保 発売日: 2019/11/22 メディア: 単行本 このあいだ、エドワード・ホッパーの解説書をプレゼントいただいた。 goldhead.hatenablog.com ああ、ホッパーいいよな。狂おしいほどホッパーいいよ、ビューだよ、とな…

『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』と『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ<この宇宙>にいるのか』を読む

宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論 (講談社現代新書) 作者:青木薫 発売日: 2013/08/23 メディア: Kindle版 マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書) 作者:野村 泰紀 発売日: 2017/07/27 メディア: 新書 おれ…

日本国憲法前文(黄金頭案)

たぶん、高橋源一郎の本で紹介されていたのだと思う。 goldhead.hatenablog.com 「国民のコトバ」のなかで、いろいろな国民が書いた「憲法前文」の文章が紹介されていた。そういったものを集めた本が紹介されていた。それはなかなかに面白い試みのように思え…

山本弘『まだ見ぬ冬の悲しみも』を読む

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション) 作者:山本 弘 メディア: 単行本 これはいい本だ。なんてったってタイトルがいい。「まだ見ぬ冬の悲しみも」。ただ、おれはこのタイトルを知ってから、知らない間に「まだ見ぬ冬の悲しみを」をだと…

「歴史を変えてくれと誰が頼んだ?」 山本弘『去年はいい年になるだろう』を読む

去年はいい年になるだろう(上) (PHP文芸文庫) 作者:山本 弘 発売日: 2012/09/18 メディア: 文庫 去年はいい年になるだろう(下) (PHP文芸文庫) 作者:山本 弘 発売日: 2012/09/18 メディア: 文庫 この作品は……。作者自身の紹介、いや「宣伝」を読んだほうが早…

ある日突然、「地球を移動させる話を読みたいな」と思ったら、『地球移動作戦』を読めばいいと思う

地球移動作戦(上) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2017/10/31 メディア: Kindle版 地球移動作戦(下) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2017/10/31 メディア: Kindle版 書棚に『地球移動作戦』というタイトルの本があって、表紙を見てみる…

百合映画300本総まくり ふぢのやまい編著『「百合映画」完全ガイド』を読む

百合映画とおれ、おれと百合映画。 その記憶は古い。 自分の部屋に小さな14型のブラウン管テレビが与えられたころのこと。おれは深夜に「なにかエロい番組はやっていないかな?」チャンネルをまわしていた。中学生のおれはエロいことしか頭になかったといっ…