読書

人は案外死なないけれど、簡単に殺せたりもする 鈴木智彦『全員死刑』を読む

全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記 (小学館文庫) 作者:智彦, 鈴木 発売日: 2017/11/07 メディア: 文庫 全員死刑、である。どこの全員か。九州のヤクザ家族四人、父、母、兄、弟の全員が死刑判決を受けた。これである。その「弟」の手記が中心と…

東海林さだお×赤瀬川原平『ボケかた上手』を読む

ボケかた上手 作者:東海林 さだお,赤瀬川 原平 発売日: 2003/07/17 メディア: 単行本 おれは鹿島茂が「ドーダ」について言及しているのを読んだ。「ドーダ」の始祖は東海林さだおということになる。ということで、東海林さだお、赤瀬川源平の対談にたまにゲ…

ダービージョッキーと名人 『Number』を読む

Number(ナンバー)1012号[雑誌] 発売日: 2020/10/08 メディア: Kindle版 将棋特集で買った「Number」。今度は競馬特集で買った。おれは「競馬の天才」というもっとどろどろした競馬雑誌を毎月買っているので、「Number」を買うこともないのだが、次の記事が…

鹿島茂『悪の箴言 耳をふさぎたくなる270の言葉』を読む

悪の箴言(マクシム) 耳をふさぎたくなる270の言葉 作者:鹿島茂 発売日: 2018/03/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) マクシム(Maximes)というのはラ・ロシュフーコーの著作が元になった言葉で、「辛辣な人間観察を含んだ格言、箴言」という意味らしい…

SFアジアン武侠ファイナルファンタジー 『翡翠城市』を読む

翡翠城市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:フォンダ リー 発売日: 2019/10/17 メディア: Kindle版 ケコン島――それは選ばれし者グリーンボーンたちの島。彼らは、島の貴重な天然資源である翡翠のエネルギーを制御することによって、怪力、敏捷、感知など…

『ハンター・キラー アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言』を読む

「先刻勝利を収めた戦争では、多くの英雄たちが戦闘機で飛び回った。しかし、次の戦争では無人の戦闘機で戦うことになるかもしれない。……昨今の航空戦について学んだことはいったんすべて忘れ、次世代の航空戦のために備えよう。それは、世界の常識をくつが…

南直哉『語る禅僧』を読む

語る禅僧 (ちくま文庫) 作者:南 直哉 発売日: 2010/11/12 メディア: 文庫 著者いわく、自分は自分の著作の話をされるのが嫌なタイプらしい。排泄物の話をしているような気になるし、排泄物をしげしげと見ないように、自分の本を読み返さないという。 が、こ…

思えば初めてスティーヴン・キングを読んだ 『短編画廊』

短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション) 作者:ローレンス ブロック,スティーヴン キング,ジェフリー ディーヴァー,マイクル コナリー,リー チャイルド,ジョー・R ランズデール,ジョイス・キャロル オーツ,ロバート・オレン バト…

玄侑宗久『荘子と遊ぶ 禅的思想の源流へ』を読む

荘子と遊ぶ (ちくま文庫) 作者:宗久, 玄侑 発売日: 2019/08/09 メディア: 文庫 荘子と遊ぶ ──禅的思考の源流へ (筑摩選書) 作者:玄侑宗久 発売日: 2019/01/11 メディア: Kindle版 日本に入ってきた仏教は、中国起源の思想を大いに取り入れたものである。と、…

ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』を読む

ヌメロ・ゼロ (河出文庫) 作者:ウンベルト・エーコ 発売日: 2018/12/14 メディア: Kindle版 ウンベルト・エーコとおれ。おれとウンベルト・エーコ。中学生のころだろうか、背伸びして『薔薇の名前』を読んだように思う。さらに背伸びして『フーコーの振り子…

リチャード・ブローティガン詩集『チャイナタウンからの葉書』を読む

チャイナタウンからの葉書 (ちくま文庫) 作者:リチャード・ブローティガン 発売日: 2011/05/12 メディア: 単行本 目次を見る。「競馬」という題の詩を見つける。おれはとりあえずそこに飛ぶ。そうしたら、こんな詩だった。 Horse Race July 19, a dog has be…

フェルナンド・ペソア短編集『アナーキストの銀行家』を読む

アナーキストの銀行家;フェルナンド・ペソア短編集 作者:フェルナンド・ペソア 発売日: 2019/06/18 メディア: 単行本 なにか新しいペソアの短編集が出ていたので読んだ。おれはポルトガルに縁はないが、フェルナンド・ペソアは好きである。 goldhead.hatenab…

ホッパーの話してえんだな『エドワード・ホッパー 静寂と距離』を読む

エドワード・ホッパー ―静寂と距離― 作者:青木保 発売日: 2019/11/22 メディア: 単行本 このあいだ、エドワード・ホッパーの解説書をプレゼントいただいた。 goldhead.hatenablog.com ああ、ホッパーいいよな。狂おしいほどホッパーいいよ、ビューだよ、とな…

『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』と『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ<この宇宙>にいるのか』を読む

宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論 (講談社現代新書) 作者:青木薫 発売日: 2013/08/23 メディア: Kindle版 マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書) 作者:野村 泰紀 発売日: 2017/07/27 メディア: 新書 おれ…

日本国憲法前文(黄金頭案)

たぶん、高橋源一郎の本で紹介されていたのだと思う。 goldhead.hatenablog.com 「国民のコトバ」のなかで、いろいろな国民が書いた「憲法前文」の文章が紹介されていた。そういったものを集めた本が紹介されていた。それはなかなかに面白い試みのように思え…

山本弘『まだ見ぬ冬の悲しみも』を読む

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション) 作者:山本 弘 メディア: 単行本 これはいい本だ。なんてったってタイトルがいい。「まだ見ぬ冬の悲しみも」。ただ、おれはこのタイトルを知ってから、知らない間に「まだ見ぬ冬の悲しみを」をだと…

「歴史を変えてくれと誰が頼んだ?」 山本弘『去年はいい年になるだろう』を読む

去年はいい年になるだろう(上) (PHP文芸文庫) 作者:山本 弘 発売日: 2012/09/18 メディア: 文庫 去年はいい年になるだろう(下) (PHP文芸文庫) 作者:山本 弘 発売日: 2012/09/18 メディア: 文庫 この作品は……。作者自身の紹介、いや「宣伝」を読んだほうが早…

ある日突然、「地球を移動させる話を読みたいな」と思ったら、『地球移動作戦』を読めばいいと思う

地球移動作戦(上) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2017/10/31 メディア: Kindle版 地球移動作戦(下) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2017/10/31 メディア: Kindle版 書棚に『地球移動作戦』というタイトルの本があって、表紙を見てみる…

百合映画300本総まくり ふぢのやまい編著『「百合映画」完全ガイド』を読む

百合映画とおれ、おれと百合映画。 その記憶は古い。 自分の部屋に小さな14型のブラウン管テレビが与えられたころのこと。おれは深夜に「なにかエロい番組はやっていないかな?」チャンネルをまわしていた。中学生のおれはエロいことしか頭になかったといっ…

山本弘『プラスチックの恋人』を読む

プラスチックの恋人 (早川書房) 作者:山本 弘 発売日: 2017/12/28 メディア: Kindle版 仮想現実“Virtual Reality”と人工意識“Artificial Consciousness”が実現したセックス用アンドロイド―オルタマシン。その中でも少年や少女の姿形をした未成年型オルタマシ…

おれも人の金で海外旅行してえなぁ ―村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?』を読む

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (文春文庫 む 5-15) 作者:村上 春樹 発売日: 2018/04/10 メディア: 文庫 村上春樹の紀行文集である。熊本を除いては海外である。かつて住んでいたボストン、イタリア、ギリシアの話もある。タイトルの「ラ…

ハードでソフトな『プロジェクトぴあの』(山本弘)を読む

プロジェクトぴあの(上) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2020/03/18 メディア: Kindle版 プロジェクトぴあの(下) (ハヤカワ文庫JA) 作者:山本 弘 発売日: 2020/03/18 メディア: Kindle版 おれはいくらかSFを読んできたといっていいが、入り口は…

『小説の読み方、書き方、訳し方』(柴田元幸・高橋源一郎)を読む

小説の読み方、書き方、訳し方 (河出文庫) 作者:柴田元幸,高橋源一郎 発売日: 2016/11/14 メディア: Kindle版 新型コロナウイルスの流行とともにおれの読書量は減った。減ったどころじゃなく八割減とかそういうレベルだ。居酒屋か旅館か、というレベルだ。な…

本を読めないからおれの知性は下がる一方だ

新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、横浜市立図書館は5月31日(日曜日)まで臨時休館を延長します。予約サービスも休止します。【4月29日更新】 横浜市 新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、横浜市立図書館は5月31日(日曜日)まで臨…

大崎善生編『傑作将棋アンソロジー 棋士という人生』を読む

棋士という人生: 傑作将棋アンソロジー (新潮文庫) 発売日: 2016/09/28 メディア: 文庫 将棋と並べてはいけないのかもしれないが、私も若い頃、ばくち一途で生きる気で、鉄火場をうろついていた時期がある。勝負だけで生きることの、めくるめくような陶酔、…

世界はあんたらが考える以上に単純に残酷なんよ-『雑の思想』を読む

「雑」の思想: 世界の複雑さを愛するために 作者:高橋 源一郎,辻 信一 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2019/01/22 メディア: Kindle版 「雑」の思想 : 世界の複雑さを愛するために 作者:高橋 源一郎,辻 信一 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2018/11/…

あのころの江ノ島よ……東京するめクラブ『地球のはぐれ方』を読む

東京するめクラブ 地球のはぐれ方 (文春文庫) 作者:村上 春樹,都築 響一,吉本 由美 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2008/05/09 メディア: 文庫 村上春樹、都築響一、吉本由美の三人組が「東京するめクラブ」らしい。おれはよく知らない。おれはこのとこ…

『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』田村隆一(語り)・長薗安浩(文)……再読

言葉なんかおぼえるんじゃなかった: 詩人からの伝言 (ちくま文庫) 作者:長薗 安浩,田村 隆一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2014/11/10 メディア: 文庫 おれは言葉についてあるていどの意識を持っていると言ったら変だろうか? ともかく、言葉、たった…

高橋源一郎『国民のコトバ』を読む

国民のコトバ 作者:高橋 源一郎 出版社/メーカー: 毎日新聞社 発売日: 2013/03/19 メディア: 単行本 ……ここだけの話だけれど、十八歳の時、留置所に三週間拘留されていた時、活字を読むことを禁止されていたので、発狂しそうになったくらいである。だから、…

ショージ君もそんな歳か……東海林さだお『ガン入院オロオロ日記』を読む

ガン入院オロオロ日記 (文春文庫) 作者:東海林 さだお 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/10/09 メディア: 文庫 おれが書くおれの文章に一番影響を与えたのはだれか? 答えは、東海林さだおである。おれはいろいろな文才のある人のすばらしい文章から…