読書

生と死とセガサターンと人間の歴史 長嶋有『もう生まれたくない』を読む

もう生まれたくない (講談社文庫) 作者:長嶋 有 講談社 Amazon 三月に起きた津波は、その高さが「数字で」発表された。その数字より高いところにのぼったら生き残り、低ければダメだった。あるいは、同じ建物の三階に逃げた人は死に、屋上の人は生き残った。…

『アナキスト本をよむ』をよむ

アナキスト本をよむ 作者:康, 栗原 新評論 Amazon 「アナキスト本」をよむ、のではなく、「アナキスト」本をよむ、なのだ。だが、アナキストがよむ本なのだから「アナキスト本」なのかもしれず、そのあたりはどうとでも解釈すればよいだろう。 というわけで…

年末年始『三体』三昧

おれが劉慈欣の『三体』を読み始めたのは西暦2021年12月30日14時20分(JST)頃である。そのことは「サンマルクカフェ」のレシートから明らかだ。 さかのぼって数十分前、おれは伊勢佐木モールのブックオフにいた。恥を晒すが、ブックオフだ。そこでおれが見…

黄金頭さんが2021年に読んでよかった本

今年読んでよかった本を挙げる。もちろん、おれは今年出た本を読むことは少ない。ほとんどない。だから、おれが今年読んでよかった本だ。 『幻覚剤は役に立つのか』 goldhead.hatenablog.com 大麻がどうこうというところに、幻覚剤である。幻覚剤はすげえ。…

なぜアナーキーは成立しないんだぜ? 栗原康『何ものにも縛られないための政治学 権力の脱構成』を読む

何ものにも縛られないための政治学 権力の脱構成 (角川書店単行本) 作者:栗原 康 KADOKAWA Amazon 「はじめに」にだいたい重要なことは書いてある 権力はいまやこの世界のインフラのうちに存在する。 ―不可視委員会 ぎゃあ、そうだったのか、おれたち、イン…

双極性障害者が『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』を読む

うつを甘くみてました#拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生 作者:ブリ猫。 ぶんか社 Amazon 家族もうつを甘くみてました#拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生 作者:ブリ猫。 ぶんか社 Amazon Kindle unlimitedが3ヶ月間で99円とかいうキャンペーンをやって…

日本には力強いおっさんが少ない 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』を読む

ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち 作者:ブレイディみかこ 筑摩書房 Amazon はじめに言っておくが、おれは『ハマータウンの野郎ども』を読んだことがない。 ハマータウンの野郎ども ─学校への反抗・労働への順応 (ちくま学芸文庫) …

ライトなビジネス書『宗教と哲学全史』を読む

【ビジネス書大賞2020 特別賞受賞作】哲学と宗教全史 作者:出口 治明 ダイヤモンド社 Amazon なんかで本書を知って、手にとってみて「あ、思ってたよりすげえ分厚い」と思ったけれど、読み始めてみたら「新書やん」と思って安心した。宗教と哲学の全史という…

柴田勝家『アメリカン・ブッダ』を読む

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 早川書房 Amazon 人は自分の見えないものを想像して、そこに見えない敵を作る。けれども、この国では、想像を人に言うことをの愚かさを誰もが知っているから、そこで争うことはないのだ。 ジョンは他の…

パンを軽視すると薔薇も枯れます 『そろそろ左派は<経済>を語ろう』を読む

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学 作者:ブレイディ みかこ,松尾 匡,北田 暁大 亜紀書房 Amazon そもそもおれは経済を語れない。算数がわからないからだ。 blog.tinect.jp ただ、算数はわからなくても、政治や社会については、文系の読…

われわれ躁鬱人? 坂口恭平『躁鬱大学』を読む

躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません― 作者:坂口恭平 新潮社 Amazon おれは双極性障害者である。医師に診断され、それ用の薬も処方され、精神障害者保健福祉手帳も持っているので、客観的に認められていると言ってもいいだろう。人…

おれの好きな小説10選

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」 さようなら、ギャングたち 夜の果てへの旅 チャンピオンたちの朝食 高丘親王航海記 ニューロマンサー 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド ユービック 愛その他の悪霊について パルプ 不安の書 ……うーん…

大原まり子『戦争を演じた神々たち』を読む

戦争を演じた神々たち[全] 作者:大原 まり子 クリーク・アンド・リバー社 Amazon おれはあまり昔からのSFファンではない。SFファンと呼べるかどうかもあやしい。絶対に千冊読んでいないだろう。 というわけで、この間、「大原まり子」という名前を知った。…

ひさびさにSF 藤井太洋『公正的戦闘規範』を読む

公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA) 作者:藤井 太洋 早川書房 Amazon たぶん、ひさびさにSFを読んだ。『公正的戦闘規範』。短編集。正統派、現代的、そして日本のSFだ。日本のSFだけれど、舞台が日本とは限らない。表題作の舞台は中国だ。そして話の中心になる…

坂口恭平『自分の薬をつくる』を読む

自分の薬をつくる 作者:恭平, 坂口 晶文社 Amazon 坂口恭平。おれと同世代で、おれと同じ双極性障害(躁うつ病)を患っている。それだけで気になる存在である。それ以外に共通項はなにもないかもしれないけれど、病気の人間とはそういうものである。 坂口恭…

『イニシエーション・ラブ』について

イニシエーション・ラブ (文春文庫) 作者:乾 くるみ 文藝春秋 Amazon おれは『イニシエーション・ラブ』という作品をまったく知らなかった。作品が発表されたときも、テレビで取り上げられて大ブレイクしたのも知らなかった。おれは最新の小説についてアンテ…

なぜ君は立候補しないのか? 『黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い』を読む

またまた寄稿いたしました。 blog.tinect.jp 自民党総裁選の翌日というのは偶然だと思います。 選挙の話になります。 お読みいただけましたか? ……というわけで、この本の感想のようなものになっています。 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集…

深町秋生『ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走』を読む

ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:深町 秋生 宝島社 Amazon 深町先生の著書である。おれは深町先生の著書を愛するものであるが、「あれ、このシリーズどこまで読んだっけ?」とかなって、「これは読んでい…

穂村弘『蚊がいる』を読む

蚊がいる (角川文庫) 作者:穂村 弘 KADOKAWA Amazon またまたほむほむの本を読んだ。この本のブックデザインは横尾忠則だ。 穂村弘がどのような人なのか、おれはどのような本を読んできたのか。面倒なので、横だか下だかにある検索ボックスに打ち込んでくだ…

テロに対して私たちが一番注意すべきことについて

またまたBooks&Appsさんに寄稿いたしました。 blog.tinect.jp お読みいただけましたか。 読んでない? いや、読んだ。 読んだですね。 では。 今週のお題「爆発」。やはりテロといえばプレーヴェが……って、もういいですか。だいたい、言うことが古いのですね…

『B面の歌を聞け Vol.1 服の自給を考える』を読む

●ZINEというのだろうか、『B面の歌を聞け Vol.1服の自給を考える』をある方から頂いた。面白かったので一気に読んだ。正式にどこで手に入るのかよくわからないので、それは各自調べてください。 『B面の歌を聞け』イベント出店&販売情報 - 夜学舎 ●Wordで作…

竹中平蔵と格差と板子一枚下の地獄

blog.tinect.jp また寄稿いたしました。 できたら読んでほしいな。 読んでくれたかな。 まあ、読まなくてもいいんだけど。 ちょっと自信がないというか、なんというか。 ……というわけで、この本を読んだわけです。 不平等論: 格差は悪なのか? (単行本) 作者:…

穂村弘対談集『あの人に会いに』を読む 谷川俊太郎、横尾忠則、萩尾望都、甲本ヒロト……

あの人に会いに 穂村弘対談集 作者:穂村 弘 毎日新聞出版 Amazon 自分の求めるものが、一度も会ったことのない誰かがつくった作品の中にあるに違いない、と思い込んだのはどうしてだったか。わからない。実際、手に取った本のほとんどはぴんとこなかった。で…

池澤夏樹『夏の朝の成層圏』を読む

夏の朝の成層圏 (中公文庫) 作者:夏樹, 池澤 中央公論新社 Amazon おれは今年になって池澤夏樹作品を読み始めた。たしか、たぶん。そして、『夏の朝の成層圏』はとても読みたい作品だった。 なぜか? タイトルがかっこいいからだ。 タイトルがかっこよくて悪…

山際淳司『空が見ていた』を読む

背番号<29>をつけたピッチャーがマウンドに立っている。 次のバッターを迎えるところだった。ロージンに手を伸ばす。そしてバッターを見る。いつものしぐさだ。その評定はさきほどまでと変わらない。変わらないが、しかし、彼の心の中でぽっと燃あがるもの…

穂村弘対談集『どうして書くの?』を読む

どうして書くの?―穂村弘対談集 作者:穂村 弘 筑摩書房 Amazon 穂村 『さようなら、ギャングたち』を読んだ時、ぼくがイメージする理想的な詩集だと思ったんですね。 おれの人生にとって『さようなら、ギャングたち』は特別な小説だ。おれにとって最高の小説…

おれが法について知りたいこと 住吉雅美『あぶない法哲学』を読む

あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン (講談社現代新書) 作者:住吉雅美 講談社 Amazon おれが法について知りたいことは、なぜ自分で選んで生まれてきたわけでもない国の法律に、自動的に契約させられてしまうのだろうか? ということである。その契約…

あんたは『第五の季節』を読む

第五の季節 〈破壊された地球〉 (創元SF文庫) 作者:N・K・ジェミシン 東京創元社 Amazon これは、世界の終わりの物語―数百年ごとに“第五の季節”と呼ばれる破局的な天変地異が勃発し、文明を滅ぼす歴史がくりかえされてきた超大陸。その世界には、地球と…

穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』を読む

もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫) 作者:穂村 弘 KADOKAWA Amazon また穂村弘の本を読んだ。穂村弘の本ばかり読んでいる。いや、ほかの本も読んでいる。しかし、すっきりと読み終えられるのは穂村弘の本ばかりなのである。 本書は、おもに恋愛について…

令和になってもスターバックス怖いおれ―穂村弘『人魚猛獣説 スターバックスと私』を読む

人魚猛獣説 (スターバックスと私) 作者:穂村 弘 かまくら春秋社 Amazon また穂村弘の本である。「スターバックスと私」ときたもんである。なにやら2008年にスターバックスのウェブサイトのクリスマス企画を単行本化したものらしい。スターバックスのお客さん…