WBCなんて興味ないんだからね!

おれは残業をしていた。残業しながらブラウザでAbema TVを立ち上げて、侍ジャンパンとやらの試合を見ていた。大谷さんの打席だ。音は出していない。大谷さんは膝をついてセンターフライを打ち上げた。無音なので完成も実況もなんにもなし。おれには、センターフライに見えた。大谷さん、スリーラン・ホームラン。なんだそれは。それはおれの知っているホームランではない。

というわけで、WBCだ。だが、おれはそれほど盛り上がっていない。なぜかわからないが、ふだん興味のないサッカーワールドカップのほうが盛り上がる。こればかりはよくわからない。ひょっとしたら、おれは野球ファンというよりカープファンなので、地元のチームが好きで代表には興味ないよというコアなJリーグのチームのサポーターに近いのかもしれない。

そもそも、なにが「ワールド」なのか。それこそサッカーのファンに鼻で笑われる。ラグビーやバスケットボールのファンにも笑われるかもしれない。球を投げて棒で打つ珍妙な競技をしている人間がどれだけいるのか。球は脚で蹴るものだ。後鳥羽院だってそう言うに決まっている。そして、そんな競技を見ている人間がこの世界にどれだけいるのか。クリケットのほうがまだ流行っているんじゃないのか。

……そんな思いが、まったくないわけでもない。ガバガバの要件で各国代表になれる制度でなんとか出場国をやりくりしているだけだ。まったく。

だから、ヌートバーが日本代表になったりもするんだ。ヌートバーの第二打席のタイムリーも見たが、シュアなバッティングをする。「なんでわざわざヌートバーを呼ぶのか? 近本でいいじゃないか」というような声も見かけた。しかし、ヌートバーを呼ぶのは面白いと思うんだよ。ほら、今年フェブラリーステークスにシャールズスパイトが出てくれたら、なんかちょっと盛り上がるじゃん。それ以上のものだよ、ヌートバー。幼少時に斎藤佑樹世代の高校球児と交流があったなんてよいエピソードだ。しかしまあ、そういう世代がメジャーリーガーになって、日本代表なんだからな。

それにあれだ、ペッパーミルパフォーマンス、ペッパーグラインダー、どう呼ばれて定着するかわからないが、あのパフォーマンスは流行る。少なくとも日本代表のなかでは流行る。前にもなんかそういうポーズあったけど、即席チームにはそういうのが大切なんだよ、たぶん。内輪ノリでも悪ノリでもなんでもいいから、ノッたほうがいい。

そういう意味で、とりあえずヌートバーが先頭打者としていい感じで入れたのは悪くない。ラッキボーイという感じもする。これに大谷が乗っかれば、否が応でもチームは盛り上がるだろう。

しかしなんだ、帰ってAbemaを立ち上げたら、右上のテロップに「大谷2打席連続HR」とか書いてあるじゃないか。無茶苦茶だ。そのあと、無茶苦茶リプレイが流れたが、あれもどん詰まりじゃないか。パワーか、パワーなのか。まったく、どうなっているんだ。ああ、そりゃもちろん無理はさせられないが、もっと見たかったよな。たとえば、今日キレッキレだった西純矢との対戦とかよ。

しかし、中日も阪神も強そうだよな。わがカープはどうなんだよ、という話になる。なんかマクブルーム打ててないし、デビッドソンもまだ大当たりがない。でも、一番に秋山翔吾という路線はいいと思う。カープ入りのときから、西武ファンが口を揃えて「秋山は一番がいい、三番だといまいちだ」と言っていた。その三番でもけっこうやってくれた昨期、一番で躍動してくれたらいい。

侍の一番はヌートバーでいいのか、という話にもなる。なにせプロ野球の代表だ。一番が出たら二番が送って……みたいな佐々岡カープみたいな機械的作業的戦術は必要ない。打てる順に並べてもいいくらいだ。でも、やっぱり打線というものはあるだろう。

で、その中核はというと、やはり大谷翔平ということになるのだろうが、勝負してくれるだろうか、大谷と? 解説の川崎宗則西岡剛に「一塁に歩かせるのは犯罪じゃないですよね?」と冗談めかして言っていたが、冗談ではないのだ。それこそ、「満塁で歩かせてもおかしくはない」のだ。

となると、三番大谷より、一番大谷というのはどうだろうか。一番から歩かせるわけにもいかないかもしれないかもしれないし、ともかく塁に出てくれるなら一度でも機会が多いほうがいいというものだ。

一番・大谷(DH)

二番・近藤(右)

三番・ヌートバー(中)

四番・吉田(左)

五番・岡本(一)

六番・村上(三)

七番・牧(ニ)

八番・源田(遊)

九番・中村(捕)

……いや、あんまり見ていないからわからない。左が並ぶが、このレベルに左右は関係ない、とか言ってしまえ。キャッチャーは固定ではなくみんな使う感じになるのかな。あと、どうも山田哲人が冴えないようなので、牧を使ってみてほしい。これは横浜在住者としての意見だが。

まあしかし、これは大谷さんが敬遠地獄になるという前提であって、やはりランナーが溜まり、回ってくる回数も多い三番が適任なのかもしれない。四番、五番と大いに打ってくれる選手が出てきてくれれば問題ない。その点、やはり右の主砲候補であった鈴木誠也の穴が大きいと言わざるをえない。とはいえ、牧原大成のようなユーティリティ・プレイヤーこそが短期決戦で活きる可能性がないわけでもない。打ち出したらとまらない化け物みたいなのは揃っているわけだ。

というわけで、山川穂高、村上宗隆、岡本和真あたりが打ち出したらたまらんだろう。問題は、打ち出さなかったときであって、それで大谷が勝負を避けられたら、どう点を取るのか、だ。それはもう、ワンチャンスを活かす、ひとつでも先の塁を目指す野球ということになる。なに、ヌートバー以外は高校野球やそれ以前からそういう野球を叩き込まれてきた連中だ。そしてヌートバーにも高校野球イズムは継承されているのだ。日本の野球は強いのだ。

え、投手陣? これはもう、なんとかなるだろう。松井裕樹だってフィットしてきた。しかしなんだよ、守護神は我らが栗林良吏ではないか。いや、たぶん。東京五輪でもすごかったし。いや、カープからたったひとりの代表だ。大丈夫なのか。大丈夫だろう。少しボールが先行することもあるが、そういうこともある選手だ。安定感はある。問題は、いちいち帽子を脱ぐ仕草が、なんらかの反則行為と取られたらどうしよう? 不安になってきた。でも、楽しみだなあ、WBC