「なあ、人間の悪徳について1000語で語り尽くしてやろうか」
ホットロッド・チャーリーはライ・ウイスキーのショットを飲み干してそういった。
「いや、ぼくは人間の善について知りたいね」といった。
「それは無理な話だ。おれたちカウ・ボーイはミルクとロデオ、そして人間の悪徳については詳しいが、善については知らないからな」
ホットロッド・チャーリーは帽子を被るとバーから出ていった。
ここはテキサス。ぼくたちはロデオにしか興味はない。不法移民どもを銃で撃つのもむかしの話。たまにはテキーラを飲む。
馬に乗れないやつは一人前じゃない。空気は乾いている。荒野に雨は降らない。ぼくたちはそれぞれ永遠に孤独のなかにあって、ライ・ウイスキーを飲む。そしてときどき、テキーラを。
テキサス、ただひたすらに、テキサス。
神はなにを思ってこんな土地をお造りになられたのか?