寄稿いたしました。
「休戦した話」としましたが、まあ実際は「休戦協定の対話の席についた」くらいが正しい。休戦というのはとりあえずおれの身体から腫瘍とリンパ節が削り取られ、一方で人工肛門になったときがそうだ。
で、上の記事はMRIを受けに行く前で終わっている。行ったので、そのことをメモしておく。同じ内容はXのスペースで話したので、聴いた人は読む必要はないかもしれない。
MRIは、まず、予約が取れなかった。10/20に市大病院に行って、最後に「MRIをやってください。きれいにとれるところがあります」と言われた。PET/CTも北新横浜の検査専門病院だったが、MRIも検査専門病院に行くらしい。場所は横浜駅付近とのこと。
市大病院の「ほかの病院の予約をとってくれるコーナー」。行くと連絡はすでに来ていて話は早い。いつがいいかと聞かれたので、すべてを早く終わらせたい一心から「明日の火曜日でいいです。ただ、午後で」と言うと、それで連絡してくれた。が、電話の内容までは聞こえないが、手元で「10/24」と書くのが見えた。「今、MRIが混んでいるらしくて、金曜日の17:30になります」とのこと。MRIが混む時期とかあるのだろうか。よくわからない。
金曜日、仕事を少し早く切り上げて横浜へ。正直言って、おれは横浜駅が苦手だ。というか、大きな駅はみんな苦手だ。こんなことなら大船支店にしておけばよかったなどと思った。なので、時間にすごく余裕をもって出た。地下街を歩く。一番先の出口が目標。
……案外、迷わずに出ることができた。軽く雨が降っていたが、病院は近いのでそこまで行く。30分前くらいだったが、まあいいだろう。「御侍史」の封筒を渡し、問診票みたいなのを3枚書く。予約時間ちょうどに声がかかる。
まずは医師による問診。「直腸PETでして云々」。その後、検査の前にロッカールームへ。「ヒートテックは着ていませんか?」と聞かれる。まだその季節ではなかった。上はジャケットを脱ぐだけでいいが、下は検査着に着替えてくれとのこと。そして、MRIは身につけているものチェックが大変だ。紙を渡され、確認してチェックを入れてくださいと言われる。
一番大きく書かれていたのが心臓のペースメーカーとか脳深部刺激装置などの医療機器だったが、それと同じ大きさで書かれていたのが「手首・足首などのウェイト(おもり)」だった。世の中、そんなにドラゴンボールみたいに鍛えているやつが多いのか、過去になにか大事故があったのか。あとは、やはりヒートテックは検査中に熱くなることがあるらしいが、「ヒートテック等」で、各社の似たような保温系素材はどうなのか判断が難しい。いや、素直に「たぶんヒートテック的なものです」といえばいいか。
そんななか、おれがうっかり忘れていたのがネックレスだ。ネックレスといっても、ファイテンの首輪だ。これは15年以上前に買ったもので、その後ぜんぜんつけていなかったが、1年くらい前に部屋の中で発見され、まだきれいだったのでなんとなくつけてみたら、それが習慣になってしまった。なんだろうか。まあいいや。
メガネも外してぼんやりした状態で検査を待つ。部屋の中からビービー音が聞こえてくる。自分の番が来る。「仰向けに寝てください。手は胸のあたりに。音がしますのでヘッドホンします」。ヘッドホンからはオルゴール音楽が流れていた。
検査が始まる。台が動いて「閉所」へ。台自体はあまり前後に動いたりしない。その代わり、いろいろな音が聞こえてくる。あまりに大きいせいか、ヘッドホンを通じて聞こえてくるように感じる。おれはMRIの轟音というのは、ずーっと「ゴォー!」となり続けているようなものを想像していたが、違った。たまに「ビー!」、「ブブブー!」だの、「ピロピロピロ」だの音がする。「ブー!」と鳴ると、なにか間違いをしたのではないかと不安になる。あとは、急に頭と肩のあたりに振動があって、マッサージ機かよと思った。
で、これが、意外に長い。そして、暇である。狭さも音も耐えられるが、身体は動かせないし、目を開いてもマシンの天井が見えるだけ。オルゴール音楽はいいから、視覚情報でなにか暇つぶしをさせてほしい。
あとは、だんだんお腹の当たりがムズムズしてくるというか、こそばったいというか、なにかされている感じがして、だんだん熱くもなってきて、これでいいんだろうかなどという気もした。
検査終了。たかだかMRIといえばそれまでのはずなのに、やけに疲弊した。自分が検査慣れしていないせいもあるだろうが、CTもPET/CTもMRIもみんな疲れる。このくらいの検査だけでこれだけ疲れるのだから、もっと難病の人はどれだけたいへんなのだろう……。
帰り、雨はやんでいた。地下街の無印良品で「この時期に着られるジャージ」ないかなと思って見てみたら、ちょっと厚手のパーカがあったので買った。レジの行列が長くて驚いたが、なにかセール期間中だったらしい。
あと、どこにも書いていなかったと思うが、最初の最初の生検検査のプレパラート、市大病院が「クリニックから回収して!」と言ったやつ、あれが10/20におれの手に帰ってきた。いや、帰ってきたのではなく、「これ、クリニックに返却してください」と渡されたのだ。そういうものなのか?
なにかこのまま記念にもらってしまってもいいような気がしたが、今後なにかあるかわからないので、さっき返した。ただ、返すまえにちょっと中身を見てみた。こんなものからおれは人工肛門への道を歩んだのかと思うと、医学は不思議だ。
