アキレスと五目そば

 早めのトリエンナーレ入場だったが、退出は三時を回っていた。その間、何も食べていない(屋台の飲食スペースはキャパシティにおいて問題があった)。そこで、中華街へ。今日は裏路地っぽいところを攻めようと思っていると「刀削麺」のネオンサインが、細い通路に光っている。「刀削麺」については以前に良い思い出があるので、店は違えどそこに決定。俺は「牛すじ麺(アキレス)」をチョイスし、同行者は「五目そば」を選んだ。店はカウンターで、目の前で調理が繰り広げられる。削るところを見られるのかと思ったが、ストックがあったらしく、あっと言う間に注文したものが出てきた。おお、太い麺。すする。ん、なんかぬるいぞ。「ぬるいぞ! 店主を呼べ!」(眼目の前で料理してるがな)って文句言うほどじゃないけど、猫舌気味の俺が案外普通に食べられる、食べられる。空腹も手伝って一気に食べてしまった。しかし、なんかぬるいし、スープもいまいちだ。これは悪い店を選んだと後悔、同行者に悪いことをしたと反省。そしてふと、「五目そば」のスープ一口もらってみる。と、なんとスープは熱々で、味が、これが、非常に美味しい。「うわ」と思うくらい美味しい。なんだこの差は。何か別のところから出てきたようなトリックか? あるいはアキレスの何が悪いのか。あ、アキレスが悪いと思い当たる一点。上の棚の缶からそれなりの大きさのアキレスを出すのを見たが、それが仇となったか。すなわち、冷えていたアキレスがスープをぬるくした。そうに違いない。同行者は店を出るなり「店の名前を覚えておこう」と言った。「五目そば」のスープ一口によって、それには異論無い。しかし、一つの店の同種のメニューでここまで差があるのかと、特に驚いた次第であった。