赤塚不二夫死す

天才バカボン」「おそ松くん」「ひみつのアッコちゃん」などの作品で知られる人気漫画家の赤塚不二夫(あかつか・ふじお、本名・赤塚藤雄)さんが2日午後4時55分、肺炎のため東京都文京区の順天堂医院で死去した。72歳だった。

http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20080803-391178.html

▼僕がひらがなを読めるようになって、まず手に取ったのが漫画だった。ほとんどは父の持っていた古い漫画本だった。ドラえもんあたりは普通だが、あとはいしいひさいち東海林さだおあたりなのだから、小さなころから少し古い子供だった。その中に、赤塚不二夫の漫画もあった。『もーれつア太郎』。『おそ松くん』でも『天才バカボン』でもなかった。後に、どうも『ア太郎』が後ろ二者に比べてマイナーなのが、少し残念だ。
▽なので、僕らの世代で「ぽっくん」という一人称は、これまた破壊的なギャグ力を誇った『おぼっちゃまくん』なのだけれども、はじめにそれを真似する上級生を見たとき「ココロのボスだ!」と思ったもの。好きだなぁ、ココロのボス。心のボスだぜ。
▼実は、「一番印象に残っている赤塚漫画」として、「おでこに肛門がある奇形の少年が、肛門をお尻につけかえる手術をするが、それは命と引き換えの大手術であって、涙を流しながら尻からウンコをして死んでいく」という漫画のことを書こうとした。でも、それ、調べてみたら『トイレット博士』であって、赤塚漫画ではなかった(wikipedia:トイレット博士)。しかし、赤塚不二夫が作者に「お前は顔が汚いからウンコ漫画を描け」と言ってできた作品らしいので、幼い俺が勘違いして、今まで勘違いしつづけたのもしかたあるまい。むしろ、見る目があったということか(そうだろうか?)。
▽そういうわけで、僕はそれほど赤塚漫画の熱心な読者というわけではなかった。でも、ベーシックなところから、シュールなところまで、いつか当たらねばならないものであるとは思っている。と、いって、そう当たろうと思って当たるべきものでもないのだろう。さらに老境、恍惚の中で幼心になって、異常世界が異常でなく、シュールとリアルの分け隔てがなくなったとき、あらためて没入できるものかもしれない。いや、そんなことなくとも、僕らを引き戻してくれるのだ。だからスゴイ。
▼ちょっと前、NHKだったかで赤塚不二夫特集をやっていた。倒れる前の最後の言葉、介抱しようとする女性の胸が当たって「おっぱいだあ」と言ったとかなんとか。いたくすてきなエピソードだと思う。
▽さらば赤塚不二夫、その作品群やキャラは、日本の文化が続く限り忘れられることはないだろう。