回転する天使について


 急な坂道をくだっていると、女学生の傘の列が登ってくるのが見えた。どの傘もきまってパステル・カラーの折りたたみ傘で、お嬢さまの学校はそういうきまりなのかもしれない。ときに、回転する天使はやすっぽいプラスチックの質感が好き。毒々しいゼリー・ビーンズの入った缶、雨に濡れたすこし大きなポーチュラカ。また夏が始まってボールベアリングの滑らかな動きを想像する。サイエンスとブルース、そしてブルース。坂を下れば白い砂浜、ビーチ・パラソル。黄色い太陽と切り絵の燈台、相合い傘の女学生、ひとりは文庫本から目を離さない。わたしはその本を取りあげて、空に放り上げたら、ウミネコになって飛んでいく。いつだってサイエンスとブルース、パステル・カラーの砂糖菓子、この街で雨が降りやんだためしはない。