『考証要集 秘伝! NHK時代考証資料』を読む

 この本を読んだ。読んでこんなのを書いた。

 「ときは戦国」の時代で、「いつ?」ということになりそうだが、まあいいや。われわれがふだん使っている漢語は「難しすぎて学者くらいしか使っていなかった」か、「明治以降に西洋の言葉を訳したもの」が多分に含まれていて、いざ時代劇、戦国でも江戸でもとなると、使うのにためらわれる言葉が少なくない。そんなことがわかった。なんでも賢しげに漢語を使えばいいというものでもないのである。
 さらに、本書の半分くらいは軍事用語、第二次世界大戦の旧軍についての言葉や作法にあてられている。戦国武将がNHKに抗議の電話を入れてくることはないだろうが、一昔前なら「こんな言い方しなかった!」と同時代人から指摘されたこともあったろう。実際に元軍人に戦争映画を見てもらって、いろいろの指摘を収集したりしたらしい。
 そんななかで恥ずかしながらおれの知らなかった言葉。たとえば、零式艦上戦闘機の略称。これを「英語のゼロは使わないから《れいせん》が正しい」というのは誤り、というのは知っていたが、一式陸攻が「いっしきりっこー」でなく「いちしきりっこー」だとは知らなかった。あるいは榴弾砲、旧陸軍も自衛隊も「りゅうだんぽう」と読むらしい。まあこのあたりは素人がどう言おうと、というところか。ひどく面倒なところでは「大尉、大佐」。これを昭和期の日本海軍では「だいい、だいさ」と読んだ。が、しかしこれは正式名称ではなく、海軍省の書籍などでも「たいい、たいさ」とルビがある。さらには海軍兵学校の60期までは「たいい」と言う人が多く、はっきり「だいい」と言う人が多くなるのは62期からなどという話まであって、大変である。
 軍事を離れると、「医食同源」、「薬膳」なんていうのは1970年代に日本の健康ブームで作られた言葉だとか、「タイムトリップ」と「タイムスリップ」を取り違えちゃいけないよな、とか、「二君に仕えず」は「じくんに」だとか、戦国時代劇に望遠鏡とオーストラリア入りの地球儀はアウトだとか……。
 目からウロコとはこのことか。というその言葉も新約聖書由来というあたりがいやはや参ったというところか。……って、べつにおれは時代劇を書くわけじゃあないから、落ち込む(これも現代語)こともない。今に伝わる今どきの言葉をだらだら使うだけのことさ。おしまい。