ワン・ツー・スリーでチルアウト

ぼくが旅に出る理由はだいたい100個くらいあって、出るのが億劫な理由が101個くらいあって、なにごとも面倒なのさ。いままでメジャー・リーグでメンドーサという名前を持つ選手でチームを組んだら、ホセで組んだチームより強いかどうかって話なんだぜ。読み違えたやつは全員くつ下を半分おろして廊下に整列して愛国行進曲でも歌っていやがれ。

ワン・ツー・スリーでチルアウト。それはいい。それは嘘じゃない、間違ってない。でも、スタンバイしたらみんなミュージックフリークスのところ、どうしても時間が足りなくなってしまう。そのたびにおれは聴き返す。聴き返して納得して、また忘れる。おれはどこにいる?

ホセ・メンドーサなんだ、結局。結局、南極、大冒険。ホモ・サピエンス・サピエンスは南極まで行った。ホモ・ネアルダーレンシスは南極まで行ったのか? 僕らがネアンデルタール人に妙に惹かれるのは、それがわれわれと共存し、あるいは闘争し、ときに交配した、ぼくらに近いもの、そして違うもの、そうであったかもしれないものだからだ。まるでそう、なにか地球外知的生命体に近いものがある。心は死なない。

大冒険も冒険もない。死後剖検ならあるかもしれない。おれはおれの脳みそを、今後生まれてくるかわいそうな双極性障害のやつらのために捧げてもいいと思っている。おれはもうすぐ死ぬだろう。アルコールにまみれたおれの脳みそは、ひょっとしたら保存状態がいいかもしれない。双極性障害の人間なんて生まれてくるべきじゃなかった。

いつもここにいる。いつだってここにいたい。変化は望まない。それでもタイムはチェンジしていく。でも、われわれはタイムをトレースすることはできない。火星から来たやつがなんか言ってたぜ。

ホセが投げた、メンドーサが打った。そのときウィリアムスは右翼で、呆然と球を見送るしかなかった。悪いが、おれにはメジャー・リーグの偉大な記録の知識がない。川端がバタボールを投げた、中畑がそれを打った。そんなことか。父はおれにプロ野球選手名鑑の川端の顔に落書きをしろと言った。おれはそのようにした。そのときは、清川がすべての中途半端な投手をサイドスローに改造するマッド・サイエンティストだなんて、想像もしてはいなかった。得てして、ホモ・サピエンス・サピエンスはそういう道をたどる。その結果が、この有様だ。

ブレイン・バンクに薄切りされたおれの脳みそがあって、一年に一度、あの人が涙を流しながら花をそえてくれる。その花の銘柄を今から指定しておこうか。いいや、おれはあと一年くらい生きるだろうし、その間に考えておくよ。冬に咲く花、春に咲く花、夏を過ぎて秋が来て、また冬がくるんだ。たぶんそうだろう。たぶん、な。