刑務所から来た「ぐい飲み」のこと

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岡山刑務所 - Wikipedia

    • 重罪初犯者(受刑期間が長い初犯者)を収容する刑務所のため刑務作業も高い技能を要求されるものを製作している。

ショッピングモールの一階、イベントスペースで刑務所作業製品展示即売会に出くわす。おれは刑務所に惹かれるたぐいの人間なので、吸い寄せられるように近づく。大物の家具などはたいそう立派で、買える値段ではないし、置く場所もない。かといって靴用の石鹸などでは面白みに欠けるところがある。まな板くらいの日用品がいい。とはいえ、おれが今使っている桐のまな板も刑務所作業品であって、まだまだ新調するつもりもない。網走で作っている「獄」ロゴシリーズはいかにも狙ったという感じがするし、小物入れかなにか一つ持っているような気もする。

と、焼き物のコーナーが目に入る。栗のような形をしたぐい飲みがいくつか並んでいる。触ってみると表面はザラザラしていて武骨の風がある。備前焼。ものによって模様もそれぞれだ。その中の一つが……上の写真のものだ。袈裟切りのように斜めに一本線が入っている。見ようによっては黄葉の大木。裏側には薄い血のような赤い帯模様。悪くない。おれはすっかり気に入ってしまった。レジへ行くとCAPICの職員だろうか、おっさんが丁寧に包んでくれて、やけに大声で「どうぞ、これで美味しいお酒を飲んでください!」と言う。すこし驚いたおれは笑い顔を作って「ええ」とだけ答える。

箱のなかにはこれを焼いた窯による備前焼の案内文が入っていた。刑務所で焼くところまではやらないのだろう。とはいえ、これを造形した囚人がいる。その人は何年も「美味しいお酒」を飲んでいないのかもしれない。そして、今後何年も「美味しいお酒」を飲めないのかもしれない。袈裟斬り、血のような帯。950円。

 ぐい飲みというのでわざわざ日本酒を買った。湘南の熊澤酒造、「鎌倉栞」。おれはあまり日本酒を飲まない。味の良し悪しもよくわからないが、おれには甘すぎるように思えた。そして、日本酒の度数はおれには軽すぎる。焼酎をそのまま飲むのに使うことになるだろう。スコッチは合うか、それはわからない。いずれにせよ、おれは酒を薄めるのを嫌う。朦朧となりながら、塀の向こう側を思う。いずれそっちに行くかもしれないぜ。おれはそんなことを言いながら。

 

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CAPIC 〜 e−shop 〜

刑務所作業製品通販サイト。使ったことはないし、備前焼を売ってるか知らない。まな板は近くに寄ったついでに横浜刑務所の販売所で買った。