「『景観』だとちょっとかたいんだけど、なんかやわらかい言い回しないかな?」とかなにか聞かれるとする。そういう場合おれは『角川類語新辞典』で物理的に殴る。いや、殴らない。このすばらしい辞典の唯一の欠点である使いにくい索引から「040景色」のページを開く。
「風景、景色、展望、眺望……眺め、とか見晴らしはどうですか? というかそもそもどんな文脈なんですか?」
と、公園かなにかのパンフレットかなにかのマップかなにかに描かれた家族のイラストかなにかのパパかなにかのセリフだったりするのだ。
「このゾーンのシンボルである展望台からは自然の地形を残した公園の景観を一望することができるよ」
……パパはこんなこと言わない。こんなのは、公園を整備する前のコンサルかなにかが企画書かなにかに書いたなにかが公園完成後に管理事務所かなにかに引き継がれて担当者かなにかがそのまま使ってきた言い回しだ。
「展望台から遠くを眺めてみよう!」
とかでいいのである(あんまりよくないけど)。
とはいえ、全国津々浦々でいろいろなパパやママが妙な説明口調で喋っている。けど、パパやママはそんなこと言わないのだ。気をつけられたい。