『弱さの思想 たそがれを抱きしめる』を読む

 

弱さの思想: たそがれを抱きしめる

弱さの思想: たそがれを抱きしめる

 

「弱さ」の中に、効率至上主義ではない、新しい社会の可能性を探ってみたい。

「弱さ」と「強さ」という二元論から抜けだすことが、弱さの思想の入口となる。

 ……という本。弱さについての本といえば松岡正剛の『フラジャイル』などが思い浮かぶが、これはもっと現実社会寄りの本。二人の対談で「弱さ」について紡がれていく。

が、いきなりこんなことが気になった、

辻:え? 軍人の家だったんですか?

高橋:見かけによらないでしょ(笑)。二人の兄が戦死したので、父親は家業の工場を継いだんです、。関東大震災大杉栄を虐殺した甘粕大尉がうちの大伯父だった。

辻:えーっ!

高橋:困ったことに、甘粕さんはうちのヒーローだった。おまけに、うちの祖母は山本五十六と婚約しかけている。

おれも長いこと高橋源一郎のファンをやっているつもりであったが、こんなんは知らなかった。さらに山本五十六とそのおばあさんが結婚したりしていたら、うちの祖母は高野(山本五十六の旧姓)の家だから、なにかかなりは遠くなるが、遠縁の親戚になるところであったのか。いやはや。

まあいい、強さ、弱さの話を。

「パワー」は「フォース」と違って、内なる力のことです。たとえば、種子は木となる潜在的な力を持っている。それがパワーです。人間は誰でもブッダやガンディーのように、偉大な人になれるパワーを持っている。この内なる力がパワーであり、これこそが真の強さです。

 これはサティシュ・クマールという人の言葉らしい。マイトアンドパワー、ワークフォース、よく英語のニュアンスはわからぬが、軍や警察が持つ力、他人への強制力を持つものが「フォース」ということらしい。フォースはなくともパワーを持つ。パワーには謙虚さがあるという。

教育、学校について。

高橋:今の学校は軍隊の組織に非常に近い、まさに管理が強化されているでしょう? これが社会全体に広がってきている。

効率よく、敵を殲滅するにはいい。多様性を消失させる現場……って、「今」っていつやねん、と思いもするが。なんかこれはもう日本で言えば明治の時代からそうだったんじゃねえのという、感じ。今さらかよ、とか。いや、けど、言ってることは正しいとは思うのですけれどね。

話は飛んで、知性と身体のこと。

高橋:……でもそういうふうに考えてみると、ぼくらが生きるってこと自体が汎用性がないわけです。個として生きているのだから、答えは一人ひとり違う。「人間はこう生きるべきだっていうのが知の回答だとしたら「私はこう生きてます」っていうのは身体知的な回答になる。

ふむん。あと、鶴見俊輔は子供から「自殺はしていいものか」と聞かれて、「君が戦争に行くようなことがあって、もし女性を強姦したり、誰かを殺すような事態になったら自殺しなさい」と答えたとかいう。これが身体知が出す答えだという。しかし、すげえな鶴見さん。

というわけで、えーと、なんというかこの本の核心部分には触れてないんだけれども、まあいいや、そんなところで。いや、だって、なんというか、まあその障害のある人(フォースのない人)も幸せに生きられる世界は、より多くの人にとって幸せな世界ですよ、と。トリクルダウンとやらではなく、弱いところから社会が、ネットワークが、生きる場が作られていく、そんなん……あったらいいなあというところなんで、まあ。

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