THE BIG ISSUE

 「なか卯」で昼食を済ませたあと、セルテの百円ショップへ。買い物を済ませ、再び駅の前を通って職場へ帰る。通るのは駅のハマスタ側だ。
 そこに一人のくたびれた背広を着た一人の老人が立っていて、片手を挙げて何かをアピールしている。行きにも見たが、遠目だったのでなんだかわからない。署名活動か何かだろうか。声も出しているようだが、小さくてなんと言っているかわからなかったのだ。今度は偶然近くを通った。通ってしばらくして気が付いた。ホームレス支援雑誌のビッグイシューが横浜でも売られるとかなんとか、神奈川新聞で読んだぞ、と。
 引き返してみると、大正解である。胸のところに販売員のIDカードのようなものをつけている。「一冊いくら?」と聞くと、「二百円です」という。サイフの中の小銭は、あいにく五百円玉しかない。「おつりあります?」と聞くと、彼はポケットからありったけの小銭を出して手を広げた。百円玉二枚と五十円玉二枚。ちょうど三百円。俺は五百円玉を渡すと、おつりを受け取って、元の道に戻った。
 いや、おつりを見た瞬間に思ったんだ。このまま「おつりはいらないよ」ってのが粋なんじゃないかと。けど、なかなか言えないもんだな。それに俺だって定収と社会的身分のない人間だ。彼らもプロの販売員として自立のためにやってるんだ。おつりを受け取るのは当然じゃないか、と。まあ、そういう言い訳のようなものを思い浮かべたところで、こういうのはしばらく魚の骨みたいに心にひっかかる。
 で、ビッグイシュー15号。表紙と巻頭インタビューはガエル・ガルシア・ベルナル。誰だかさっぱり知らなかったが、チェ・ゲバラを描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』の主演とのこと。この映画、評判いいな。アルベルト・バーヨの『ゲリラ戦士のための150問』というゲリラ戦教本のコピーを持ってる俺だから、これは観てみようか。あと、フランツ・フェルディナンドというバンドの記事。ボーカルのアレックスさんの顔が「スウェードのブレット・アンダーソンを思わせるような」って書いてあるけど、単に角張ってるだけじゃねぇか、と思った。全体的にみて、まあ二百円以上の内容だな。それに、アメリカじゃなくてイギリス由来の雑誌というのがいい。俺は馬も音楽もイギリスびいきだ。