松井秀喜に影響は無かった

 深夜NHK、大リーグ実況中継。三回裏、一対〇でヤンキースリード。ワンナウト二塁でバッターボックスに松井。投手は右腕クレメント。初球は内角の足元にスライダー。松井は大きく体勢を崩す。解説の小早川毅彦は「松井に影響はありませんね」と断言する。もう一球ボールの後、二球続けてストライク。ツーエンドツーで勝負の場面。僕はキャッチャーの気分になって考えた。投げるところが思い当たらない。かといって、ツースリーにはしたくない場面。伏線は初球の内角攻め。外から内に食い込むスライダー。いけ、クレメント! キャッチャーの構えより外角に流れた変化球は、低く振り抜いた松井のバットに叩かれ、きれいな放物線を描いて右翼席へ飛んでいった。松井のどこにボールを投げればいいのか。そして、小早川の言ったことは正しかった。君、小早川の言うことは信じろ。