幼い蝉よ、夏の幸運を願え

 扇風機を止めてテレビのスイッチを切り、いくつかのコンセントを引っこ抜いた。不意に、窓の外から何かをこすりあわせるような鈍い音がした。蝉じゃないのか、蝉だろう。鳴き方を知らぬ蝉に違いあるまい。ということは夏か、夏が来たのか。夏に違いあるまい。俺は夏はあまり好きじゃないが、夏を想うのは好きだ。そうか、夏が来たのか。君、梅雨のことなんて忘れてしまいなさい。