俺はソファに座っている。鎌倉の自宅だ。網戸にセミがとまった。セミは網戸を這って横に進む。部屋の中に入ってくるなよ、と思う。しかし、様子がおかしい。セミには見えない。セミは部屋の内側に入るとくるりと回転して背を見せる。黒く輝く甲虫。ゴキブリかと思って俺は身を震わせる。しかし、よく見ると立派な立派な角のあるカブトムシだった。カブトムシは網戸を這って来た方向へ進む。俺は、こっちに来るなよ、と思う。そのまま出て行けよ、と思う。が、カブトムシは突如羽ばたくと、弧を描いて部屋の中を飛んで、俺の腕にとまる。右腕にカブトムシがとまった俺は「がぁー」と叫ぶ。