罪は桃色

 もう、タバコのことはすっかり忘れていた。ライターはお香に火を付けるもの。私の部屋はお寺の香り、くゆる香煙に身をたゆたわせたり……。ところがどうだろう、それを見越したみたいに、「ペシェ」という名の桃色タバコが私の手元に。そのJTからの贈り物は、携帯灰皿もおそろいカラー。それで、また私にニコチンとタールを摂れと言う。私はもちろん、すぐにラブホテルのネーム入りライターで火を付けた。私はお金がないからタバコ買わなかっただけ、それは本当。健康なんてこれっぽっちも考えていないもの。でも、このタバコ、ぜんぜん軽い。咽の入口に引っかかるみたいで嫌い。私は桃色のタバコなんて嫌いだ。青いジプシーの踊り子や、黒いジョーカーはどこに行ったの? 私はもっと素敵なライターも持っていて、タバコももっと素晴らしかった。人生はもっと素晴らしかった。マッチ売りの少女じゃあるまいし、すってもすってもすりへるばかり……。