ティッシュ・ペーパーが安い

 俺は独り暮らしをはじめてからトイレット・ペーパーとティッシュ・ペーパーを切らしたことがなかった。常に気を配って生きてきたのだ。しかし、今週の頭にティッシュ・ペーパーを切らしてしまった。とはいえ、まだバックアップがある。ポケット・ティッシュだ。俺は必ず貰うようにしている。
 とはいえ、急遽ボックス・ティッシュを買う必要に迫られた。俺は仕方なく、いつも利用する食料品系スーパーでそれを買い求めた。ドラッグ・ストアなどで買うより割高になることを覚悟して。
 しかし、ボックス・ティッシュは安かった。俺は小躍りした。
 ところが、どうだ。その安いティッシュはざらざらとかたく、まるでポケット・ティッシュのクオリティじゃないか。俺は、生まれてこの方こんなにかたいボックス・ティッシュを使ったことはなかった。なんだかんだいいながら、俺は育ちがいいということなのか。
 そうだ、俺は独り暮らしをはじめてから、トイレット・ペーパーとティッシュ・ペーパーについては多少の贅沢をしてきたのだ。一人だと案外減らないことに気づいたからだ。それなのに今回は、食料系スーパーで思わず安い物を選んでしまった。真横には百円だけ高いボックス・ティッシュもあったというのに。
 生活の隅々にまで陥穽は待ち受けている。百円の判断が俺を傷つける。俺はとても纖細なのだ。